映画レビュー|『カリフォルニア・ダウン』-ロック様の正義は揺るがない

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筋肉王子ことドウェイン・ジョンソン主演のパニック・ディザスター映画『カリフォルニア・ダウン/San Andreas』のレビューです。ある日、突然アメリカ西海岸を襲った巨大地震。アメリカ本土を真っ二つに分断してしまうほどの大災害に見舞われる中、レスキューヘリのパイロットが職務を完全放棄し家族を救うために空を飛び、海を越え、瓦礫を飛び越えていく。一時は日本公開が決定していたものの、巨大津波のシーンが影響してか、日本公開がお蔵入りになった作品。

『カリフォルニア・ダウン/San Andreas』

全米公開2015年5月29日/日本公開2015年9月12日/アメリカ映画/114分

監督:ブラッド・ペイトン

脚本:アラン・ローブ、カールトン・キューズ、ケイリー・ヘイズ、チャド・ヘイズ、アンドレ・ファブリツィオ、ジェレミー・パスモア

出演:ドウェイン・ジョンソン、カーラ・グギーノ、アレクサンドラ・ダダリオ、ポール・ジアマッティ他

あらすじ(ネタバレなし)

レイ(ドウェイン・ジョンソン)はロス消防署のレスキューヘリのパイロット。離婚した妻との間に一人娘がいるも、前妻は裕福な建設関係のビジネスマンとの再婚を考えていた。まだ未練のあるレイは悶々としたまま、 旅行でサンフランシスコへ向かう娘を見送った。

一方その頃、カリフォルニアを中心に異常な微動を確認していた地震学者のチームは詳細を確認するためフーバーダムで調査を行っていた。その時、一帯を巨大地震が襲う。マグニチュード7の地震によってフーバーダムは崩壊し、都市の被害も甚大だった。しかしアメリカ西海岸を襲った大地震はそれで終わりではなく、あくまで序章でしかなく、さらなる巨大地震がアメリカを襲う。

愛する家族を救うため、レイはヘリコプターに単身乗り込み、瓦礫と化したサンフランシスコに向かうのだった。

レビュー

絆とか繋がりとかより、やっぱ家族っしょ:

ドウェイン・ジョンソン主演のパニック映画ということからもわかるように、この『カリフォルニア ・ダウン』は物語が緻密に練りこまれた作品ではない。特に地震と日常を背にし向かい合っている我々日本人から見れば、随分といい加減な描写が連続することになる。しかし本作は地震という災害下のなかの人々にスポットを当てた作品ではなく、あくまで特殊効果による地震被害の再現が主目的の映画である。だから人間ドラマに関しては目を瞑ってもらいたい。

その点はこの映画を鑑賞する前から分かっていたことで、僕も目を瞑ってみた。確かに目を瞑ってみたのだが、それでも瞼の薄明かりに執拗に浮かび上がってくる光景があった。それは消防員であり、貴重なレスキューヘリのパイロットでありながらも、その職務を完全に放棄し、公的設備であるはずの救出用ヘリを私物のように乗りこなし、一般市民の救出などには目もくれず、我が家族のためだけに邁進するロック様の姿だ。3.11を知る我々にとっては、「絆」や「繋がり」など屁とも思わないロック様の行動には当惑を隠しきれない。それでいいのか、ロック様。

と、目を瞑ろうにも漏れ見えてしまう異常なまでの家族主義の姿勢は我々日本人には強い違和感を覚えさせることになる。高層ビルの屋上に取り残された前妻を助けに単身ヘリで乗り込み、首尾よく彼女を救出すると、次は娘である。その付近の負傷者とか生存者とかはどうでもいい。娘なのだ。そしてサンフランシスコに向かう途中でヘリの調子が悪くなると貴重なヘリを乗り捨てである。その一台のヘリでどれだけの無名の負傷者が救われるのか、という問いは全く発せられない。もうここまでくると心地よい。

ここまでは批判のようで批判ですらない、純粋な驚きの表明である。そういった驚きは隅に置いておき本作の見どころを説明すると、ローランド・エメリッヒ風ディザスター映画としては特にビジュアル面で非常に良くできていた。序盤のフーバーダムをドローン(たぶん)で俯瞰する映像から一転して大地震に襲われるシークエンスは、間の取り方といい、大崩壊のダイナミズムといい、そして前景に置かれた人間ドラマといい、それぞれに切れ間がなく素晴らしかった(直下に動画あり)。フーバーダムはこれまで『トラスフォーマー』やクリストファー・リーブ版『スーパーマン』で印象深い場所となっているが、それらに代わるほど出来栄えだ。↓

他にも特殊効果の見どころは尽きず、ビルは倒壊するし、地面は割れるし、大津波は襲い来る。しかしそれらは地震発生後のイベントのため驚きは薄く、やはり一発目の地震でフーバーダムの大崩壊を見せたのが、本作の白眉と言える。これだけで大画面で観る価値はある。

またドウェイン・ジョンソンがアメコミのアンチヒーロー「シャザム」を演じることになっているのを想定してた、2005年の『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』でスーパーヒーローを演じたヨアン・グリフィズがゲス野郎役で出演しているのも面白い。本当に酷い奴なんです。

本作は一度は日本公開が決定しながらも、その後公開延期、やがては完全に公開スケジュールから外されることになった。おそらくは巨大津波のシーンを考慮してのことだと思うのだが、こういった配慮はいつまで続くのだろうか。配慮すべき対象はよその国の映画だけでなく、もっと他にあると思うのだが、、、。

本作を大画面で観てほしいというのが製作者の率直な願いだろうし、それは映画ファンも同様のことだろう。現実とフィクションの区別がつけられない世代とは、この手の問題で決定権を持つ立派な大人たちの方ではないのか、などと思ったりもするも、そこまで真面目に考えるような種類の映画でもないのだろう。

とにかく「絆?なにそれ」、「職責?家族が一番でしょ」、という何ともアメリカンな姿勢は一見の価値ありです。

追記:本作『カリフォルニア・ダウン』は2015年9月12日より日本公開が決定しました。

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ということで『カリフォルニア・ダウン』のレビューでした。はっきり言ってめちゃくちゃでした。きっと数十万人の犠牲者が出ているだろう大災害を描きながら、助けられた人の数の少なさ。もし仮に同じような題材で日本が映画を作ったら、まったく逆の話になっていたと思います。家族ではなく職責を全うする人々の姿を感動的に描くことでしょう。でもよく考えてみると、どちらが正しいという問題でもなく、ここに日米の埋まることない文化的差異を見たように気になりました。もしかすると大逆転で日本公開があるかもしれませんので、その時は是非劇場で鑑賞してみてください。以上。

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