映画『SPY/スパイ』レビュー「速報!男には世界を救えません」

 

 

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CIAの優秀な分析官でありながらも現場とは無縁のおばさんがひょんなことからスパイとなって、世界の危機に何となく立ち向かうアクション・コメディ『SPY/スパイ』のレビューです。『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』に続いてポール・フェイグ監督とメリッサ・マッカーシーがタッグを組んだ本作。ジェイソン・ステイサムさえも歯が立たない女性コンビの活躍に、爆笑の連続となること間違いなし。この映画、とにかくお腹が痛いです。

『SPY/スパイ』

全米公開2015年6月5日/日本公開未定/アメリカ映画/120分

監督:ポール・フェイグ

脚本:ポール・フェイグ

出演:メリッサ・マッカーシー、ジェイソン・ステイサム、ローズ・バーン、ミランダ・ハート、ジュード・ロウ他

あらすじ(ネタバレなし)

CIAの優秀な分析官であるスーザン(メリッサ・マッカーシー)は仕事上のパートナーであり現場で情報収集する諜報部員ブラッドリー(ジュード・ロウ)を影から何度も救っている。しかし東欧に隠された小型核爆弾を探すミッションのなかでブラッドリーは重要参考人を誤って射殺してしまう。そこで殺してしまった参考人の娘なら情報を知っていると考えて、彼女の元にブラッドリーは向かうも、あっけなく見つかって殺されてしまう。

実はレイナというその女(ローズ・バーン)はトップエージェントの名前と顔を裏で入手しており彼女へのスパイ活動は現状では不可能という状況だったのだ。これでは筋肉自慢のやり手諜報員のリック(ジェイソン・ステイサム)も役に立たない。しかし世界は核の危機にさらされている。誰かがこの問題を解決しなければらなかった。

そんな時、元々は現場志望であったが今や小太りのデスクワーカーとなっていたスーザンが思い切って立候補する。

かくして、世界の危機は一人のおばさんに託されたのだ。

レビュー

速報!世界の危機を男に任せてもロクなことにならないことが判明:

ポール・フェイグ監督とメリッサ・マッカーシーのタッグで、女性バディ映画となれば2013年の『デンジャラス・バディ』が思い出される。融通の利かない偉そうなFBI捜査官のメリッサ・マッカーシーと地元警察の刑事サンドラ・ブロックが性格の不一致を乗り越え、女の友情を高らかに謳ったコメディだった。

本作『SPY/スパイ』も女性バディ映画の新しい系譜となる作品だが、『デンジャラス・バディ』はジャド・アパトー関連のいわゆる「ブロマンス/Bro-mance」のフォーマットを女性に置き換えただけとも言える作品だったのに対し、本作はさらに数歩踏み込んで、「男ができることは、女がやったらもっとうまくできる」というビジネスの世界では常識となりつつある恐ろしい真実(男から見て)を突きつけてくるのだ。もちろんコメディなので男社会のあり方はかなりデフォルメされているも、女性から観ればきっとこれも現実感の延長線上にあるのだろう。

メリッサ・マッカーシー演じる優秀な分析官は、元々は現場での仕事を望むも様々な思惑からデスクワークへと移っていき自分の能力を持て余すようになる。自分にできることはこんなもんじゃない、とわかっていながらも周りは彼女をそう評価しない。あくまで優秀なデスクワーカーとしてしか扱わないのだ。しかしそんな彼女がひょんなことから諜報員として現場で大立ち回りを演じることになる。これまで散々助けてやった男連中は役に立たず、彼女を支えるのは友人であり、スーザン同様に自分の能力を持て余した女性だ。

とにかく本作に出てくる男は、総じて、バカである。ジュード・ロウも見た目はエレガントだが、バカである。ジェイソン・ステイサムは、言わずもがな、バカである。そんなバカな彼らを影から支え、ミッションを成功へと導いているのはスーザンのような事務方の女性分析官であるも、評価されるのはただ現場にいるというだけの、バカな男の方。きっと優秀な女性であればあるほどに似たような状況を経験したことがあり、同様のフラストレーションを感じたことがあるのだろう。こういう毒っ気のある設定はポール・フェイグの得意とするところである。

本作を見ていると、女性にとって男の悦に入った自慢話が、どれほど滑稽に映っているのかよく分かる。しかし爆笑の連続のなか張り巡らされた男社会への批判は決して居心地の悪いものではなく、足裏をチクチクと針刺されような刺激となって逆に心地よかった。居酒屋などで毎夜行われる男たちの 武勇伝を、「すごいね」と優しい微笑みで聞いてくれている女性陣の心情とは、なるほどこういうものだったのかと理解できるのだ。女性が主役の映画は一頃よりも随分と多くなっているが、このように男社会の滑稽さを、誰も傷つけずに鮮やかに笑い飛ばして見せた作品は、浅学ながらも他に知らない。すごいのだ。

そして本作はラストが非常に素晴らしい。感動的とも言っていいほどに洗練されている。ロックバンドKISSの曲に「Beth」という名曲があり、そこではバンドマンが自分の彼女よりも音楽を優先する姿をピーター・クリスが哀愁たっぷりに歌っている。しかし本作のラストでは「性愛よりも友情に重きを置く」のは別に男だけに限ったことではないことが描かれている。女性にだって、「確かにあなたは魅力的だけど、それでも今晩は仲間と過ごしたい」という想いがあって当たり前なのだ。いつまでも女が男を待ってくれていると思ったら大間違いなのだろう。とにかく性別を超えて、ラストのメリッサ・マッカーシーにはシビれるのだ。

今のところ(6月中旬)本作の日本公開は未定となっているのだが、これまでも全米公開から大幅に遅れながらもポール・フェイグとメリッサ・マッカーシーのコンビ作品は劇場公開されているので、是非とも日本の劇場で公開してもらいたい。そして日本の総理大臣も歴代ロクでもないのだから、いっそのこと、女性に任せてみれば案外うまくいくのかもしれない。いや、少なくとも今よりよくなることは間違いないだろう。本作を見て思うのは、女性にもっと色々と任せてみて男はもっと気楽に家事でもすればいいじゃないかということ。変なプライドとかいらんのだ。そう、世界の危機すらもう筋肉で解決される時代ではないのだから。

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ということでポール・フェイグ監督作『スパイ/SPY』のレビューでした。これはポール・フェイグ作品のなかでは最高傑作だと断言いたします。そしてメリッサ・マッカーシーの最高傑作でもあり、今年に観たコメディでは最高の出来でした。おかげで否が応でも女性版『ゴーストバスターズ』に期待がかかってしまいます。とにかくこれは絶対日本公開希望です。あまり詳しくはありませんが腐女子と呼ばれる層には支持されていた『21ジャンプ・ストリート』などの「ブロマンス」映画ですが、本作はそういう「ヤオイ」系の魅力から解き放たれた、正統派女性コメディです。暇を持て余した主婦層を映画館へ誘導するにはもってこいでしょう。とにかくこれは5つ星満点の作品です。以上。

Summary
Review Date
Reviewed Item
SPY/スパイ
Author Rating
5
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