映画レビュー|『ブック・オブ・ライフ 〜マノロの数奇な冒険〜』 ※ネタバレページあり

俺たちのギレルモ・デル・トロがプロデュースを手掛けた『ブック・オブ・ライフ 〜マノロの数奇な冒険〜/The Book of Life』のレビューです。メキシコで行われる祝祭「死者の日」をモチーフとしたアニメーション映画。日本でも大ヒットを記録した『アナ雪』とは反対に、本作は伝統的なロマンス映画であると当時に、本当の男とは一体何なのかということを主題とした男気映画でもありました。メチャクチャおすすめ作品なのに、日本公開は未定(おい!)。

THE BOOK OF LIFE TEASER QUAD

■ストーリー、前半■ ※ネタバレなし

ある博物館にスクールバスが止まった。そこから降りてきたのは生意気そうな子供たち。係員の言うことなど聞く気がないようで、好き勝手やっている子供たちを見かねたのか、一人の女性が子供たちを博物館の秘密の部屋に連れて行った。そして彼女は一冊の本を前にして、子供たちにその物語を読み聞かせる。「ブック・オブ・ライフ(生命の本)」に書かれている不思議な話を。

サン・アンヘルという街では故人に想いを馳せる祝祭<死者の日>の祭りが催されていた。そこには、死者たちが楽しく暮らす<記憶された者たち国(The Land of the Remenbered)>の美しき死の支配者であるラ・ムエルテと、死者たちが暗く暮らす<忘れられた者たちの国( Land of the Forgotten)>の意地悪な支配者シバルバが訪れていた。そして二人は、そのサン・アンヘルという街で、二人の男の子と一人の女の子を見つける。

マノロ・サンチェスは代々続く闘牛士の家系でありながらも牛を殺したりするのが嫌いで、本当は音楽家になりたいと思っているいつもギターを抱えた少年。そしてマノロの親友ホアキンは、逆にいつも剣を手にし戦いを厭わない勇猛な少年。そして二人は、自由闊達なマリアに恋をしていた。

そんな三人を見たラ・ムエルテとシバルバはどちらの男の子がマリアと結婚できるか、という賭けをする。ラ・ムエルテはマノロを、シバルバはホアキンを支持。そしてその賭けにラ・ムエルテが勝った場合はシバルバはもう死を弄ばないことを約束し、シバルバが勝った場合はそれぞれが支配する死後の世界を交換することとした。しかしその際、シバルバはホアキンが有利になるように強力な力を秘めた「永遠のメダル」をこっそりとホアキンに渡していた。

いつも一緒だった三人だが、地元の権力者だったマリアの父は彼女に礼儀作法を学ばせるためにスペインの寄宿学校に預けてしまう。旅立つマリアを見送る二人。マリアは以前にマノロのギターを壊してしまったためその代わりとして新しいギターをマノロにプレゼントする。そこには「いつも心からの演奏を」と書かれていた。

そして時は流れる。マノロは歌手になるという夢を父親に認めてもらえないなか闘牛士としての訓練を受けており、ホアキンは「永遠のメダル」の力によって街の守護者となっていた。一方、マリアは学校での生活を終えてサン・アンヘルに帰ってくることになった。マリアの帰還を祝うために祭りが催され、その舞台がマノロにとっての闘牛士のデビューとなった。大勢の観客とマリアが見守る中、無用な殺生を嫌うマノロは牛を追い詰めながらもトドメを刺すこと拒否する。観客から罵倒を浴びるなからマリアだけは拍手していた。

しかしその行為によってマノロはサンチェス家から勘当されてしまい、マリアもまた父親によって街の英雄であるホアキンとの結婚を決められてしまう。それでもマリアを諦められないマノロは、夜、マリアを呼び出して本当の気持ちを伝えようとする。しかしマノロとマリアが結婚することを阻止するために、シバルバが毒蛇を放った。そして毒蛇に噛まれそうになったマノロを助けるためにマリアが噛まれて、死んでしまう。

絶望に暮れるマノロ。そんななかマノロの前にシバルバが現れる。そして彼にマリアに会いたければ死者の国で会わせてやるとそそのかす。そしてマリアに心から愛するマノロは毒蛇に二度噛まれ、死者の国へと向かうのだった。

しかし実はそれも罠だった。マリアは死んでいなかった。マノロは、再びマリアと会うために、生き返る唯一の方法のために死者の国を旅するのだった。

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■レビュー■

信頼のギレルモ ・デル・トロによるプロデュース作品『ブック・オブ・ライフ 〜マノロの数奇な冒険〜』は、ディズニーやドリーム・ワークスのアニメーションとは一味違った作品に仕上がっていた。まずは物語内の登場人物をブリキの人形風に再現することで、映画の中で語られる物語という作品内のレイヤーをうまく表現していた。映画のルックスとしては、ここでも以前に紹介したライカ製作のアニメに近い。

また主人公の一人を歌手志望という設定にしたことでミュージカル仕立てにもなっており、作品のテーマとしても『アナと雪の女王』を意識したような作りになっている。本作の基本的な流れは、二人のタイプの違う親友同士が同じ女の子に恋をしてしまう、というよくある話だが、実は恋愛模様はどうでもよくて、「真の男とは?」という永遠のテーマについて現代的に応えようとする作品となっている。

主人公のマノロは、闘牛士一家に育ちながらも牛を見世物のように最後に殺すことに疑問を持っており、本当は歌手になりたいと思っている現代的な感性を持った男。そしてマノロの親友にして恋敵であるホアキンは、チョビひげを生やした伝統的なマチズモを体現するような男。マリアがどちらの男を選ぶのかはネタバレページで書くとして、興味深いのはどちらのタイプの男も、生き辛さを感じているということだ。伝統的な価値観を押し付けられることで自分の本当にやりたいことが理解されないマノロはもちろんのこと、ホアキンもまた社会が望む強い男を演じることを強要されている。ふたりの違いはといえば、そういった状況を受け入れるか否かの違いでしかない。ちなみにホアキンの声を担当するのがチャニング・テイタムであることも意味が深い。

『アナ雪』が「ありのまま」と女性の生き方の解放を歌ったのと同様に、本作では男にも女性同様に様々な社会的バイアスがかけられていることが示されている。そして本作は中盤から死者の国を舞台にして物語が進行するのだが、死者の国においては死者たちは生前に受けていた様々な社会的バイアスから解放されている設定になっている。こういったブラックな感性が、子供向け映画でありながらも風味よいスパイスになっている。

そして戦いよりも歌などの芸術の方が人生において重要なものであることを強調しながらも、大切なものを守るためには戦いに挑まなくてはならないということもしっかりと描かれている。男として「ありのまま」で生き続けることは出来ないけど、「ありのまま」の想いを捨て去ることの愚かさを、マノロとホアキンという二人の愛すべき男たちを通して本作は語りかけている。

ラストの大団円も見事な作品。今からでも遅くないので日本公開してもらいたい一作。レビューの最後は本作のテーマ曲『I Love You Too Much』で。

※次のページにストーリー後半のネタバレあり※

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