音楽『Tomorrow is gonna be better/Joshua Radin ジョシュア・レディン』

 音楽に求める条件というのは人それぞれ、ある人は革新的な音を求め、ある人は激しいリズムとギターリフ、又ある人は壮大な物語を音楽に求めたりする。
 今回紹介する Joshua Radin/ジョシュア・レディンというアーティストから我々が得られる音楽的な要素はあまりにシンプルなものだ。美しいメロディーと心地よい声、ただそれだけ。哲学的な問答もなければ、聞くものを唸らせるような演奏の極北もない。彼がギターを奏でれば、歌う場所がどこだろうと変わらない。そもそもSSWというジャンルの特徴を凝縮したような、つまりはなんとも時代遅れな音楽だ。ただそれでもとにかく素晴らしい曲をここ数年コンスタントに発表しているのは間違いない。
 これまで5枚のアルバムをインディーズから発表し続けているがどれも素晴らしい。今回紹介する曲は2012年に発表されたアルバム『Underwater』のファーストトラック。エリオット・スミスの面影を感じるメランコリーで叙情的な一曲。

 冬が来て、一日が短くなれば
 身を隠すのにちょうどよくなる
 でも暗い雲も流れていくことを知っている
 明日はきっとマシになるさ

 世の中から重荷を背負わされたりすると
 旅に出たくなる
 それでも立ち止まって向き合うつもりなら
 明日はきっとマシになるさ

 雨が降ればいい、降ればいいんだ
 新しい一日が来るまで
 そして君と僕だけになればいい

 もしこういった音楽が好みなら彼のどのアルバムを聴いてもがっかりすることはない。どのアルバムも良質でシンプルなものばかりだ。これまで出たアルバムをシャッフルして音楽的要素のみを頼りに時系列に並べろと言われれば誰もがお手上げとなる。美しいメロディーと心地よい声、本当にただそれだけなのだ。今のところ彼の音楽は進化もしなければ枯渇もしていない。ただひたすら美しいメロディーを作り歌い続けている。もしそういった音楽的姿勢をつまらないとするなら、AC/DCだって無価値になってしまう(そうする人もいるけど)。好みにあった良質な音楽を安定して作り続けてくれることを退屈として切り捨てる態度は世界はただ無限に進化し続けるという幻想に酔い痴れているだけだと思う。もちろん新しいことも必要だが、そこに留まる姿勢も評価されるべきだと思う。
 Joshua Radin/ジョシュア・レディンの音楽はここ数年コンスタントに映画やドラマに使い続けられている。それがどうしたわけではないが、BGMとしてとにかく心地のいいことの証左だと思う。
 秋の夜長にひとりでこんな音楽を聞くのはちょっとセンチメンタル過ぎるかもしれない。ひとりでちょっとした散歩に出るときなんかに聞くのがちょうどいいと思う。

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