【映画】『ウォールフラワー/The Perks of being a Wallflower』レビュー

 文系サブカルチャーネタをみっしり詰め込んだ同名原作小説の映画化、『ウォールフラワー』。キャメロン・クロウ監督作や、ニック・ホーンビィーや村上春樹の小説にも通じる、青春物語。邦題の「ウォールフラワー/壁の花」とはダンスパーティーなどでパートナーがおらずに壁際で佇んでいることを意味する。そして原題は「The Perks of being a Wallflower」とは、“ウォールフラワー”でいることのちょっとした特権、という感じ。

 カセットテープ時代の青春を過ごした方は必見の、懐かしくほろ苦い青春映画です。日本公開は2013年11月22日。

 ストーリー:作家志望のチャーリーは内気な性格なため、なかなか友人が見つけられずにいる。始まったばかりの高校生活でも一人ぼっち。
 そんなある日、チャーリーはフットボールの試合を一人で観戦中に、同じクラスを取っている上級生で自由人のパトリックに思い切って話しかける。同時にパトリックの義理の妹にも出会う。試合の帰りにホームパーティーに誘われたチャーリーは生涯で初めてのパーティーで、そうとは知らずにマリファナ入りのチョコケーキを食べてしまう。緊張が和らぎ、いつもより積極的になったチャーリーはサムに、去年に唯一の親友を自殺で亡くしたことを告げる。そして偶然にもパトリックと高校フットボールのスターとがキスする姿も目撃してしまう。パトリックから口止めを約束されるも、これを機にチャーリーはパトリックとサムの友人として迎い入れられる。
 同性愛の傾向を持つパトリック、その美しくも自由な妹サム、そして心に深い傷と秘密を抱えるチャーリー。3人の若者たちはそれぞれの傷と痛みを抱えながら、友情そして恋の悩みのなか、一瞬の青春の輝きに照らされる。

 レビュー:音楽、自由、アンダーグラウンド、友情、同性愛、葛藤、過去、恋愛、、、この映画で直接であれ間接であれ、語られるものたちは、青春を信じている人々の共感と憧れを激しく刺激する。ザ・スミス、ロッキー・ホラー・ショー、分かり合える性を超えた仲間たち、心の傷。
 ベストセラーになった同名小説はアメリカの青春風俗をとても瑞々しく描いている。その多くは日本人には実感としては上手く馴染めないものかもしれないが、きっと世界中の若者たち、特に音楽や映画などのサブカルチャーに関心を持つ若者たちが、場所や時間を問わずにそれぞれの方法でやってきたこと同じだ。例え、この物語の舞台が90年代初頭だとしても、カセットテープというガジェットが遺物となった現代でも、若者は大して変わっていない。
 青春物語を語るうえで、プロットの新鮮さだけを取り上げたくないのはそのためだ。どの時代の若者も基本的には“クール”でありたいと思っているだけで、基本行動は変わりないの。憧れや希望などは世代や場所を簡単に超えてしまう。本作で語られる、トラウマ、葛藤、愛、喪失、仲間という要素は、いつだって青春物語が必要としていたもの。
 本作ではとにかく主演の3人の若者が素晴らしい。『パーシー・ジャクソン』のローガン・ラーマンの心に傷を抱えた若者像は『ラースと、その彼女』のライアン・ゴズリングを彷彿させる。『ハリー・ポッター・シリーズ』のイメージが強過ぎるエマ・ワトソンだったが、そのイメージを現実に再現したような、自由で意志の強い役柄を感情豊かに演じてみせる。そして『少年は残酷な弓を射る』で絶賛されたパトリック役の エズラ・ミラーはゲイで、人気者の、自由人の高校生という難しい役どころ完璧に演じていた。そして脇に控えるポール・ラッドやジョーン・キューザック(姉の方)というサブカル・コメディーを得意とする俳優らが、抑えの利いた演技で若者を 見守っている。その対比が決して、正しい道を教える大人と、正しい道を必要としている若者、という単純なものではないのも好感が持てる。
 ここ最近は、青春映画というものがめっきり少なくなったし、あったとしても日本映画に見られるような、難病号泣映画や美男美女の戯れ映画がほとんどだったが、本作はあくまで王道の青春映画だ。誰もが心の奥で憧れる青春の情景を、等身大に描いているので感情移入はしやすい。決して号泣するような映画ではないが、もし青春のまっただ中で立ち止まっている人が居るのなら、背中を押してくれるような映画だと思う。

