50年代SF映画傑作選⑥『放射能X』(1954)レビュー

CGとデジタル全盛の今だからこそ押さえておきたいクラシックSF映画を勝手に紹介する50年代SF映画傑作選。今回はパニック映画の金字塔『放射能X/Them!』を紹介します。宇宙関係のSF作品が華やかだった50年代にあって、原爆実験によって巨大化したアリが襲いかかる絶品モンスターパニック。脚本、演出ともに同時代の類似作品からは頭一つ抜け出した記念碑的作品。『ゴジラ』ファン必見の快作!

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『放射能X/Them!』

1954年公開/アメリカ映画

監督:ゴードン・ダグラス

脚本:テッド・シャードマン、ラッセル・ヒューズ

原案:ジョージ・ウォーシング・イェーツ

出演:ジェームズ・ホイットモア、エドムンド・グウェイン、ジェームズ・アーネスなど

ストーリー

ニューメキシコの荒野をパトロール中だった警官ベンとその相棒は、たった一人の少女が放心状態で彷徨っているのを発見し保護する。少女は無表情で問いかけにも全く無反応。警官らはその近くに荒らされたトレーラーを発見し、少女の家族が何者かに襲われた可能性があることを知る。近くの店を訪れた警官はそこも同様に荒らされており、店主は無残にも殺されていた。そしてなぜか砂糖の袋だけが散乱していた。ベンは相棒を残して店を出ると、突如不可思議な音とともに相棒は何かに殺されてしまう。

さっそく調査が行われ少女の父親はFBI所属であり、家族で休暇を過ごしていたことが判明。ベンはFBIから送られた捜査官のグラハムとともに事件を担当する。そして現場近くの不思議な足跡の鑑定を専門家に依頼、昆虫の専門家であるメドフォード博士とその娘のパットが捜査に加わる。

現場を調査した博士は、その周辺で9年前に原爆実験が行われていたことを知り、一抹の不安を覚える。そして生き残った少女にアリが出す酸を嗅がせてみたところ、これまで何の反応も見せなかった少女が突然錯乱状態に陥る。彼女は「奴らよ!/Them!」と叫び出した。

砂漠の調査に向かった一行は、そこに巨大な足跡を発見する。それはアリのように見えるも、足跡から想像するに身のため2メートルを超える巨大なものだった。そしてその時、パットの目の前に巨大なアリが現れる。ベンとグラハムが一斉射撃を加えたことで何とか仕留めることに成功。博士の見立て通り、原爆実験の影響で巨大化したアリが暴れていてのだった。

かくして軍を投入した大規模な掃討作戦が実施されるのだった。

 

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レビュー

宇宙や異星人を扱ったSF映画が多く作られた50年代にあって、核という時代を背景に巨大化した生物が人間の脅威となる、というモンスターパニック映画の原点とも言うべき作品。この作品の後に巨大化する昆虫や生物、そして『ゴジラ』などの怪獣映画が多く作られることになる。また物語構成も単純なパニック作品という訳ではなく、まるで刑事ドラマのように巨大アリ(=犯人)の足跡を追っていく展開となっており、脚本も秀逸だ。

その脚本を担当したのは後に日米合作(東宝)の特撮映画『緯度0大作戦』の原作と脚本を担当したテッド・シャーマン。1969年に公開された『緯度0大作戦』は本多猪四郎と円谷英二のコンビで監督され『ジェニーの肖像』のジョセフ・コットンと宝田明の主演で作れらた作品。何が言いたいのかというと、本作と『ゴジラ』の関係だ。本作はモンスターパニック映画の始祖と捉えられることが多いが同時に怪獣映画にも多大な影響を与えている。核による副作用から人類の脅威が生み出されるという設定以外にも、本作とオリジナル『ゴジラ』のラストシーンの重なりはただ偶然なのだろうか。

またキャスティングに関しても二人のタイプの違う男と、老博士とその娘という設定は1954年の『ゴジラ』と同じである。『ゴジラ』の特撮に関してはレイ・ハリーハウゼンによる『原子怪獣現わる』からの影響が有名だが、ストーリーや設定に関しては本作『放射能X』との重なりはただの偶然とは思えない。本作と『原子怪獣現わる』そして『ゴジラ』が1954年という同じ年に公開されるという事態は、当時の映画製作の忙しなさを考慮しても、どこまでが偶然でどこまでが影響なのか判別に苦しむ。しかしとにかく核という未知の脅威をSFを通して現実的に解釈しようとする人々が日米にいたことだけは間違いない。

本作は低予算で撮られたため特撮関係に関しては決して褒められたものではない。しかし序盤の放心状態となった少女を巡る冒頭から、昆虫学を駆使した推理と捜索が行われる中盤、そして事態が一気に急転して激しい銃撃戦となる後半と、それぞれのパートが有機的に繋がっており、その巧みな展開力には脱帽してしまう。また「巨大アリ」という一見すると突飛な設定にもしっかりと昆虫学の考証を挟むことで、不思議と違和感が感じない。巨大生物の襲来というのは今でも続くB級映画の王道フォーマットだが、本作はB級と言ってしまっては失礼と思えるほどに、脚本と演出が練りこまれている。

そして前述した『ゴジラ』との関係性を踏まえても、本作は紛うことなき50年代SFの傑作である。もちろん突っ込みどころもしっかりある。特にニューメキシコの下っ端警官だったベンの活躍とその最後には本作最大のぶっ飛び要素だ。しかしそんなことも小さいと思えるほどに全体としてよくできている。その後のB級映画やモンスターパニック映画の雛形となったまさに記念碑的作品と言える。

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ということで1954年の『放射能X/Them!』のレビューでした。本文では『ゴジラ』との関連について言及していますが、こっちはかなり低予算で作られており、そのアラが目立つことも事実です。しかし予算を削られながらも、当時アメリカで大ヒットした作品だけあって、今でもしっかり楽しませてくれます。50年代に作られたモンスター映画では個人的に本作が一番好きです。特に冒頭の少女に関するシーンはホラーの要素もあって素晴らしいです。未知なる存在は宇宙だけでなくこの地球に生まれているんだ、という温故知新的なストーリーもいいです。是非、一度観てください。『ゴジラ』ファンは必見ですね。

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