50年代SF映画傑作選③『宇宙戦争』(1953)レビュー

CGとデジタル全盛の今だからこそ押さえておきたいクラシックSF映画を勝手に紹介する50年代SF映画傑作選。今回はH・G・ウェルズ原作をジョージ・パル製作でバイロン・ハスキン監督が映画化した1953年の『宇宙戦争』です。2005年にはスピルバーグによってリメイクされた本作。今見れば「?」な部分ももちろんあるが、火星人対人類との決死の戦いに注目。

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『宇宙戦争/The War of the Worlds』

1953年公開/アメリカ映画

監督:バイロン・ハスキン

脚本:バリー・リンドン

原作:H・G・ウェルズ著『宇宙戦争』

製作:ジョージ・パル

出演:ジーン・バリー、アン・ロビンソン、レス・トレメインなど

ストーリー

ある日、巨大な隕石が地上に降り注いだ。現場近くに偶然居合わせた科学者フォレスターは、隕石の大きさから見てクレーターが小さいことを不審に思うも、隕石が冷めたころになった調べようと街へ戻る。しかしその夜、隕石のなかから突然何かが這い出てくる。そして謎の生物はアーム状の先端にある目のような場所から光線を発射し、監視していた男たちを一瞬で灰にしてしまう。

空からはさらに多くの隕石が降り注いできた。現場に向かったフォレスターや兵士たちは、隕石から這い出てきたマシーンのような異生物に襲われ、すぐに軍の派遣を要請する。

やがて火星人襲来のニュースは瞬く間に広がり、軍も迎撃の準備を整える。途中に火星人との対話を試みた牧師は哀れにも焼き殺され、軍はそれを機に一斉攻撃を開始する。しかし火星人が送り込んだアーム型の空飛ぶ物体は強力なバリアで軍の攻撃を無効化してしまう。軍は撤退し、フォレスターも殺された牧師の姪であるシルヴィアとセスナで逃げようとするが、途中で不時着してしまう。

何とか生き延びたフォレスター一行は近くに民家に逃げ込むも、そこにも火星人の手が伸びようとしていた。

 

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レビュー

本作はイギリスの作家H・G・ウェルズの古典SF小説を原作としており、50年代から60年代にかけて『月世界征服』や『タイムマシン』などのSF映画を送り出したジョージ・パルが製作している。そして2005年にはスティーブン・スピルバーグによってリメイクされており、その驚天動地のエンディングは賛否が分かれるところだったが、それもこのオリジナルに忠実だったためだ。53年の映画ということで今見れば様々な部分で「つっこみ」が自然と入ってしまう。しかしそういった斜に構えた姿勢ではなく、50年代という時間を想像しながら見てみると、やはり笑ってばかりはいられない。

まず物語の導入の語りの部分、太陽系の紹介映像での特撮は素晴らしい。それぞれの気象条件に基づいた遠いイメージをヴィジュアル化することに成功している。そして飛行物体から蛇のような触手、後の日本怪獣にも多大な影響を与えた火星人の姿は、宇宙への純粋な想像力が機能していた50年代にあって衝撃的だったことは想像に難しくない。おそらく部分的にはまだ我々の宇宙人への漠然としたイメージへも影響している。

本作はパニック映画でもあり、そのため人間ドラマには多くを求めてはいけない。これはあくまで当時の大作映画で、『月世界制服』、『地球最後の日』と立て続けにSF作品を送り出していたジョージ・パルの話題作だったのだ。

たしかにストーリーそのものは原作にあるドラマ性をばっさりと切り捨てて、パニック描写に焦点を当てている(2005年版では原作にもかなり寄せている)。しかし冒頭で描かれる火星人とのファーストコンタクトや、異世界の存在との対話を試みるもまったく通じないシーンなど、観客に向けた問いかけも忘れてはいない。原題は「The War of the Worlds」で、世界大戦を意味する「World War」とは異なり、異なる世界間での戦争を意味しており、宇宙開発競争が始まる前のまだ得体が知られていなかった宇宙への漠然とした恐怖感もしっかりと描かれている。

確かに冷静に見ればかなり突飛な設定となっているのは事実だが、後半の暴徒化する人々の群れが突如地球に襲来した火星人の比喩となっていたり、手も足も出なくなった時の絶望感などしっかりと描ききっている。冷戦という時代を考えれば、アメリカが負けたままで終わらすことが出来なかったことは仕方ないし、突拍子もない終わり方とは言え、絶望感を抱えたままのエンディングは悪くない。

そして本作は後のSF映画に多大な影響を与えているテキストでもあり、『マーズアタック』や『インディペンデンス・デイ』などの元ネタでもあり、コピペ時代だからこそ原書にあたるという意味でも見逃せない作品と言える。

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ということで「50年代SF映画傑作10選」として1953年の『宇宙戦争/The War of the Worlds』のレビューでした。ドラマとしてではなくSFパニック映画の古典として是非とも鑑賞しておきたい一作です。特に後半の空襲シーンは見応え十分です。原作小説が書かれた時代には存在していなかった原爆が本作には登場し、まったく役に立っていない設定もいいです。核が全てを支配すると思われた時代に、それを無効化する存在を描いています。それでもやはり物語のドタバタ感は否めませんが、スピルバーグのリメイク作と比べてみると、「スピルバーグはここが気に食わなかったんだな」というのがよくわかって興味深いです。これも外せない古典SF映画です。

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