ニコラス・スパークス原作『きみがくれた物語』レビュー

恋愛小説の名手ニコラス・スパークスによる小説「きみと選ぶ道」を映画化した『きみがくれた物語』のレビューです。海沿いの町で偶然出会い、反発しあいながらも恋に落ちた男女の幸福と厳しい選択を描く恋愛映画。

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『きみがくれた物語』

全米公開2016年2月5日/日本公開2016年8月13日/ロマンス/111分

監督:ロス・カッツ

脚本:ブライアン・サイプ

出演:ベンジャミン・ウォーカー、テリーサ・パーマー、アレクサンドラ・ダダリオ、トム・ウェリング

レビュー

「恋愛小説の名手」という詐欺師みたいな肩書きがよく似合うニコラス・スパークスの小説の多くは映画化とセットになっている。1999年の『メッセージ・イン・ア・ボトル』を皮切りに、『きみに読む物語』『親愛なるきみへ』がヒット作となり、2012年にニコラス・スパークスはワーナー・ブラザーズと共同で自作の小説を映像化するためのプロダクションを設立した。

しかし近年はその人気にも陰りが見えはじめ2014年の『かけがえのない人』では酷評の嵐に晒され、興行的にも失敗することになり、そして遂に本作『きみがくれた物語』ではニコラス・スパークス原作映画としては最低の売り上げを叩き出し、自分の映像プロダクションも閉鎖されることになった。

ただしこういった前情報はあくまで作品の質とは無関係の与太話。大切なのは中身なのだ。

物語は舞台はノースカロライナの海沿いの町。主人公トラヴィス(ベンジャミン・ウォーカー)は父親ととも獣医として働き、週末には友人らとヨットで海に出かける青年。海沿いの一軒家に愛犬とともに暮らし、モニカ(アレクサンドラ・ダダリオ)という美女と「ブーメラン」のように引っ付いたり離れたりを繰り返している。

トラヴィスが住む家のとなりに引っ越してきたのがギャビー(テリーサ・パーマー)。医学生として病院で働いている。そして彼女も犬を飼っており、知らぬ間に隣家のトラヴィスが飼う犬とデキてしまっていた。飼い主の了解も得ずに勝手に孕ませたのだ。(獣医なのだから去勢とかしておいたほうがいいと思った)

こうしてトラヴィスとギャビーは最悪の出会いを果たすも、獣医のトラヴィスに愛犬を診てもらうことで二人の距離は急接近。激しく惹かれあった二人は結婚することになる。

子供に恵まれ幸福の絶頂にいた二人だったは、ひとつの行き違いが取り返しのつかない出来事を招くことになる。そしてトラヴィスは重大な選択を迫られることになる。

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(C)2016, Choice Films, LLC All Rights Reserved.

何も言わなくても全てを理解してくれる仲間。自分以上に自分の本心を的確に理解し、向かうべき方向について過不足なく指摘してくれる家族。別れても未練を持ってくれる物分かりのいい元カノ(しかもアレクサンドラ・ダダリオ!)。そして従順な犬。

こういったファンタジーとしての恋愛の要素は「ニコラス・スパークス映画」の魅力だということで百歩譲って目を瞑ろう。

それでも本作には問題がある。というか最終的には問題しか残らない。

物語は主人公トラヴィスが花を手に病院を訪れることからはじまる。彼にとって大切な人が入院しているようだ。すでに顔見知りとなった医者から「あまり自分を責めるなよ」と言われる。どうやらその誰かが入院しているきっかけにトラヴィスは関わっているようだ。

そこから物語はググーと時計の針を巻き戻す。

そしてトラヴィスと医学生ギャビーとの馴れ初めが描かれる。物語の75%くらいが、トラヴィスとギャビーが擦った揉んだの末に結婚するという甘〜いお話で、終盤からトーンは一転して辛く厳しい選択が描かれる。

こういった構成そのものは悪いとは思わないし、恋愛映画としては許容範囲の「強引さ」に留まっている。

しかし問題はラストだ。予告編にも登場するのでネタバレでもないと思うが、幸せな結婚生活を営んでいたトラヴィスとギャビーだが、ある嵐の夜、交通事故でギャビーは植物人間となってしまう。自分で呼吸することさえできず、過去に彼女は延命治療を拒否するという書類にサインしていたことから、夫であるトラヴィスは厳しい選択を迫られることになる。

本作の原題は『The Choice/選択』であり、愛する女性の存在に関する辛い選択こそが主題なのだが、その部分でのラストの驚きの展開を目の当たりにした時は「フザケンナ」と思わず声が出そうになった。一体何が起きたのかは映画を見てもらうとして、生命の尊さが選択の難しさと直結していながら、結局はその選択の結論を奇跡に委ねるというエセ宗教の説法のようなオチになっている。

物語の舞台となるノースカロライナは10年に1度の割合で巨大ハリケーンの襲来を受ける地域で、その事実が物語の奇跡の要因のひとつになっているのだが、ニコラス・スパークスはアホなのか。別に奇跡を描くことに文句を言いたいのではなく、奇跡とはその想いの強さによって起きるとでも言いたいような物語の展開と構成がふざけているとしか思えない。それって愛の深さとか信頼とか、全然関係ないでしょう。このふざけたオチのせいで、それまで描かれていたトラヴィスとギャビーの運命的な恋愛模様が一気に色あせていく。もう恋愛映画というより「奇跡のために祈りましょう」という宗教映画のようにしか思えない。

原題にある『The Choice/選択』という本作のテーマは主人公の苦悩の選択ではなく、奇跡を司る神様のきまぐれとしての選択という意味だったとラストで気がつく。そんなクソみたいな選択を甘〜い恋愛模様でコーティングするとか卑怯この上ない。そんなもんは教会でやってろ。

あと本筋とは全然関係ないが、誕生日にせっかく用意した豪華なチョコレートケーキを顔にぶつけてキャッキャとはしゃぐシーンがあるのだが、止めたほうがいい。服につくと洗濯してもとれないのだ。

『きみがくれた物語』:

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きみがくれた物語
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