映画『ドラゴン×マッハ!/SPL2 殺破狼II(原題)』レビュー

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2005年に公開され世界に香港映画の底力を見せつけた傑作『SPL/狼よ静かに死ね』の続編『ドラゴン×マッハ!/SPL2 殺破狼II(原題)』のレビューです。前作ではドニー・イェンとサモ・ハン・キンポーという新旧のカンフーマスターの対決が実現し、本作では世界に羽ばたくムエタイの超人トニー・ジャーが香港に殴り込み。共演はウー・ジン。監督は2006年のバイオレンス映画『ドッグ・バイト・ドッグ』のソイ・チェン。肉体派アクションの極北、ここにあり。

『ドラゴン×マッハ!/SPL2 殺破狼II(原題))』

中国公開2015年6月18日/日本公開2017年1月7日/香港・タイ合作/120分

監督:ソイ・チェン

出演:トニー・ジャー、ウー・ジン、ルイス・クー、マックス・チャン、サイモン・ヤム他

あらすじ(ネタバレなし)

香港の犯罪組織が秘密裏に行っている臓器売買を取り締まるために覆面警官として組織に潜入していたチャン・チキ(ウー・ジン)だったが、バンコクでの銃撃戦に巻き込まれ、素性が組織にばれてしまう。そしてチャンは身分を改ざんされてバンコクの刑務所に送り込まれる。実はバンコクの刑務所は臓器売買をの提供元となっていたのだった。

一方、バンコクの刑務所の刑務官をしているチャッチャイ(トニー・ジャー)の一人娘は重い病気を患っており、骨髄ドナーが現れるのを待つ日々だった。そんな時、娘の骨髄と適合するドナーの携帯番号を手に入れるも、その番号には繋がらない。

絶望のなかで助けを待つチャン。そして娘を救うために目の前で行われている非道を見て見ぬ振りをすることで悩むチャッチャイ。香港とバンコクで繰り広げられる血の絆を巡る男たちの戦い。そして二人の男は不思議な運命に導かれるように拳を交え、やがては共に強大な敵へと立ち向かっていく。

レビュー

2015年の男泣き映画はコレ!:

2006年にドニー・イェンとサモ・ハン・キンポーという新旧の香港カンフーマスターが拳を交えた傑作『SPL/狼よ静かに死ね』は正義と法の間で爆発した男たちの怒りと悲しみの物語だった。そして一部キャストと「狼」というモチーフを継承する形で実現された本作『ドラゴン×マッハ!/SPL2 殺破狼II(原題)』は、国境を越えた男たちの血の絆と、血の怒りを描いた男泣き必至の激熱アクション大傑作だった。

主演は『ワイルド・スピード:SKY MISSION』にも出演し、本サイトでも紹介したドルフ・ラングレンとの共演作『バトルヒート』でも世界から注目されるタイのムエタイ超人トニー・ジャー。そして言葉も通じぬ彼と、拳を交え、やがては文字通り「血」で結ばれることになる香港の覆面警官を演じるは前作で狂気の暗殺者を演じたウー・ジン。また二人が立ち向かう最強の男を演じるはマックス・チャン。

本作は、香港アクション映画にはありがちなことだが、脚本に関しては決して良質に練りこまれたものではない。奇跡のような出来事が物語の核心となっており、それを荒唐無稽と受け取る人もいるだろう。また言葉が広東語とタイ語が入り乱れ、その違いが聞き分けられない観客にとっては、特に時制が行き来する序盤部分では物語の位置を把握するのが難しい。そして前作同様に細部の描写は過激で、監督はバイオレンス映画『ドッグ・バイト・ドッグ』のソイ・チェンだけに、痛々しいナイフ殺傷描写や、臓器売買の現場の映像など過激を越えてグロとも言えるシーンもある。

しかし、そんなことははっきりいってどうでもいい。脚本に粗があろうが、物語がしっかりと制御されていないパートがあろうが、グロだろうが、そんな批判は犬にでも食わせればいい。本作にはそんな批判をあっさり打ち消すほどに圧倒的なアクションの連続が用意されているし、そのアクションを盛り上げるためのドラマパートでも男たちの「血」を巡る熱い想いが、思惑を異にする様々な角度から描かれている。