 これよりネタバレをしますが、主人公チャーリーの秘密だけは隠しておきます。男2の女1、という憧れの設定ですが、嫌味間はないですので、世代を超えてお勧めでします。特に、『500日のサマー』や『ハイ・フィデリティ』や『あの頃ペニー・レインと』、少し遡れば『セイ・エニシング』や『セント・エルモス・ファイアー』などが好きな方は是非ご覧下さい。

 

※これよりネタバレします!かなり詳細な部分までネタバレします!ただ秘密の核心はネタバレしていません!ネタバレ注意ですので、また会いましょう!※

Emma Watson  The Perks of Being a Wallflower Photo 01

 

 パーティーからの帰り道、車内にはパトリックとサムが“トンネル・ソング”と呼ばれる曲がかかる。大音量でその曲を流しながら、ピックアップの荷台に移ったサムは、車外で大きく体を広げながら風を感じる。
 そしてクリスマスが近づき、チャーリーを含んだパトリックのグループは、シークレット・サンタと呼ばれる、誰かが誰かのサンタになり秘密のプレゼントを用意する、というゲームを行う。そしてチャーリーは、サムからシークレット・サンタではないのに、古いタイプライターをもらう。チャーリーが作家志望だったことを覚えていたのだった。
 その夜、チャーリーはサムにこれまで誰ともキスをしたことがないことを打ち明ける。そしてサムは最初のキスは11歳で相手は彼女の父親の上司だったことを告白する。その夜、二人は、サムには恋人がいるにも関わらず、キスをする。
 パトリックとサムとその仲間たちは、カルト映画の『ロッキー・ホラー・ショー』を舞台で演じており、ある日、その舞台に参加していたサムの彼氏が来れなくなり、急遽代役としてチャーリーが舞台にあがることになった。そしてその帰りに、サムの友人でもある仲間のエリザベスとキスをして、チャーリーは彼女と付き合うことになる。
 しかしサムのことが忘れられないチャーリーは、エリザベスの恋人としての言動に徐々にストレスを感じるようになる。そしてある日、チャーリーはパトリックたちいつもの仲間と“トゥルース・オア・デアー”という、秘密の暴露か突拍子もない挑戦のどちらかを選ばなければならないゲームに参加中に、これまでキスしたなかで最も美しい女性は、という質問に対して、真実の暴露としてチャーリーは恋人のエリザベスではなくサムと答えてしまう。 
 この一件でグループに居づらくなったチャーリーはまた学校でも一人ぼっちになってしまう。
 そんなとき、パトリックと関係を持っていたフットボールの花形ブラッドは、そのことが父親にばれてしまい、別れさせられてしまう。そして妙な噂がたつことを恐れたブラッドは、食堂にパトリックのことを“Faggy/オカマ野郎”と罵り、それに逆上したパトリックはブラッドを殴りつける。そしてブラッドの仲間からも袋だたきにされるパトリックを守るため、チャーリーは間に割って入ろうとするも、途中の意識が抜け落ち、気がつくと拳に痛みを感じながら目の前にはブラッドの仲間たちが横たわっている。パトリックを抱えたチャーリーは、興奮しながらも、「僕の友人に手を出すな」と警告する。
 この件を機に、また仲間たちに迎い入れられるも、彼らはチャーリーよりも早く、もうじき高校を卒業することになる。そして彼らの卒業パーティーあと、一人で誰もいない部屋に帰ったチャーリーは、過去の辛い記憶がフラッシュバックしてくる。それは特別だったチャーリーの叔母が、チャーリーの誕生日プレゼントを買うために車で出かけたときに事故にあい死んでしまった事件の一連の記憶と罪悪感だった。精神的に崩壊してしまったチャーリーは自分の姉に自殺をほのめかすような電話をする。
 そして精神病院に入院したチャーリーは、心の最も奥深くに隠していた“特別”だった叔母をめぐる秘密を主治医に打ち明ける。辛い過去と向き合い、それを乗り越えたことで大人になっていくチャーリー。そしてある日、チャーリーのもとを大学から帰ってきたサムとパトリックが訪ねる。そしてサムはひとつのカセットテープを取り出す。そこにはこれまで“トンネル・ソング”と呼んでいたデイヴィット・ボウイの『ヒーロー』がおさめられていた。車に乗り込み、“トンネル・ソング”をかける3人。ピックアップの荷台に立ち、風を感じているのは、チャーリーだった。

 

本文紹介映画DVD・輸入版

サントラ

原作小説

エズラ・ミラー主演作『少年は残酷な弓を射る』

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