映画レビュー|『コードネーム U.N.C.L.E.』-死ぬまでマカロンでも食ってろ!

The man from u n c l e 2015 poster wallpapers

『コードネーム U.N.C.L.E./The Man from U.N.C.L.E.』

全米公開2015年8月14日/日本公開2015年11月14日/アメリカ/116分

監督:ガイ・リッチー

脚本:ガイ・リッチー、リオネル・ウィグラム

出演:ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー、アリシア・ヴィキャンデル、エリザベス・デビッキ、ジャレッド・ハリス、ヒュー・グラント他

あらすじ(ネタバレなし)

大ヒットシリーズ『シャーロック・ホームズ』でお馴染みのガイ・リッチー監督が、1960年代の超人気TVシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」を、今まで観た事のない最高にイキでゴージャスなスパイ・サスペンスとして蘇らせた!舞台は東西冷戦真っただ中の1960年代前半。まさに敵同士のCIAエージェントとKGB工作員が、世界を巻き込む一大テロ事件を止めるために手を組んだ!やり方、考え方が真逆のコンビが世界を股にかけ、鍵となる失踪したドイツ人科学者の娘を守りながら科学者本人を探し出さなければならない。タイムリミットが迫る中、核爆弾大量生産技術流出の危機から世界を救えるのか!?

参照:wwws.warnerbros.co.jp/codename-uncle/

レビュー

スタイリッシュを粛清せよ!:

1998年の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』からガイ・リッチー監督は一貫してスタイリッシュな映画を撮り続けている。しかもただスタイリッシュなだけでなく、彼の特性とは、一見すると粗野にも思える物語を敢えてスタイリッシュに演出することで、物語レベルと演出レベルで奇妙な違和感を生み出すことと言える。普通なら南ロンドンあたりにたむろするゴロツキがちょうどいい役でもブラッド・ピットを起用することで脚本云々以前のサプライズを生み出したりもした。イギリス人の特性なのかもしれないが、とにかく通常とは違った切り口で演出を施すことを得意としている。

本作『コードネーム U.N.C.L.E.』は日本でも1960年代後半にテレビ放送されて大人気を博したアメリカNBCの『0011ナポレオン・ソロ』の映画化作品。

舞台は冷戦のど真ん中だった1963年。アメリカのスパイであるナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)とソ連のスパイであるイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)が敵対する中、謎の犯罪組織が企む核兵器の拡散と技術流出を止めるため、嫌々ながらも手を組んで世界の危機から守る、というもの。アメリカ人らしく呑気で気楽な主人公ソロを演じるのは『マン・オブ・スティール』でスーパーマンを演じたヘンリー・カヴィル。ロシア人らしく真面目で融通の利かないイリヤ・クリヤキン役には、『ソーシャル・ネットワーク』で双子役を演じ、『ローン・レンジャー』でも印象を残したアーミー・ハマー。そして物語の鍵を握るドイツ人科学者の娘役には『エクス・マキナ』で衝撃的な人工知能を演じたアリシア・ヴィキャンデル。基本的にこの3人のドタバタと活躍が物語のメインとなっている。

そして困ったことに日本でのキャッチコピーである「史上最高にセクシーで、史上最悪の相性の、史上最強のスパイコンビ、登場」という言葉そのままの内容で、正直うんざりしたしだいなのだ。もうただそれだけなのだ。

我々は何も2時間もの尺のミュージックビデオやプロモーションビデオを観にわざわざ劇場に足を運ぶわけではない。金持ちそうな美男美女が船上パーティでシャンパンの泡にキャッキャッとはしゃいでいる映像も浜崎あゆみ風な音楽に乗せてなら2分くらいは耐えられるが、本作は浜崎よりもずっと洗練された音楽をバックに、世界トップクラスの美男美女が2時間に渡ってお遊びになられる。スケールが大きいことは間違いないが、間違ったスケール感だ。物語は世界の危機を救うためのミッションを描いており、前述ようなガイ・リッチーの作家性のためシリアスな緊張感はゼロとなっている。中心人物の3人の美男美女が最高にオシャレな服に身を包み、気の利いたジョークを言い合いながら、何となく世界を救ってしまうのだ。確かに乱立するスパイ映画のなかでは個性を発揮しているが、その個性とはスパイ映画としての魅力や基本を放棄していることに由来している。スパイ映画のふりをしたオシャレ映画といった面持ちなのだ。