ウー・ジン演じる覆面警官は潜入捜査がばれて身分を書き換えられ言葉も通じないバンコクの刑務所に送られる。誰も自分がここに放り込まれたことを知らず、絶望のなかを彷徨う。そして覆面捜査中に行方不明になった甥であり同僚でもあるウー・ジンを探す老警官。二人は文字通り「血」で結ばれている。一方、トニー・ジャーはその刑務所で刑務官として務めるも、娘の病気を治すためには多額の治療費が必要で、どうやら闇の仕事に手を染めている刑務長から金を受けとってはそれから目を逸らしている。娘を助けるため目の前の悪を黙って見過ごしている。最愛の「血」を救うために、目の前で流される「血」から目をそらさざるを得ない男。絶望の覆面警官と苦悩の刑務官。同じ場所で「血」を巡る苦悩のなかに沈む二人が拳を交えるのは必然だった。そして映画の中盤に刑務所で発生する、最近の時流をあからさまに取り入れたワンカット長回しで描かれる大アクションシーンは一見どころか百見でもしたくなるほどに圧倒的だ。もうこの時点で、その後どれだけダラダラしたシーンが続こうが入場料分の価値は十分にある。ただの派手なアクションシークエンスということではなく、その戦いの必然性がしっかりとドラマ部分で描かれているだけに、感情移入がどうしても濃密になってしまうのだ。

またトニー・ジャーもドルフ・ラングレンとの共演だった『バトルヒート』での消化不良が嘘のように、香港式ワイヤーアクションを駆使し、縦横無尽に飛び回る。とくにカンフーとの違いを明確にするために、ムエタイ式飛び膝蹴りが強調されており、これがワイヤーアクションとの相性抜群だった。ウー・ジンやマックス・チャンといったクンフーマスターを相手にしても全く引けをとらない。それどころか生身の説得力では彼がやはり頭一つ抜け出していた。だけどやはり演技力はまだ改善の余地がある。特に本作のようにドラマパートも重要な作品では、もっと表情にバリエーションが欲しいところだ。

本作では全編にわたって血が流れ続ける。善人も悪人も、それぞれが平等に血を流す。しかし同時に誰もがその流される血のために命がけで戦う。目的は違えど、誰もが血のために誰かの血を流し、もちろん自分の血も流される。一体これまでどれだけ「血」と打ち込んだのかわからないが、とにかくこれほどまでに様々な「血」のあり方が存在しているのかと愕然としてしまった。痛みを伴った血、決して諦めない血、愛するものを救うための血、保身のための血、決断のために流される血、そして涙のように流される血、、、。

もちろん完璧な映画ではない。最高の盛り上がりを見せた大決闘後に用意されるエンディングはあまりに味気ない。そしてモチーフとされる「狼」の唐突さ。などなど映画上の問題も多々ある。しかし(これは映画全般に言えることだけど)本作は決して減点法で見るべき作品ではない。もし物語に一瞬でも感情移入したのなら、後は一気に吸い込まれるだけだ。また香港映画の醍醐味としてのちょっとした台詞の伏線がアクションの最中に回収されていく流れは文句なしに素晴らしい。

『エクスペンダブルズ』のような爆破と筋肉で描かれるアクションとは全く違った、痛みが伴った絶品のアクション映画が本作『ドラゴン×マッハ!/SPL2 殺破狼II(原題)』だ。香港男泣き映画の系譜に新たに書き加えられた傑作。流される血には涙のように悲しみと痛みが含まれていた。

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ということで『SPL2』のレビューでした。鑑賞前は傑作『SPL』のタイトルを継承するのはハードルの自分上げみたいで心配したのですが、なんてことはない、前作を超えるような大傑作でした。確かに前作のドニー・イェンの魅力にはトニー・ジャーでも敵わないかもしれませんが、個人的には本作の方が興奮しました。120分あっという間で、大アクションの乱れ打ち状態です。映画の視点が複数あるためちょっと疲れもしますが、そんなのはちょっとした誤差です。素晴らしい。香港映画の底力とムエタイの飛び膝を見たければ本作です!ちょっと興奮しすぎて鼻血が出そうですが、おすすめです。もし本作がDVDスルーとかになったら、日本の全配給会社はまとめてトニー・ジャーの飛び膝蹴りの餌食となるでしょう。とにかくおすすめです。以上。

Summary
Review Date
Reviewed Item
ドラゴン×マッハ!/SPL2 殺破狼II(原題)
Author Rating
5

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1 個のコメント

  • 念願の日本公開初日に新宿で見てきました!

    ご紹介されている通り
    男泣き最高の映画でした!!

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