映画レビュー|『ターミネーター:新起動/ジェニシス』-歴史改ざん新シリーズ

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シリーズ第5作目となる『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のレビューです。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800とサラ・コナーが親子のような関係を築いている新3部作の最初の作品。監督は『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』やテレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローン』のアラン・テイラー。シリーズ最高傑作と評される『T2』を継承するような一作。

『ターミネーター:新起動/ジェニシス』

全米公開2015年7月1日/日本公開2015年7月10日/アメリカ映画/126分

監督:アラン・テイラー

脚本:レータ・カログリディス、パトリック・ルシエ

出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェイソン・クラーク、エミリア・クラーク、ジェイ・コートニー、イ・ビョンホン、J・K・シモンズ他

あらすじ(ネタバレなし)

2029年、スカイネットによって破壊され尽くしていた世界だが、人類は救世主ジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)が先頭になってロボット軍団に反旗を翻した。そしてとうとう敵の拠点を制圧することに成功するも、現時点の敗北を悟ったスカイネットは、ジョン・コナーの存在を消すために1984年にターミネーターT-800(若シュワルツェネッガー)を送り込み、ジョンの母であるサラ・コナー(エミリア・クラーク)の殺害を試みる。

そしてこのスカイネットの試みを阻止するために、ジョン・コナーの弟分だったカイル・リース(ジェイ・コートニー)が1984年にタイムスリップする。しかし1984年へ転送中、レジスタンスに紛れ込んでいたターミネーターにジョンが襲われているのを目にする。

そんななか1984年に到着したカイルは、そこで警官の格好をしたT-1000(イ・ビョンホン)に襲われるも、彼を助けたのはサラ・コナー本人と老いたT-800(老シュワルツェネッガー)だった。自分が救うはずのサラに助けられたカイル。しかもサラはT-800を父親のように慕っていた。

タイムラインが乱れていることを知ったカイルは、不思議な記憶を頼りに、再び、今度は 2017年にサラとともにタイムスリップする。

そして思わぬ敵の登場に驚きながらも、スカイネット壊滅を目指し未来をかけた戦いに赴くのだった。

レビュー

『新起動』ではなく歴史改ざん:

本作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』を観終わった直後、「これは困った映画だな」と思った。ストーリーは明快かつ捻りも十分で、アクションありロマンスあり戦争ありと、2時間強の上映時間で退屈を感じることはない。特に『T1』と『T2』をシリーズの正史と考え、それ以降に作られた2作をなかったことにしたいファンには申し分ない作品だろう。特に『T2』からの引用は多く、近年のハリウッド80年代自虐ブームに乗ったアーノルド・シュワルツェネッガーの演技と相まって、『T2』をリアルタイムで熱狂した世代にとってはうれしい一作と言える。

では一体何が困ったのかというと、本作は確かにシリーズ最高傑作と言われる『T2』の後に続く作品であることは間違いないが、だからといって本作はシリーズに新しい展開を生み出した訳ではなかった。出発点そのものが非常に後ろ向きで、脚本の内容が、駄作と言われる『T3』と『T4』をなかったことにする目的、もしくはその2作を作ったせいでこじれてしまった物語上の時間軸を都合よく修正する目的で執筆されたとしか思えない。そこにシリーズの新展開を提示する意思はなく、仕切り直しのために過去作を改ざんし帳尻合わせるのが目的の作品になっていた。

タイプループを扱う作品の肝とは、時間を恣意的に捻じ曲げた結果に生じるタイムパラドックスとどのように向き合うのかということに尽きる。タイムループものに時空を超えたロマンスや親子愛、もしくは「君は僕を知らないが、僕は君をこれまでも、そしてこれからもずっと見守り続ける」という記憶上の行き違いが多く採用されるのは、タイムルーパーが全部背負うことになるパラドックスの重荷に耐えるためには愛が必要だとする意図があるからだ。普通の感性ではタイムパラドックスには耐えきれない。そこには無上の愛が必要で、もしそれをなくせばイーサン・ホーク主演の『プリデスティネーション』のような結果になる。つまり関連する人々は破綻し、ハッピーエンドにはならないのだ。その点で物語にリアリティを生みだすために作家たちは苦心するのだが、本作の最大の欠点とは、『T2』以後の世界で、こじれていることが明白な時間軸上の矛盾を、たった一言でしか説明しないことだ。

パラレルワールドのせい。

すべては量子力学という憎々しいヤロウのせいなのだが、シリーズ上の問題点を「別の世界線での出来事」として説明可能だとする態度は、翻って『T1』や『T2』の存在意義さえも危うくする。確かにターミネーターは『T2』までで、それ以降は観ていないという観客には何の問題もないのだろう。でもシュワルツェネッガーの老いを利用するためにリブートやリメイクという方法を取らなかったのだから、シリーズ作品の半分をなかったことにしましょう、というのはあまりにも虫が良すぎる。それはまるで『殺人魚フライングキラー』を監督した過去を消し去ろうとする、「巨匠」ジェームズ・キャメロンのイヤーな態度とぴったり重なる。ちなみにこの『ターミネーター』のストーリーは、キャメロンが過酷を極めた『殺人魚フライングキラー』の撮影中に見た幻覚が基になっているという。自分を評価してくれない社会を見返すためにタイムマシーンで過去に行き人生をチートする、というのは『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』などのコメディでのみ許される設定で、それはみんな大好きな『T2』のテーマと正反対のものだ。歴史とは必然であり連続なのだ。別に日本の官邸を引き合いに出す気はないが、歴史の改ざんとはその時代の消却につながり、結果、より大きな矛盾を生み出すことになる。

上記のような理由から本作を高く評価することはしない。そもそも『T2』で物語は終わっているべきだという想いを強くした。しかしこういった見方が、純粋に映画を楽しむ姿勢とも違っていることは自覚している。実際に映画としてはしっかりと楽しめた。アクションシーンは見応え十分で、ロマンスも悪くない。新旧のシュワルツェネッガー対決は前のめりになって観たし、T-800の親バカぶりという設定も『T2』の続編としては興味深い。再度シリーズ化される新三部作の1作目としては、これまでの問題点を改めることになってよかったのだろう。しかも過去作を観ていなくても物語の方向性を見失うことはない作りになっている。

これがターミネーター初体験の人や、『T1』と『T2』をこよなく愛する人にとっては素晴らしい映画体験となることだろう。一方で本作をシリーズ最新作『T5』として待ち望んでいた人にとってはどうだろうか。あまりにも無邪気に不都合を全部パラレルワールドに押し付けられてはあっちの世界の人たちも迷惑だと思うのだ。小学生の時に習うことだが、自分がやられて嫌なことは他人にやったらダメだよ。

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ということで『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のレビューでした。本当に「困った」映画で、蓮實的表象なんちゃらで観たのなら、まあいいんじゃね、という感じだろうけど、こっちは過去作全部観てますから、しかも『T2』以降はリアルタイムで観てますから、忘れろたって無理っすよ。あとセルフパロディもひつこいです。セリフや動き、そして音楽も楽しいのは最初だけで、ひつこいよ。音楽はローン・バルフというハンス・ジマーの弟子筋の人らしいが、お師匠に気を使いすぎ。それでもタイムスリップのシーンは裸でよろしい。エミリア・クラークはあと2,3回タイムスリップしてくれていたらうれしかったです。あと、シュワとエミリア以外の主要キャラに華がなさすぎる。と、散々悪口書いてますが、大丈夫、まっすぐな気持ちで見る分には面白いですよ。ただ姿勢が気にくわないだけです。以上。

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