ここからは極私的な感想としてちょっと口が悪くなってしまうことを前もって詫びつつも、こういうクソみたいな映画はまとめて農家のトラクターにでも踏みつぶされるべきだと思う。価格調整のために市場に出回ることなくそのまま土に返っていく余剰キャベツみたいに、そういうものがこの世に生み出されたことすらほとんどの人間が知らないままに黙って処分されるべきだった。最初の30分は眠いだけでよかったが、中盤はイライラを隠せない。しかも後半にはイケメン中年代表としてヒュー・グラントまでが登場する。俺はお前が買春して捕まった時の、あご勇そっくりで絶望感たっぷりのぶーたれ顔を忘れない。

美男美女が涼しい顔をしながらスタイリッシュに世界を救う。これだけでも十分にイラつくのに、ピンチの時も常に冷静で、ちょっとしたミスがあっても鉄仮面さえとろけるような笑顔で切り抜ける。全部がオシャレに片付けられ、スタイリッシュな予定調和が最後まで続いていく。こういう映画を作ろうとする奴らの感性とは、結局のところ英国貴族のノーブルにほだされ金持ちになったらそれを真似しようとする成金と同じ精神構造だし、言い換えればグズに違いない。そして最悪なのはこういう映画を「なんてスタイリッシュなの、素敵!」という連中がこの世の中に一定数存在するということだ。百歩譲ってそういう連中は基本的に学校も行ったことのないアホだと割り切ったとしても、心の奥底にはメラメラとした殺意がくすぶっている。

そんなにスタイリッシュやオシャレが好きなら、死ぬまでマカロンでも食ってろ。

、、、、

、、、

、、さて、若干の冷静さ取り戻してみたのだが、やはりこの映画の何が面白いのかわからなかった。確かに無意味な映画ではないことは分かる。どれだけ悪く言おうが、そしてどれだけ個人的に嫌悪しようが、やはり本作の映像が洗練されていることは間違いない。映像だけでなくヘンリー・カヴィルとアーミー・ハマーとの対比も悪くない。特にヘンリー・カヴィルはウジウジしたスーパーマンというイメージを逆手に取った「アメリカ人」の典型をうまく演じていた。そして『エクス・マキナ』で脚光を浴びたアリシア・ヴィキャンデルも、ペネロペ・クルスが現れた時のような強烈な印象を残している。いい所だってちゃんとある。

しかしそれだけしか印象に残らなかったのも事実で、特に物語面での手抜きはヒドい。スパイものとしても緊張感はないし、テロ防止ものとしても現実味に欠ける。新たな冷戦時代に突入したとも言われる世界情勢を意識して、敢えてアメリカとソ連(ロシア)が手を組むような物語をぶつけてきたのだろうが、「核拡散の防止」が肝となるスパイ映画というプロットにはもう飽き飽きなのだ。

美男美女が勝手に世界を救うという設定だけで物語も単純すぎる。映像の豪華さやスタイリッシュさで不十分な物語を乗り越えようとしたのだろうが、それこそ浜崎あゆみのPVと何も変わらない。映像というのは物語を立体的に表現するための作法であるはずで、物語の足りない分を「均す」ためのものではない。加えて映像に「騙される」ような快感にも至っていない。何もかもが中途半端、唯一達成できたのが「スタイリッシュ」さだけ。

悪くはないが、ただ「スタイリッシュ」というだけの作品。ガイ・リッチーの『スナッチ』が公開された時もそうだったが、オシャレオシャレと踊り狂う阿呆で劇場がいっぱいになるのかと思うと、いっそのこと上映中にミサイルでも撃ち込みたくなる。でもそんなことをすればヘンリー・カヴィルやアーミー・ハマーみたいなイケメンスパイにへらへら笑いながら殺されることになるのだろうから、もうどうしようもない。

それでも続編作る気満々らしいですが。

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ということでガイ・リッチー監督作『コードネーム U.N.C.L.E.』のレビューでした。オリジナルの『0011ナポレオン・ソロ』は見たこともないので、その関連についてはわかりませんでしたが、面白みに欠ける映画なのは間違いないかと。日本では中島哲也監督作品に似たような感想をよく持つのですが、ガイ・リッチーに関しては『ロック、ストック〜』で見せた脚本ありきでの独特のカット割りが「スタイリッシュ」だったはずなのに、本作では話の内容もユルユルです。確かに笑えるところもあるんですが、同じことを繰り返しでしつこいのです。同じスパイ映画でも『キングスマン』の方が100万倍カッコよく面白かったです。まずはオシャレを皆殺しに。以上。

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