50年代SF映画傑作選②『地球の静止する日』(1951)レビュー

CGとデジタル撮影の普及で勢いづく現在の大作映画も、50年代に巻き起こったSF映画ブームがあってからのこそ。今ここで押さえておきたいクラシックSF映画の数々を勝手に紹介します。50年代SF映画傑作選第二弾はロバート・ワイズ監督作『地球の静止する日(1951)』です。2008年にはリメイクされるなど、その後のSF世界に多大な影響を与えた本作。SFだからこそ語られるドラマは今でも色あせない。

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『地球の静止する日/The Day the Earth Stood Still』

1951年公開/アメリカ映画

監督:ロバート・ワイズ

脚本:エドムンド・H・ノース

音楽:バーナード・ハーマン

原作:ハリー・ベイツ著『主人への告別』

出演:マイケル・レニー、パトリシア・ニール、ヒュー・マーロウなど

ストーリー

ある日、信じられないスピードでアメリカ上空を飛ぶ謎の飛行物体が確認された。そしてその空飛ぶ円盤はワシントンに着陸、そこから人間にそっくりだが奇妙な衣装を身にまとった男が降り立った。男の名はクラトゥ。自分を友好的な宇宙人と紹介する。しかし彼が懐から何かを取り出そうとした時、周りで警戒していた兵士が発砲してしまう。倒れこんだクラトゥを兵士が取り囲もうとした時、宇宙船の中から巨大なロボットが出現し、周囲の武器を破壊し始める。恐れおののく人々だったが、クラトゥがある言葉を発すると巨大ロボットは活動を停止した。

病院に運ばれたクラトゥは、政府の人間に自分が地球に降り立ったのは地球の危機を救うためだと語り、世界中の指導者を前に地球の未来に対して警告したいと申し出る。しかし時代は冷戦期。各国の足並みはそろわず、クラトゥが望んだ世界各国の指導者との話し合いは事実上不可能だった。

アメリカ政府が地球全体の危機には役に立たないことを知るとクラトゥは病院を抜け出し、一般市民のなかに紛れ込む。そこでクラトゥは仲良くなった少年に導かれ、科学者のバーンハート教授と知り合う。バーンハート教授に対しクラトゥは、地球が手にした核兵器がやがて他の地球外生命体を脅かす存在になることを、そして宇宙の国連とも云うべき超越的な平和維持機関によって地球が危険因子として認定され破壊されようとしていることを告げる。クラトゥはバーンハート教授を通して世界中の科学者や各分野のリーダーを招集することで、地球に迫った危機の認識を迫ろうとするのだった。

 

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レビュー

クラシックSF映画の紹介では必ずと言っていいほどに名前が挙がり、2008年にキアヌ・リーブス主演でリメイクされている『地球の静止する日』の紹介です。SF映画の名作であり他への影響の大きさからもこれまで様々な形で論じられ尽くしてきており、それでもやはりまた語りたくなるような作品。

1950年代のSFブームの背景には冷戦構造の影響が見え隠れし、本作でも当時の社会が抱えていた核への漠然とした恐怖感が物語の中心に位置している。そしてその漠然としているが故に解決法もわからない現状の混乱を、人類とは別の存在に求めることとなったのは、宇宙開発という冷戦下での代理戦争に由来していることも興味深い。このように人類よりも高次な存在の仲裁によって平和を維持しようとする物語はアーサー・クラークの『幼年期の終わり』でも似た設定になっており(内容は異なるが)、50年代初頭からすでに一部の人たちにとって核による人類のデッドエンドが予想されていたこともわかる。

しかし本作は53年に出版された『幼年期の終わり』と比べるとどうしても宗教的な物語に見えてしまう。人類よりも高次な存在となれば神とそれに属する天使やキリストのメタファーとして享受するのは容易く、物語上でのクラトゥの受難はキリストそのものである。愚かな人類の世界に降り立ち、啓示を与えてはその愚かさによって殺され、そして天へと上っていく。『幼年期の終わり』が高次的存在と人類の関係性において、単純な宗教的解釈を受け付けない「未来への予感と可能性」に満ち溢れていたのに対し、本作は「平和=神への隷属」とも受け取られかねない物語となっている。特にラスト、様々な人種を前にして白人となって地球に降り立ったクラトゥが行う演説は、旧約聖書に見られる神が迫る「信仰か滅亡か」という問答に近くさえ感じる。

冷戦期の絶望感とは核がもたらす外側からの一瞬の崩壊にあったのに対し、現在の世界での絶望感は内部から徐々に首を絞められていく感覚へと変化しており、その発端と口実がクラトゥが人類に提示した「平和(=信仰)か滅亡か」という解決法と重なることを思えば、より本作への違和感は強くなる。2008年にキアヌ・リーブス主演でリメイクされた『地球が静止する日』がキリスト教的終末思想に乗っ取られてしまったのには、やはりオリジナルにもそういった傾向があったからだと思う。

とはいってもミュージカル、サスペンス、SFとなんでも来いの巨匠ロバート・ワイズが描き出す人間模様はテンポが非常によく、そして宇宙人を敵として描くのでない手法はスピルバーグにも受け継がれている。そして暴走するゴートを止める「クラトゥ・バラダ・ニクト」という合言葉は、もしもの時に覚えておきたい。

今見ると強引さも目立つものの、それでも時代を映す鏡としての役割は今でも色あせない一作。

The day the earth stood still

ということで「50年代SF映画傑作10選」として1951年の『地球の静止する日/The Day the Earth Stood Still』のレビューでした。SF映画のベスト企画でも必ずと言っていいほど名前が挙げられる作品だけに是非とも鑑賞してみてください。60年前の映画ですがスピード感があって飽きさせません。あと殺戮ロボット「ゴート」は外見はチョロそうでも半端なく強いという意味でフリーザの原型になっているのではないかと勝手に思っています。こっちは目から光線吐くだけですが。50年代という冷戦期の状況を思い計る術としても、また純粋な古典SF映画としてもオススメです。

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