【映画】『ラッシュ/プライドと友情』レビュー

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1976年のF1世界選手権でのジェームズ・ハントとニキ・ラウダとの壮絶な関係を、『アポロ13』や『ダ・ヴィンチ・コード』のロン・ハワード監督が映画化。天性の才能と破天荒な性格で人気だった英国人ドライバーのジェームズ・ハントを『マイティー・ソー』のクリス・へムズワースが、走るコンピュータとも言われ事故から奇跡の生還を果たすオーストリア人ドライバーのニキ・ラウダをダニエル・ブリュールが演じる。日本公開は2014年2月7日。

ストーリー

死と隣り合わせのだった時代のF1黄金時代を盛り上げた二人の対照的なドライバー。天性の才能を頼りに豪快なドライビングで人気だったジェームズ・ハントと、緻密な計算をもとにした正確なドライビングが特徴だったニキ・ラウダ。

1976年、シーズンの序盤に圧倒的な強さを見せたニキ・ラウダだったが、強行開催された雨のドイツGPでクラッシュ。復帰は絶望的なまでの全身火傷の重傷を負ったラウダ。そして雨のレースを強行した自分に事故の責任を感じるハント。それでも残りのレースでチャンピオンへと近づいていくハントだったが、事故から42日後、ラウダはサーキットに舞い戻る。

プライド、嫉妬、後悔、執念、そして不思議な友情が絡み合ったふたりの壮絶な闘いは、最終決戦、雨の富士スピードウェイで決せられる。

レビュー

ロン・ハワード監督の特色のひとつに、「特殊な環境下で剥き出しになった人間同士の共鳴」をドラマチックに描くことが挙げられる。「バックドラフト」では炎に包まれ、「アポロ13」では逃げ場のない宇宙空間で、「フロスト×ニクソン」では全財産を投げ打っての大物政治家とのインタビューで、一歩でも踏み誤れば人生が終わることになる瀬戸際に立った男たちの姿を美しく感動的に描ききる。そしてその瞬間に生まれる勝ち負けを超え、言葉を超えた人間同士の繫がりが、ロン・ハワード作品の見所だとも言える。

本作『ラッシュ/プライドと友情』はそういった視点で観れば、ロン・ハワードの集大成とも言える素晴らしい映画だった。物語は1976年のF1グランプリという史実。しかも熱心なF1ファンでなくとも、セナとプロストやシューマッハとハッキネンとのライバル関係を知っている者なら耳にしたことのある胸熱な物語。あまりに有名な結末だが、それを知っていようが知らなかろうが、この映画の主題がレースの勝ち負けを描くことにはないので大して重要ではない。Wikipediaでは決して説明することができない部分こそが見所であり、人々の心を打つものでもある。

また「フロスト×ニクソン」でもそうであったように、最初に共感し感情移入したはずの対象が、いつの間にすり替わっていく過程はほとんど職人技のようだった。ハント的な生き方に憧れるにせよ、ラウダ的な生き方に共感するにせよ、どちらかの側に立った瞬間にはすでに他方への愛着も感じている。対照的と思われていた二人の男は、実は深い部分では繋がっており、お互いが自分自身を投影し合うことで自分自身を確認していた。難しい表現では「弁証法的」な関係とでも言うのかもしれないが、映画ではその関係を言葉に頼ることなく見事に再現している。

特に印象的だったのが物語終盤で描かれるラウダの奇跡の復帰戦後のシーン。それまでは圧倒的な人気を誇っていたハントの前を人々は通り過ぎてラウダのもとに駆け寄る。それを見送るハント。車から引きずり出されみんなから担ぎ上げられるラウダを見るハントの視線に心打たれた。嫉妬や安心や賞賛といった本来は種類の違うはずの感情がすべてごちゃ混ぜになったような表情。このとき、これまで劇中で何度も交わされていた彼らの視線が、実は憎しみや嫉妬といった単純なものではなかったことに気がつく。きっと彼らは出会った時からお互いを認め合っていたのだ。

劇中では、ラウダとハントの仲は最悪だったように描かれているが、実はF3時代はルームメイトになるなど仲が良かったらしい。またF1時代にもレース後には酒を共に飲むなどしており、ニキ・ラウダが語るように実際には映画ほど二人の関係は緊張したものではなかったという。

▼事故後の二人▼

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ということで男泣き映画の傑作でした。また音楽担当のハンス・ジマーによる低音グルーブがたまりません。特にレースシーンは大スクリーンで見なければ魅力半減だと思うので、是非劇場へ足を運んでください。オススメです。

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