映画『キング・オブ・エジプト』レビュー(ネタバレあり)

神々と人間が共存する古代エジプトを舞台に繰り広げられる壮大な争いを描いたファンタジー・スペクタクル巨編『キング・オブ・エジプト』のレビューです。怪獣、胸の谷間、金ピカで溢れたボンクラ映画の手本のような作品。日本公開は2016年9月9日。

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『キング・オブ・エジプト/Gods of Egypt』

全米公開2016年2月26日/日本公開2016年9月9日/ファンタジー/127分

監督:アレックス・プロヤス

脚本:マット・サザマ、バーク・シャープレス

出演:ブレントン・スウェイツ、ニコライ・コスター=ワルドウ、ジェラルド・バトラー、コートニー・イートン、ジェフリー・ラッシュほか

レビュー

『キング・オブ・エジプト』には「俺たちの夢」が詰まっている。神々と人間が共存する世界が舞台で、そこには巨大なムカデがいたり、昆虫がソリを引いて空を飛んでくれるし、神様たちは身体中を金ピカにして動物に変身したりする。それだけでも十分なのに、宇宙を飛び回る船が登場したり、混沌の獣アペプが時々世界を飲み込もうとまでする。 加えて、男性も女性もとにかく肌を露出するのが大好きで、男は腰巻、女はビキニという常夏みたいなエジプトなのだ。

そもそも名作とか感動とか震える映像体験とかそんなものを期待する類の映画じゃないことは予告編を見たときから知っていた。要は金を払った分だけ「スカッ」とさせてくれるのならそれで文句はない。ガーと怪獣が登場して、ドーと大群が押し寄せ、カッシャーンと神様がそれらを蹴散らし、ドッゴーンと巨大建築が崩れ、ポローンと肩紐が外れてくれる、そんなサービスが「ここぞ!」という時に現れてくれればそれでいい。別に脚本がどうとか、舞台が古代エジプトなのに白人主体のキャストがおかしいとか、建築物が歴史を無視しているとか、そういった批判をされてもポカーンな映画が『キング・オブ・エジプト』なのだ。

そして本作には2時間超という尺のなかには、前述した期待要素のすべてが存在していた。エジプト神話を下敷きにしている作品らしく、ラーやオシリス、ホルス、トートといった神々がCGで再現され、巨大怪物だって複数登場し、スフィンクスとのクイズ対決だって描かれる。おまけに女性キャストは例外なく胸の谷間を強調してくれるし、男の神々だって鍛え抜かれた大胸筋や上腕二頭筋を惜しげもなく晒している。何の躊躇いも、出し惜しみも、ペース配分も無視して、それらが2時間ほどの上映時間の間、かならずスクリーンのどこかに映されている。

しかしどういうことだろう、金ピカ、怪獣、アクション、CG丸出し大自然、宇宙、金ピカ、怪獣、谷間、アクション、谷間、建物倒壊、、、、という繰り返しが2時間続くと、自分でも驚いたことに、楽しめたのは最初の30分だけで、残りの1時間半はクソほど退屈だった。怪獣が登場しているのに、美女が胸の谷間を見せてくれているのに、ジェラルド・バトラーが炎の出る槍をブンブン振り回しているのにどうしても画面に集中することが出来ず、わざわざ海外からDVDを入手した手間と費用のことを思うと「俺は何をやっているんだ」と本当に悲しくなった。

言うなれば朝食にカリカリベーコンたっぷりのパンケーキを、昼食にモダン焼きを、夕食にすき焼きを、そして夜食には生ハムメロンを、という史上最高のルーティーン(異論は認める)を3ヶ月休みなく続けたような映画が『キング・オブ・エジプト』だった。

財布にも全然優しくないし、何より胸焼けがひどいのだ。

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<ここから『キング・オブ・エジプト』のネタバレが含まれますのでご注意ください>

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ストーリーは大体こんな感じだった。

古代エジプトでは王オシリスの支配のもと神々と人間が幸せに共存していた。しかし王座がオシリスから息子のホルスへと移譲される戴冠式に、砂漠の神セトがクーデターを起こして王の座を乗っ取ってしまう。オシリスは殺され、ホルスは力の源である両目を奪われてしまう。そして人間たちも神々の奴隷となり、巨大建築物の労働力として酷使されることになる。

人間の青年で盗みが得意のベックは、世界の悪化を売れる恋人のザヤから託された秘宝庫の説明書をもとにホルスの一方の目をセトの神殿から盗み出すことに成功するも、脱出する最中にザヤは追手の放った弓で貫かれ絶命してしまう。悲しみのなかベックは権力の座から追われたホルスに一方の目を返し、セトの力を奪うことと引き換えにザヤを冥界から引き戻すよう申し出る。

こうしてホルスは父の仇と復讐のために、そしてベックは死んだ恋人との再会のために、悪王セトに戦いを挑むことになる、、、、のだが、物語のきっかけとクライマックスとの間には、胸焼けするようなプロットがぎゅうぎゅうに詰まっていて、はっきりいって辛い。

アカデミー賞俳優のジェフリー・ラッシュが炎のでる槍を持たされて宇宙空間で日々怪獣を追っ払ってるとか、「ブラックパンサー」としての活躍が期待されるチャドウィック・ボーズマンがピカピカ光る脳みそを奪われて悶絶するとか、片目状態のホルスがどう見ても『ニューヨーク1997』のスネークそのまんまとか、きっと製作陣からすればサービスのつもりなんだろうが片っ端から空回っている。

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(そしてこれは批判ですらないが、つい先日アンドレ・ザ・ジャイアントの伝記映画化のニュースを知ってしまったせいで、神々が人間よりも二回りほど巨漢として描かれるためアンドレと藤波を見ているようだった)

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他にもセトの力を奪うためにピラミッドのなかのスフィンクスをクイズで負かすというプロットも、「スフィンクス=なぞなぞ」という設定はエジプト神話ではなくギリシア神話ではないのかと思ったりしたが、そもそもスフィンクスの登場自体がかなり無理矢理だった。その頃にはすでに巨大ムカデも、巨大コブラも登場しているから、巨大猫男を見せられても別に驚かない。すでにお腹はいっぱいなのだ。

同系統の映画『タイタンの戦い』や『インモータルズ -神々の戦い-』、そしてロック様主演の『ヘラクレス』なんかと比べてみてもCGの安っぽさだけが悪目立ちし、肝心のアクションや怪獣のどれもが中途半端になっている。とりあえず「出しておけばいい」という感じですべてを盛り込んではみたものの、それらをうまくつなぎ合わせることに見事に失敗している。

ちなみに本作の原題は『ゴッズ・オブ・エジプト(エジプトの神々)』で、神様はアッラーだけというイスラム中東地域では『キング・オブ・エジプト』と改題して公開されたのだが、映画の途中から結末以上に、世界で最も神々の扱いが手洗い日本がなぜ真反対の中東バージョーンに倣ったのか気になって仕方なかった。知っている方は教えて下さい。

ということで127分という尺はいくらなんでも長すぎるし、サービスとは何なのかもう一度考え直して欲しいと思える作品だった。サービスショットとは本編とは直接関係のないなかで登場するからサービスなのであって、それを数珠繋ぎにしても面白くなんてならないし、サービスの意味もなくなる。

由美かおるがずーと風呂に入っているだけの『水戸黄門』が想像するだけ辛いのと同じように『キング・オブ・エジプト』もサービスを盛り込んだ結果、誰も喜ばない作品となってしまった典型だった。

『キング・オブ・エジプト』:

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キング・オブ・エジプト
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