『トゥモローランド』レビュー ★★★

Tomorrowland

ディズニー最新作となる『トゥモローランド』のレビューです。ウォルト・ディズニーが残した未来の夢の素描を基に、不思議なバッジによって未来の夢と繋がった少女と、その謎を知る中年男性との冒険を描くSFアドヴェンチャー。主演はジョージ・クルーニー、監督は『アイアン・ジャイアント』や『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のブラッド・バード。日本公開は2015年6月6日。さあ、夢の国への冒険です。

『トゥモローランド/Tomorrowland』

全米公開2015年5月22日/日本公開2015年6月6日/アメリカ映画/122分

監督:ブラッド・バード

脚本:ブラッド・バード、デイモン・リンデロフ

撮影:クラウディオ・ミランダ

出演:ジョージ・クルーニー、ブリット・ロバートソン、ラッフィー・キャッシディ、ヒュー・ローリー、ティム・マグロウ他

あらすじ

1964年、少年発明家のフランクはニューヨークで行われた万博にやってきた。そこで自分が作った個人用ジェットベストを売り込みにきたのだが、そこでアテナと名乗る不思議な少女と出会う。彼女に導かれるままに不思議なバッジを付けたフランクは、そこから未来の世界へと飛び移っていった。

そして現代では大学生のケイシー(ブリット・ロバートソン)がNASAの施設に無断で侵入したために警察の厄介になる。その時、彼女の手元には覚えのない不思議なバッジがあった。そしてそれに触れた瞬間、彼女はこことは違う世界に移動してしまうのだった。バッジに触れている間だけ行くことができる世界、それは自動車や電車が空を飛び、人々が平和に暮らす未来の世界だった。

やがてそのバッジの不思議な力の寿命が尽きてしまう。ケイシーのそのバッジの謎を調べるなかで、一人の不思議な少女アテナと出会う。そして過去にケイシー同様に未来へと行くことの許されたフランク(ジョージ・クルーニー)を巻き込み、世界を救うため、時空を超えた冒険へと飛び出していくのだった。

レビュー

「未来を作るのは夢と想像力」というディズニーの広報映画:

『アイアン・ジャイアント』や『Mr.インクレディブル』の監督ブラッド・バードが贈るディズニー最新作『トゥモローランド』は、不可能という概念を否定することからはじまる未来への絶対的な肯定主義の姿勢が強く打ち出された作品となっていた。

少し変わった構成の作品でありながらも、物語は1964年のニューヨーク万博からはじまる。未来への漠然とした夢を、企業がこぞって実現に向けて動き出していた時代を象徴する万博で、その展示用としてディズニーが作ったのが「イッツ・スモール・ワールド」である。そのアトラクションで描かれるように未来とは、戦争もなく平和で平等な世界だという疑いようもない希望。その時、人々は未来を強く信じていた。少なくとも1964年に生きた少年少女が夢描いた未来とは、眩いほどに明るかったはずだ。

ジョージ・クルーニー演じるフランクもまさにその時代を生きた少年だった。若くて無謀な天才少年発明家だった彼は、明るい未来のために自分の発明を活かそうという夢を持っていた。言い換えれば、その夢によって生きていた。しかしやがて彼も現代を知ることになる。1964年から見れば夢の未来だったはずの2015年は、戦争で人が殺され、環境は破壊され、以前よりずっと生きづらい時代となってしまっている。「ディストピア」や「ポスト・アポカリプス」、言い方は何であれ、その終末的な世界観は、現実としてもフィクションとしても、ある種の説得力もった未来として享受されてしまっている。

本作『トゥモローランド』は昨今の終末ブームに対するディズニーの返答となっている。世界が破滅したら、世界がゾンビに溢れたら、世界が人工知能によって征服されてしまったら、という巷にあふれる暗黒の未来像に対抗し、「夢の世界」の盟主として、そうならないためにすべきこと、そして、そうならないためにディズニーがしてきたことの意義を描いた物語となっていた。とくに後者の方が強調されており、これほどまでに製作した映画会社のカラーが前面に打ち出された作品も見たことがないし、ほとんどディズニーの人材募集映像、もしくは広報映画のような趣となっている。

はっきり言って、やりすぎである。

『アベンジャーズ』にとってのアウディとか『ワールド・ウォーZ』のペプシコーラとか、その比ではなく本作にはディズニーという会社のカラーが全編に渡って隠されることもなく強く打ち出されている。繰り返すが、やりすぎだ。

ブラッド・バードの作品ということで物語は練りこまれているし、絶えず登場する夢ある未来的ガジェットや、アニメーションのようなシークエンス、そしてクラシックSF要素など見所は十分だし、ジョージ・クルーニーやブリット・ロバートソン、そして謎を少女を演じた新人のラッフィー・キャッシディなど、キャラクターの設定も悪くない。しかし本作の高揚感とは、夢あるガジェットやVFXによって作られたもので、物語によって演出されたものではない。そこに「未来を作るのはあなたの夢だ」というテーマが合わさり、なかなかの説教臭さを放つようになる。また本作には明確で強い悪役や敵が描かれないことからも、高揚感よりも長く続く浮遊感の方が印象強くなってしまい、悪い意味でのアトラクションのような映画だった。

もちろん見所は十分だし、ディズニーランドに足繁く通うようなファンにはたまらない作品であろう。すでに述べたが本作はデイズニーという会社が存在することの意義と、その未来への勝手な責任を語った物語だ。しかしこの夏のブロックバスターとしては、そしてウォルト・ディズニーの夢とその謎を描く映画としては、本作はその期待値には達していない。

たとえ未来が夢と希望に溢れようとも、それが笑顔と良心に偽装されたままに強要された時点で、この世界はディストピアのはじまりとなるということを、ディズニーは知らないのだろうか。

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ということで『トゥモローランド』のレビューでした。かなり期待していたこともあるかもしれませんが、大作映画としてはこの夏最初のつまずきだったと感じます。未来への希望あふれるエンディングでありながら、そのディズニーによっての 「作られた感」が逆にディストピアでした。しかしジョージ・クルーニーの淡い恋心は『レオン』並みにロリコンぎりぎりでヒヤヒヤしたし、やはりディズニーの未来イメージは斬新であることは間違いありません。ディズニーファンにはきっとたまらないでしょうが、ミッキーを見ても「けっ、ネズミかよ」くらいのひねくれ者には合わない映画でもあります。日本公開は2015年6月6日。あなたはどっちですか?

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