ライアン・レイノルズ主演『セルフレス 覚醒した記憶』レビュー

『デッドプール』のライアン・レイノルズ主演によるSFアクション『セルフレス 覚醒した記憶』のレビューです。余命わずかな大富豪が謎の組織から新しい肉体への転移を持ちかけられるも、その背後には恐ろしい真実が隠されていた。共演はベン・キングズレー、マシュー・グード。

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『セルフレス 覚醒した記憶』

全米公開2015年7月10日/日本公開2016年9月1日/SFアクション/117分

監督:ターセム・シン

脚本:デヴィッド・パストール、アレックス・パストール

出演:ライアン・レイノルズ、ベン・キングズレー、マシュー・グード、ナタリー・マルティネス

レビュー

『デッドプール』で確変を起こしたライアン・レイノルズが主演するSFスリラー・アクション『セルフレス 覚醒した記憶』は、『インモータルズ 神々の戦い』のターセム・シン監督作ということで色々と無茶をする作品だろうということは察しがつくのだが、そんな予想を軽々と飛び越えていくほどにメチャクチャな展開に思わず唖然とするような作品だった。

ベン・キングズレー演じる大富豪の老人は余命半年となったことで、謎の組織にもちかけられた最新医療にかけることにする。それは遺伝子操作で生み出した肉体に意識だけを転送することで新しい肉体を得るというものだった。こうして莫大な料金と引き換えに、ライアン・レイノルズの体を手にいれたベン・キングズレーはこの世の春を謳歌するのだが、徐々に自分ではない記憶が現れ苦しめられることに。やがて恐ろしい真実に気がついた中身がベン・キングズレーのライアン・レイノルズは、謎の秘密組織に戦いを挑むのだった。

ということでクラシックSF映画に関心を持つ方なら、まんま『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』じゃないか、とツッコミたくなるだろう。というか話の前半はそのまんまである。ストーリーだけでなく記憶が混濁するシークエンスもほとんどそのまま転用(オマージュ?)している。それでも本作はジョン・フランケンハイマー監督によるSFスリラーの傑作『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』とは無関係ということになっているらしい。それもそのはずで『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』は、赤狩りによるアイデンティティの「転向」を比喩した社会派映画である一方で、本作にはそんな難しさは一欠片もない。

本作は言うなれば『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』の設定だけをパクりつつ、そこを土台に『ボーン・アイデンティティ』をやり直したような作品だった。

目が覚めれば自分はなぜか超強かった。その理由探しが物語の本筋となる。

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(C)2015 Focus Features LLC, and Shedding Distribution, LLC.

プロットは全然整理されていないし、演出もひどいし、何より本作のエンディングに絡むストーリーには重大な欠点があるように思われる。それでも本作のメチャクチャさを受け入れてしまってからは、そこそこに楽しめたことも事実だった。

とにかくストーリーの展開が早い。特に中盤から後半にかけては、盆と誕生日とクリスマスと正月が一緒に来たように次々ととんでもない事実が明るみなり、ハチャメチャの波状攻撃の連続で観客に「おいおい、おかしいだろ、それは」と半畳を入れる暇を与えることはない。いい意味でも大衆バカ映画に徹しており、ライアン・レイノルズもマット ・デイモンの二番煎じとしてはよく頑張っている。

しかしそれでも物語上の致命的な問題には触れないわけにはいかない。

※ここからネタバレあり※

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遺伝子操作で生み出されたとされる肉体とは、実は死んだとされていた妻子ある特殊部隊の軍人の体だった。おかげでその体に転移した主人公ダミアンは自分の意識以外にも、その体の持ち主だった軍人の記憶にも侵食されるようになる。そしてダミアンは組織からは特殊な薬を渡されており、それを飲むことをやめてしまうと、やがては自分の意識は消えてしまい、元の軍人の意識に戻ってしまうという。それでも元軍人の体に染み込んだ戦闘能力だけは意識が誰であろうとも関係ない。

このプロットはちょっと酷くないか。それじゃあ、そもそも一度死んだ人間が蘇ることが可能だということになってしまう。死んだ軍人が一度は誰かの意識に取って代わられても、そいつが薬を飲むのをやめれば元の記憶が戻り、復活できてしまう。

意識の転送という技術を開発した天才科学者はマッドサイエンティストという設定だが、転送云々よりもその副作用のほうが実がすごい発明という落とし穴に誰も気がつかないオッチョコぶりは酷すぎる。リアル・デッドプール誕生の瞬間なのに、なぜ誰もスルーなのか。

真面目に突っ込むのアホらしいということなのかもしれないが、もうちょっと脚本に知性を投入してほしかった。ライアン・レイノルズのアクションには安定感があるし、後半に連続するスリラー展開も全然わるくないのだが、着地点がちょっと酷すぎる。

『ボーン』シリーズの亜流としてはよく頑張った方なのかもしれないが、傑作SFスリラー映画を暗黙のベースにしながら、最後は力技だけでまとめようとした痕跡がありありと残ってしまっている。これはライアン・レイノルズ主演作に往々に感じることなのだが、もう一つ乗り切れない歯痒さが本作にもあった。

『セルフレス 覚醒した記憶』:

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セルフレス 覚醒した記憶
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3
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