トム・ハーディ主演『レジェンド 狂気の美学』レビュー

1960年代のロンドンで暗躍した実在の双子のギャングを描いた『レジェンド 狂気の美学』のレビューです。悪名高い犯罪者レジー&ロニー・クレイ兄弟をトム・ハーディが一人二役で演じる実録サスペンス。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のエミリー・ブラウニング、『キングスマン』のタロン・エガートンなどの共演陣にも注目。

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『レジェンド 狂気の美学/Legend』

全米公開2015年9月9日/日本公開2016年6月18日/サスペンス/131分

監督:ブライアン・ヘルゲランド

脚本:ブライアン・ヘルゲランド

出演:トム・ハーディ、クリストファー・エクルストン、デヴィッド・シューリス、タロン・エガートンほか

作品解説

1960年代のロンドン裏社会で暗躍した実在の双子のマフィア、レジー &ロニー・クレイ兄弟を『マッドマックス/怒りのデス・ロード』のトム・ハーディが一人二役で演じたクライム・ドラマ。

論理的な側面もあるレジーと、バイ・セクシャルなロニーの兄弟はお互いに共通する暴力への飢えを持て余しながらスコットランドヤードと対立していく姿を、『L.A.コンフィデンシャル』や『ミスティック・リバー』の脚本を務めた経験もあるブライアン・ヘルゲランドが映画化。

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のエミリー・ブラウニング、『キングスマン』のタロン・エガートン、ポール・ベタニーと豪華な共演陣にも注目。


レビュー

1960年代のロンドン裏社会で暗躍した著名ギャングのクレイ兄弟をトム・ハーディが一人二役で演じるとなればつまらない訳がない。しかも監督・脚本を務めるのは『L.A.コンフィデンシャル』の脚本家で、黒人初のメジャーリーガーを描いた『42 〜世界を変えた男〜 』ではメガホンをとったブライアン・ヘルゲランド。加えて共演陣も魅力的な俳優が顔を揃えている。

本作は双子のギャング、レジーとロニーの関係性を中心に、彼らが暴力で駆け抜けた1960年代を描いている。

社交性もあり論理的な側面も備えるレジーは、運転手の妹のフランシスに恋をして結婚する。一方でロニーは同性愛者であり、タロン・エガートン演じるイカれた愛人と関係を持っている。性格の違うふたりだが、「血よりも強い」繋がりで結ばれている。

しかし普段はビジネスを動かしていたレジーが刑務所に送られたことで、感情的になりやすいロニーがナイトクラブの運営に関わった結果、店は閑古鳥が鳴くようになる。刑務所から帰ったレジーはその光景に激怒し、ロニーと初めて殴り合いの喧嘩をする。

それでも二人はすぐに仲直りしナイトクラブにビジネスを立て直すも、レジーは妻のフランシスに暴力を振るってしまい、彼女に逃げられてしまう。

これがきっかけとなりレジーもおかしくなり、やがて彼らの暴力に歯止めが利かなくなる。

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クレイ兄弟がイギリスで有名な存在になった背景には、大きく二つの出来事が関係している。

ひとつは彼らが経営していたナイトクラブだ。フランク・シナトラやジュディ・ガーランドといった著名歌手を招き、政治家も多く通ったという。そのクラブの顔としてふたりは、ギャングでありながらも、セレブとしてテレビでも取り上げられるような存在となっていった。

そしてもうひとつはロニーと著名政治家との性的関係疑惑だ。同性愛が今よりも強い差別の対象となっていた1960年代に、著名な保守政治家と著名なギャングが性的な関係を持っていたとなれば大騒動になることは想像に易い。

これだけでもクレイ兄弟のぶっ飛び具合はよく伝わるのだが、本作では彼らが関わった特定の事件にフォーカスするのではなく、クレイ兄弟の関係を中心に、その栄華と没落、そしてそれぞれの個性をじっくりと描き出すような作品となっていた。

またクレイ兄弟のクレイジーぶりとは違った形でこの映画の作りは奇妙なことになっている。物語はレジーの妻だったフランシスのナレーションによって、出来事の補足や説明が行われるのだが、そのフランシスが物語の途中から突然いなくなってしまう。そして彼女の退場を持ってして、物語のトーンは一気に血生臭くなっていく。

トム・ハーディの怪演は見応え十分だった。性格の違いを演じ分けつつも、どちらも結局は「イカれている」という部分でのDNAレベルでの共通性をうまく演じきっていた。特に自分が「イカれている」ことに自覚的で精神病の疑いさえあるロニーと、自分はロニーと違って「イカれている」わけではないと信じつつも、結局は同じ出口で再会してばかりの双子の関係性は興味深い。「イカれた」ロニーの蛮行を理解できないレジーが母親から「兄弟でしょ」と説得されてその怒りを収めるシーンは特に印象的だった。ロニーもレジーもそしてその母親も根本は一緒なのだ。

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それでも一本の映画としては冗長に感じられることも多かった。特にレジーと妻フランシスの関係があまりにも薄いのが致命傷になっている。物語上の一番大きな転機となるのが、レジーとフランシスの関係の変化なのに、その部分の唐突ぶりは作品のテンションを著しく損ねている。そのため物語の語り手としてのフランシスも、ひとりの登場人物としてのフランシスも、どちらも血が通っておらず作り物のような印象が消えない。中盤に盛り込まれるいくつかのエピソードを描くくらいなら、レジーとロニーの間にフランシスを挟んだエピソードを盛り込むべきだった。

この欠陥部分はラストに最も大きな影響を与えることになる。もしフランシスの存在感がもっとうまく演出されていたなら、本作は全然違う良質な映画となる可能性を十分に秘めていた。マフィアの男に惚れた普通の女。彼女の変化や戸惑い、そして拒絶感が全然描きこまれていない。彼女こそがレジーの鏡となるべきで、そうすればロニーとの関係も自然発生するはずだった。確かにトム・ハーディの演技は光っている。他にもタロン・エガートンのイカれっぷりも見所といえる。でも全体として軽いのだ。

物語を重く暗転させる役割を担うはずのフランシスの描き方が「軽い」ことが残念だった。

『レジェンド 狂気の美学』:

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Summary
Review Date
Reviewed Item
レジェンド 狂気の美学
Author Rating
3
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