映画『フィフス・ウェイブ』レビュー(ネタバレあり)

リック・ヤンシー原作のヤングアダルト小説の映画化作品『フィフス・ウェイブ』のレビューです。クロエ・グレース・モレッツが孤独なヒロインを演じたSF大作。突如現れた異星人の攻撃によって世界が壊滅状態へと追いやられる中、主人公キャシーは離れ離れになった弟を探す旅に出るのだが、、、。

The 5th wave trailer and movie poster

『フィフス・ウェイブ/The 5th Wave』

全米公開2016年1月22日/日本公開2016年4月23日/SF/112分

監督:J・ブレイクソン

脚本:アキヴァ・ゴールズマン、スザンナ・グラント、ジェフ・ピンクナー

出演:クロエ・グレース・モレッツ、ニック・ロビンソン、ロン・リビングストン、マギー・シフ、リーヴ・シュレイバー


レビュー

これは自戒も含んだ言葉なのだが、アニメやヤングアダルト系作品を論評する時、大人側からのエクスキューズとして「子ども向け作品としては」とか「少年少女としてのリアリティ」といった言葉を冒頭に持ってくることでお茶を濁すことをある種の物わかりの良さと勘違いしてしまうことがある。大人になった自分には分からないけど自分が子どもだったとすれば評価していたのかもしれないという到底ありえない仮定を持ち出すことで、作品を支える「若さ」を無条件に肯定しようとしてしまうのだ。子どもの頃に好きだった対象が当時の大人たちに散々コケにされた経験を持つ大人たちには、案外こういった傾向があるのではないかと思ったりする。

しかしこういった個人的な感傷で生み出された「若さ」への擁護というのは、実際のところ、ただ自分だけは下の世代から悪く思われたくないという打算的な態度の表れであって、よく考えてみれば自分が子どもの頃に一番嫌っていたタイプの大人の形態であることに気づかされる。

そしてクロエ・グレース・モレッツが主演し、ヤングアダルト小説のベストセラーを映画化した『フィフス・ウェイブ』とは、物わかりの良さを気取った大人たちが「若さ」の守護者を気取りつつ、これが「ヤングアダルトのリアリティ」なのだという勝手な解釈と自己納得だけで作った、何とも軽薄な作品だった。

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ある日突然現れた地球外生命体「アザーズ」は電磁波攻撃、地殻変動、疫病、寄生という攻撃段階を設けることで人類を効果的に根絶やしにしようとしていた。そして人類の大半がすでに死んでしまっているなか、母親を疫病に、そして父親を寄生によって殺されてしまった主人公キャシー(クロエ・グレース・モレッツ)は、逃亡の途中で離れ離れになってしまった弟と再会するために、子どもたちが匿われている軍の施設へと 向かう。

途中、何者からか銃撃され足を負傷したキャシーだが、不思議な青年イヴァンの助けを借りながら目的地へ向かおうとするも、異星人「アザーズ」たちは第五波<フィフス・ウェイブ>となる恐ろしい計画を実行に移そうとしていた。

こうしてあらすじとしてまとめれば、SF映画としての体をなしているようにも思えるが、実際は物語の半分を過ぎたあたりから苦笑いが漏れ出し、早い段階で抱いた「まさかこういうオチではないよな、、、」という嫌な予感がことごとく的中する後半のデタラメぶりに、気がつくとエンディングを迎えようとしている近年稀に見る不思議な映画体験が待っていた。

<ここから『フィフス・ウェイブ』のネタバレとなります>

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「アザーズ」による電磁波攻撃によって世界中のエネルギーがシャットダウンしたなか、避難したキャシーたちの前に装甲車に乗った米軍兵士たちが現れる。そして子供と大人を隔離し、子供たちだけを軍の施設に送り、すったもんだあった末に大人たちは全員殺される。そして生き残ったキャシーは、基地に連れて行かれた弟と再会するために旅に出るのだが、その途中に不思議な青年イヴァンに出会う。

すでにこの時点から米軍兵士たちの怪しさが際立っている。世界中の車が動かなくなっているという設定を強調しておきながら、米軍だけは電気もエネルギーを使えるという状況など怪しさしかない。そしてその怪しさは寸分の狂いなく的中する。そう、連中こそが「アザーズ」なのだ。この分かりやすさ、アホなのか。

一方で基地に送られた子供たちは、人間に紛れた「アザーズ」を退治する兵士として訓練を受けさせられる。色々訳あって子供を兵士とした方が「アザーズ」に対抗するのには都合がいいということらしいが、子供が兵士として戦いを余儀なくされるという設定も『エンダーのゲーム』(映画版はアレでしたが、、)に描かれたような切実さがまったくない。

そしてキャシーを助ける謎の青年イヴァンの正体が、クロエたんに一目惚れした◯◯◯◯だったという展開には思わず顔を覆いたくなった。あっという間に地球を制圧するような高度に進化した知的生命体も、太ももを露わにしたクロエたんを前にすれば「We Are The World」、実はヒットガールの虜になったオタク連中と大差ありませんでしたとか、どんな呑気な宇宙世界なんだよ。ヒドすぎるぞ。どうせ侵略するならもっと真面目にしろよ。

この映画が「子供向け」や「ヤングアダルト向け」という防護壁を簡単にぶち破り地平の彼方へと消えていってしまうのは、そもそものきっかけとなった地球外生命体「アザーズ」のマヌケっぷりにある。『宇宙戦争』の宇宙人は不注意であるにしてもマヌケではなかった。でも本作の「アザーズ」はアホすぎる。昨日今日ちょっと護身術を学んだ程度のクロエたんにボコボコにされるは、未成年の子供たちにあっさり正体を見破られるは、そのことに気がつくのが遅いとか、もうとにかくデタラメなんです。

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そして内容なんてどうでもよくなった頃に、そういえば昔「お母さん(Mother/マザー)のMを取ったら他人(Other/アザー)です」というコマーシャルがあったけど「Other(アザー)」には「他人」という意味はなくあくまで「Others(アザーズ)」だよなと思い出していると、突然スクリーンでド派手な大爆発が発生し「アザーズ」から逃れてきたクロエたんや他の少年少女たちが、何やら反撃の機会を伺う素振りを見せながらエンドクレジットに突入するのを見て、この映画を作った連中は続編を作る気でいることを知るのだった。後で知ったのだが本作は3部作計画の第1作ということらしい。つまり連中はあと2本作る気だという。

とにかくこれほど罵詈雑言がすらすらと出てくる映画も珍しい。というのも作品の粗を隠そうとする試みさえも見当たらないほどに馬鹿正直なのだ。「こういう安易なオチではないよな」と思ったことが的中し、「これはどういうことだろうか?」という疑問への答えがあまりにも突拍子がないため、物語の本筋に集中することができない。そういった構造上の致命傷は「ヤングアダルト小説の映画化」というエクスキューズで癒されることは絶対ないし、先行する『ハンガーゲーム』や『メイズ・ランナー』といったシリーズの完成度と比べても明らかにお粗末だ。

クロエ・グレース・モレッツが地球に残された孤独なヒロインを演じるアイドル映画としての側面が本作のほとんど唯一の救いだとも言える。

もしかするとこんな程度の低い映画を作ってしまった製作陣が自戒を込めてメタ的に本作の間抜けすぎる宇宙人を自らに重ねたのだろうかと邪推したくなるほどに馬鹿らしい一作。そして地雷映画好きの人には大声でおすすめできる作品です。

『フィフス・ウェイブ』:

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