『ギリシアのロマ居住区で白人少女発見』について

 ここ数日外国メディアを中心に賑わせているニュースが『ギリシャのロマ居住区で謎の白人少女を発見』である。内容は、ギリシャのロマ人キャンプ内で、青い目にブロンドヘアーというロマの外見とは違う少女が発見され、調べてみると共に生活していたロマの男女とは何の血縁関係もないことが判明。少女が誘拐された可能性が浮上した。

 このニュースはとにかく複雑だ。

 ・ロマとは?

 そもそもこのロマという表現が非常にややこしい。一般的にはそれまでジプシーと呼ばれていた都市型移動生活者集団を指すものとされるが、そもそもジプシーも特定の人種に分類できるものではない。起源にも諸説あり、インドから様々ルートを経由してヨーロッパに流入してきた人々の総称というくらいにしか分類できない。またジプシーという言葉の語源は『エジプシャン/エジプト人』である。移動生活のイメージが強いロマ=ジプシーも現在では実に95%が定住している。欧州全体で1000万から1500万人いるとされている。
 現在ではロマという存在は、ヨーロッパ中に点在、フランスなどではマヌーシュと呼ばれ、独特の移動生活を送っており、ナチス時代に『ポライモス』と呼ばれたロマ絶滅政策がとられた反省から、ヨーロッパ各国はロマに対して手厚い福祉政策をとっている場合が多い。その反面、様々な犯罪の温床になっているという差別が根強く、フランスなどはロマの帰還政策を推進し、彼らと歴史的に関係の深いルーマニアへ強制送還することも問題となっている。なお、ルーマニア政府はロマという存在自体を認めておらず、ゆえに自国内に根強く蔓延っているとされるロマを巡る様々な差別そのものが存在しないという立場を取っている。

ロマ人キャンプ

ロマ人キャンプ

 ・ギリシャ政府、インターポールに捜査協力を依頼。

 少女を保護したギリシャ政府は、人身売買の国際ネットワークが関与している可能性があることから、この少女の親を捜すためにインターポールに捜査協力を依頼。すでに数千件の問い合わせがあり、アメリカでは2011年にカンザスで失踪した少女との写真比較が行われ、有力ではないかという見方が出ている。これが事実だとすれば、アメリカから海を越えてヨーロッパまで少女が届けられたことになるため、ただの誘拐事件ではなく、国際的なネットワークを持つ人身売買組織の関与が疑われている。

 ・ロマへの反感の助長

 現在、ギリシャでは民族主義的な団体がおこす暴力事件が問題化している。先日もアンチ・ファシストのラッパーがネオナチ集団によって殺害される事件も発生。
 またこの少女と生活していて逮捕されたロマ人夫婦が、14人の子供がいると偽り月100万円を越す社会保障費を受給していたことも判明。また薬物なども同時に押収されていた。財政難にあえぐギリシア政府への非難とともにロマ人排斥の流れが強く懸念されている。

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 ロマとの結びつきが強い中欧諸国もEUの一角を占めるようになり、EU全体としてロマへの差別撲滅と社会参加を促しているが、現実としてはそれに逆行するようにサルコジ時代のフランスでは強制送還政策が取られたり、特に就職差別はヨーロッパ中に根付いているとされている。
 人権問題に対して常に世界をリードしてきたヨーロッパが抱える最大の人権問題に対して、EUはどう対処していくのか、この問題から浮かび上がる現実とどう向き合っていくのか、本件を適切に処理しつつ、ギリシャひいてはヨーロッパ全体がロマ排斥への流れへと向かわないような舵取りは、困難を伴うが、やり遂げなければならない問題だろう。

 

 

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