トム・ハーディ主演『クライム・ヒート/The Drop(原題)』レビュー

トム・ハーディー主演『クライム・ヒート/The Drop』のレビューです。ギャングの金を店で預かるバーデンダーが巻き込まれるトラブルを描いたクライム・ドラマ。『マッドマックス』で主演を務めるトム・ハーディーの孤独な演技同様に、これが遺作となったジェームズ・ギャンドルフィー二の演技にも注目。原作は『探偵パトリック&アンジー』シリーズのデニス・ルへインの短編。

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■ストーリー、前半■ ※ネタバレなし

叔父のマーフ(ジェームズ・ギャンドルフィー二)が経営するブルックリンの場末のバーで、バーテンダーとして働くボブ(トム・ハーディ)は寡黙で朴訥した人柄の青年。しかし裏の顔として、そのバーはロシアン・マフィアの裏金の保管庫という役割もあった。

ある日、ボブは近所のゴミ箱で傷ついたピットブルの子犬を発見する。無視して通り過ぎることができなかったボブは、近所に住んでいた女のナディア(ノオミ・ラパス)の助けで、その子犬を手当てする。そしてナディアに押し切られる形で、その犬にロコと名付け引き取ることになる。

またある夜、店仕舞いした後の店内で裏金を整理していたボブとマーフは、二人の仮面をかぶった強盗に襲われ、金を持ち逃げされてしまう。マフィアは二人に盗まれた金を取り戻すことを指示する。しかし、実はその強盗自体、金に困ったマーフが計画していたことだったが、ボブには知らせていなかった。

同じ頃、捨てられていたロコの飼い主を名乗る男がボブの前に現れる。男の名はエリックといい、彼にはバーの常連だった男を殺した疑いがかけられており、同時にナディアの元恋人でもあった。エリックはロコを飼い続けたければ一万ドル支払うようにボブに脅しをかける。

バーの金、そしてロコのことと頭を悩ますこととなったボブだったが、バーの裏手のフェンスに無造作に置かれた袋を発見。その中にはバーを襲った犯人の片腕とともに、盗まれた金が戻ってきていた。不審に思うボブだったが、マーフはその袋の中身を見よともしない。マフィアに無事金を返したふたりは、その時、スーパーボウルの賭け金をここで預かるように命令されるのだった。

そして町中の賭け金が集まるその夜、悲劇が起こるのだった。

■レビュー■

『ダークナイト ライジング』のペイン役で一気にハリウッドの注目俳優となり、その後新作『マッドマックス』の主役にも抜擢されたトム・ハーディの独特の雰囲気が映える本作は、派手さは全くないも、暗い緊張感に支配された良質なドラマ映画となっている。

原作は『探偵パトリック&アンジー』シリーズで知られる英国人作家デニス・ルへインの同名短編小説。過去にもルへインの小説は、クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』やベン・アフレック監督の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』、ディカプリオ主演の『シャッター・アイランド』として映画化されており、現実世界の端っこに存在する人々の孤独を主題とする魅力は本作にも十分現れている。

本作はラストにちょっとした驚きが用意されてはいるものの、それが映画の見所ではなく、あくまで人間関係における隠された秘密の持つ暴力性と、そこと同居する人間性を描くことを重要視している。そのため俳優陣の演技力は、本作の成功の直接的な鍵ともなっているのだが、その点において、ほぼ満点とも思える。

まず孤独な主人公ボブの朴訥とした雰囲気とその裏に潜んでいる真っ直ぐな狂気を、トム・ハーディが見事に演じている。彼は2014年公開の映画『LOCKE』の、車内だけでストーリーが進行するサスペンスでもその演技を絶賛されており、一部ではアカデミー賞に押す声もある。そして残念にも本作が遺作となったマーフ演じるジェームズ・ギャンドルフィー二も、家族と欲望の狭間で向かうべき出口を間違う男を熱演している。テレビドラマ『ザ・ソプラノズ』の大ヒットから、ただの悪役ではない、さらに幅広い演技が期待されるようになっていただけに残念。

本作は誰もが納得する終わり方をする映画ではなく、法律とか社会性とか倫理とか、そういったルールでは縛ることのできない人間の業のようなものを描こうとしている。その点において『ミスティック・リバー』や『ゴーン・ベイビー・ゴーン』などのルへイン原作映画と終わり方では非常に似ているが、本作は原作が短編小説のため、物語はゆっくりと、そして自然と進行していく。そのため人と人との関係から事態がゆっくりと暗転してく過程が丁寧に描かれている。

デヴィッド・フィンチャー作品と雰囲気は似ているが、フィンチャー作品の登場人物がある意味において洗練され特異なのに対しい、本作に登場する人物は皆、浅はかで、直情的で、野暮だ。しかし、だからこそドラマとしての説得力も備えている。

トム・ハーディのファンではなくとも見逃すには惜しい作品だ。

クライム・ヒート:

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Review Date
Reviewed Item
クライム・ヒート
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4
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