映画『オンリー・ゴッド/Only God Forgives』レビュー

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 日本では2012年に公開され、一部から熱狂的な評価を受けた『ドライブ』に次ぐ、ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴズリング主演の『オンリー・ゴッド/Only God Forgives』のレビューです。2013年のカンヌ映画祭では大ブーイングとスタンディングオベーションの両方を受けた問題作。もしそこに私がいたなら、鳴り止まない拍手を送ったでしょう。日本公開は2014年1月25日に決定。原題は『Only God Forgives(神のみが許せり)』なのに邦題は『オンリー・ゴッド(神のみ)』となった模様。
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ストーリータイのバンコク。アメリカ人のジュリアン(ライアン・ゴズリング)は兄のビリーとともに表向きはムエタイのジムを経営していながらも、裏では麻薬組織を運営する。ある日、サディスティックなペドフィリア(幼児性愛)性向者のビリーはまだ未成年であった、路上にいた、あるタイ人少女をレイプし殺害する。すぐに警察に捕まり、やってきた警察官のチャンは、殺害された少女の父親を現場に連れてきて、彼の手でビリーを殺させる。そして自分の娘を売春させていたその父親の腕を切り落とす。
 ジュリアンと殺されたビリーの母(クリスティン・スコット・トーマス)はバンコクにやってきて、兄の仇を討たなかったジュリアンを罵り、そして殺し屋を雇い、ビリーを直接殺した男を殺害の後、そう仕向けた警察官チャンの殺害を企てるも失敗する。
 ジュリアンと母との倒錯した関係と、バンコクの復讐の守護者チャンは、赤く染まっていく。

クリスティン・スコット・トーマス、イカレタ母親

クリスティン・スコット・トーマス、イカレタ母親

感想もしこの世に映画監督という職業がなかったなら、一体どうなっているのだろう。ウッディ・アレンは先進的な精神科医になっているだろう。コッポラはウォール街、ラース・フォン・トリアーはSM倶楽部の受付、M・シャマランは雑誌『ムー』編集部に、ガス・ヴァン・サントは地方紙の新聞記者になっているだろう。そして前作『ドライブ』にて世界中の映画ファンの注意を集めたニコラス・ウィンディング・レフンは、短編小説家になり一部の読者から熱烈に支持されるだろう。
 本作『オンリー・ゴッド/Only God Forgives』は前作の『ドライブ』とほとんど変わりがない。ストーリーはシンプルで驚きはまったくない。人が殺されて、そのせいでまた誰かが殺される、という話だ。しかしそのバイオレンス描写と人体破壊描写は凄まじい。凄まじく残酷なのではなく、凄まじく美しいのだ。細部まで計算された構図に、赤を意識的強調するカラー・グレーディングに、その反動として自然と青が目立つ絶妙なバランス。そしてしっかりと90分でフェイドアウトしていく結末。そういったレフン監督の作家性は、ほとんど優れた短編小説家の修辞的技法と一致する。
 そしてライアン・ゴズリングという今ハリウッドで最も注目される俳優がそこに加わる。ひっそりとアンダーグランドで蠢いていたレフン監督の作家性は、ライアン・ゴズリングとの出会いによって不思議な反応を生む。レフン監督だけでは決して作り上げられない要素、スタイリッシュ。『ドライブ』ではオープニング10分だけでもう手放しに賞賛することを決めた人も少なくない。本作でも、序盤と終盤に、残酷で痛々しい光景が、文句の言いようのない完全にコントロールされた美しい映像によって切り取られている。
 もちろんより暴力的な過激さがただ増しただけで、前作と変わりない内容という評価も下せるだろう。しかしこれは短編小説なのだ。物語の起伏やそれによって増す感情表現、伏線の配置とその回収によって得られる興奮、そういったいわゆる映画的要素というのはあくまで長編小説的なもので、この映画とは土台が違う。優れた短編小説に共通するものは、切り取られた一瞬の感情の再現にある。そのために必要なものは、作り手の感性であり、技術であり、物語世界と登場人物との調和である。その意味では本作は前作『ドライブ』から確実に一歩踏み出している。ここにはまともな人間はほとんど出てこない。そしていかれた奴から殺され、そしていかれた奴が最後まで生き残る。
 この世界に確実に存在する不条理な条理を、レフン監督は、バンコクというおとぎ話の世界で、はかなく美しい一瞬の痛みとして切り取った。ブーイングされるいわれはどこにもない。

 

 *これよりネタバレ。ネタバレは重要ではないが、ネタバレしますので、ここからは読まないことを推奨します。繰り返します、以下ネタバレ含みます*

ネタバレするぜ

ネタバレするぜ

 

 警察官チャンは自分たちを狙った殺し屋の一人を生きて捕まえる。そして彼から雇い主のアメリカ人を見つけ出し、彼を拷問する。そしてチャンとジュリアンは決闘する。キックボクシングをしているジュリアンの前に、警察官のチャンは圧倒的な強さを見せる。ジュリアンは手も足も出ず、自身のジムの床に崩れ落ちる。

 そしてジュリアンの母は、ジュリアンともう一人の手下に警察官のチャンの家族を皆殺しにするように命令する。そうとは知らずにチャンはジュリアンの母親のいるホテルに向かい、彼女の喉を搔っ切り殺害する。チャンの家族の皆殺しを命じられたジュリアンたちは警備の警察官を殺し自宅に潜入、帰ってきたチャンの嫁を殺し、娘も殺そうとするが、ジュリアンが結果的に助けることになる。
 その後、ジュリアンはチャンに手を切り落とされる幻視を見る。そしてチャンはカラオケで歌う。

復讐の守護者、チャン

復讐の守護者、チャン

 と、とにかく不思議な作品です。ストーリーはあってないようなもので、とにかく美しく不思議な映像の連続です。 現実と非現実を行き交うようにして、話は進み、整然とした映像やその色が、登場人物の心象となっているのか、なっていないのか。好きか嫌いかがはっきりと分かれる作品とは思いますが、前作『ドライブ』にやられた人は必見です。私は『ドライブ』以上にやられました。おすすめです。

 
本文紹介作品、輸入版DVD/Blu-ray

前作『ドライブ』

ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品

プッシャー三部作、おすすめです!!

『ダークナイト ライジング』のトム・ハーディ主演作、これもおすすめ!

 

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