映画レビュー『ヴィジット』-帰ってきたシャマラン監督

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『ヴィジット/The Visit』

全米公開2015年9月11日/日本公開2015年10月23日/アメリカ/94分

監督:M・ナイト・シャマラン

脚本:M・ナイト・シャマラン

出演:オリビア・デヨング、エド・オクセンボールド、キャサリン・ハーン他

あらすじ

休暇を利用して祖父母の待つペンシルバニア州メインビルへとやってきて姉妹は、優しい祖父と料理上手な祖母に迎えられ、田舎町での穏やかな1週間を過ごすことに。祖父母からは、完璧な時間を過ごすためにも「楽しい時間を過ごすこと」「好きなものは遠慮なく食べること」「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」という3つの約束を守るように言い渡される。しかし、夜9時半を過ぎると家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡る。恐怖を覚えた2人は、空けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまうが……。

参照:eiga.com/movie/82414/

レビュー

怖くても凡庸なシャマラン監督は好きですか?:

「実はブルース・ウィルスは死んでいた」でお馴染みのM・ナイト・シャマラン監督最新作『ヴィジット』は、ここ数年の大作傾向が誤りだったことを認めるように、彼が得意とするジャンル「ホラー」に帰ってきた作品となっていた。

『ブレア・ウィッチ』から活発になったいわゆるファウンド・フッテージもので、姉弟が母親の過去に関するドキュメンタリーを撮っているという設定で物語は進んで行く。自分たちが生まれるずっと前に母親は実家を飛び出し関係修復されないままに現在に至るも、ある日インターネットを通じて長く会っていない娘の子供たちに会いたいと連絡してきた田舎のおじいちゃんおばあちゃん。そして祖父母の願いを聞き入れる形で二人の姉弟は祖父母が暮らすペンシルバニアの田舎で一週間滞在することになる。そこで惨劇が起きるのだ。

本作はホラー映画としては真っ当な作品だと思う。ファウンド・フッテージとホラーの相性の良さがうまく引き出されていたし、何よりキチ◯イなじいちゃんばあちゃんがいい味だしている。ちゃんとドキドキさせてくれる。そして震えるような気狂い描写も後半に用意されている。

舞台はペンシルバニアの一軒家で、初めて会う祖父母と一週間暮らしているうちに、どうやら祖父母が何かを隠してることに気がつく。そして二人の姉弟の母親(祖父母から見て娘)もこれまで実家を飛び出した理由について何も語っていなかった。そして迫り来る惨劇。

祖父母は何を隠しているのか? そして母親は何を隠そうとしているのか?

この二つの疑問が入れ替わりそして重なり合いながら物語は進行していく。隣家まで車を使わなければならないペンシルバニアにおいて一軒家とは牢獄と同じにもなる。しかも携帯の電波もWiFiもない田舎での出来事。何もない田舎屋敷で祖父母から言い渡される謎のルール「夜9時半以降は部屋からでるな」という言葉の意味が徐々に明かされていく過程は文句なしに怖い。しかも本作では「音」の出来がよく、普段行う仕草や行動から発せられる音も物語が進むごとに、何か別の異常な行為の音のように思えてくる。そして観客は結末に向けていろいろなオチを無意識に考えつつ、『シックス・センス』のような壮大な仕掛けを期待している。

シャマラン監督は「オチ」の映画作家と言える。『シックス・センス』や『サイン』といった作品が好評だったのはその巧みなオチの誘導のためで、観客の想像の裏をかくラストには思わず唸ってしまうほどだ。しかしそれも長続きはしなかった。シャマラン監督は『レディー・イン・ザ・ウォーター』の大失敗から新境地開拓を開始、そして『エアベンダー』、『アフター・アース』と大作映画を世に送り込んでは、ことごとく酷評されるという経緯のなかで本作は作られている。観客はみなシャマランのオチに期待してる。そのための伏線と思われるようなカットも多く映されており、これは期待できると恐々しながら観ていると、案外早い段階でオチが明かされた。しかし一本の映画のオチとしてはあまりに弱いため、ここから驚愕の「大オチ」が用意されていると期待していると、、、、、実際はどうでしょう?

ネタバレ回避のために全体の感想さえ書くことが躊躇われるが、簡単に要約すると「怖くて凡庸なシャマラン作品」というところか。

シャマラン監督が失速した理由は明らかだ。それは観客がシャマラン監督作にはどんでん返しの「オチ」があることをすでに知っており、それを待ち望むようになったためだ。これはなかなか難しい問題で、「オチを待つ」という鑑賞スタイルは物語を全体的に俯瞰しないと成立しない。つまり「物語に入り込んでいない」という状態になりかねない。結果、観客のオチへの基準は高くなる。またシャマラン自身の想像力にも陰りが見え『ヴィレッジ』では盗作が指摘されるほどになり、『レディー・イン・ザ・ウォーター』では完全に溺死した。そして逃げるようにして世界版カンフーくんこと『エアベンダー』、そして『アフター・アース』といった明らかな失敗作へと向かっていった。作品全体ではなく「オチ」に注目された結果、シャマラン監督は苦行のような「オチ作り」に嫌気がさしたのだろう。その気はわからなくもない。

しかしシャマラン監督は帰ってきた。誰もが手ぐすね引いて「オチ」を待っているホラー映画に帰ってきた。結果は褒められたものではないかもしれないが、そもそも彼の作家性とはホラー映画でしか再現できないものであることは明白だっため、やはり彼の存在が広く知られる前の初期作品にはそもそも敵わないのだ。それらと比べると壮大さも肩透かしも、観客を巻くための煙も、どれもがスケールダウンしている。唯一シャマランの微妙なコメディセンスだけは遺憾無く発揮されており、もともと「シャマランのウケ狙いは寒い」と思っている方には好まれないだろう。

『パラノーマル・アクティビティ』や『インシディアス』の製作を手がけたジェイソン・ブラムがプロデューサーに参加したため、その手の大量生産系ホラー映画に片足突っ込んだ格好のシャマラン監督だが、「オチ」抜きで見ればこれはなかなか怖い映画だった。田舎のイカれた老夫婦によるホラー的恐怖と、家族の過去を探すというドキュメンタリー的要素を合わせたことがシャマランにとっての実験だったのだろう。ラストに関してはシャマランらしいぶった切りのようでもあるが、同時に凡庸でもあった。

日本公開用のコピーでは「あなたは騙されている」というオチの存在を端から明かしてしまう斬新な手法が取られていますが、結局はこういうことです。

怖くてもオチの弱いM・ナイト・シャマラン監督は好きですか?

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ということでM・ナイト・シャマラン監督作『ヴィジット』のレビューでした。何とも評価し辛い作品ですが、シャマラン作品としては物足りなく、ホラー映画としては水準以上、という感じです。あとPG13という設定からもお分かりのように残酷描写はほとんどありません。でもラスト近くで姉弟がそろって気狂いになっていく場面は一見の価値あり。でもそこからがね、、、、、思わず、はぁ?、となってしまいました。あと全体的に漂うダサい雰囲気は意図的なものなのか、それともシャマランの素なのか判別に苦しみますが、どちらにせよ今後に期待です。以上。

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