映画『ジェイソン・ボーン』レビュー(ネタバレページあり)

マット・デイモンが記憶を失った最強の暗殺者を演じる「ボーン」シリーズ最新作『ジェイソン・ボーン』のレビューです。ポール・グリーングラス監督とマット・デイモンのコンビが9年ぶりに復活。新たなる闇の計画「アイアンハンド」とは? ジェイソン・ボーンの孤独な自分探しの戦いが再びはじまる!

Jason bourne movie clips damon vikander

『ジェイソン・ボーン』

全米公開2016年7月29日/日本公開2016年10月7日/アクション/123分

監督:ポール・グリーングラス

脚本:ポール・グリーングラス、クリストファー・ラウズ

出演:マット・デイモン、アリシア・ヴィキャンデル、トミー・リー・ジョーンズ、ヴァンサン・カッセル、ジュリア・スタイルズ

レビュー

アクション映画の地平を開拓したマット・デイモン主演の「ボーン」シリーズが9年ぶりに復活。過去シリーズ同様にポール・グリーングラスがメガホンをとり、編集担当で本作では脚本でもクレジットされているクリストファー・ラウズも含めた期待の布陣で挑む、ジェイソン・ボーンの復活劇。

前作『ボーン・アルティメイタム』から数年後、世界情勢が混沌の色を濃くし、その陰に隠れるようにしてジェイソン・ボーンは表の世界から消えていた。一方、ジェイソン・ボーンに同調していた元CIA局員のニッキー・パーソンズはハッカーグループに加わり、CIAが保持している秘密文書をハッキング。そこには未だジェイソン・ボーン本人も知らない秘密が含まれていた。

前作で過去の記憶を手に入れたジェイソン・ボーンだったが、彼の記憶だけが真実ではなく、その裏にはもっと大きな陰謀が潜んでいることが判明。やがてジェイソン・ボーン誕生の秘密は、現在進行形で進む謎の「アイアンハンド」計画にも繋がっていくことになる。

前3部作で自分探しの旅に決着をつけたジェイソン・ボーンが、なぜ再び戦わざるを得なくなるのか? 本作のキーはその一点に集約される。大ヒットシリーズを半ば強引に復活させる以上、興行目的とは別の必然性が物語内に含まれているのか。

「ボーン」シリーズの魅力とは、ジェイソン・ボーンの自分探しというサスペンスと、高密度のアクションが両輪となることで演出されるノンストップ感だった。目まぐるしいカット割りと閉鎖空間で繰り広げられる肉弾戦というアクション映画としての革命的な魅力に加えて、「ジェイソン・ボーンとは何者なのか」という問題解決を観客が本人と同じレベルで追体験することで、物語は加熱し、シリーズを追うごとに注目度が増していった。

そして「ジェイソン・ボーンとは何者なのか」という疑問には決着がついた今、それに代わるサスペンスを見つめられたのだろうか?

640

(C)Universal Pictures

結論から言えば、そんなものはどこにもなかった。

ジェイソン・ボーンという寡黙なキャラクターは継続され、並列して解かれていく秘密の暴露によって「ジェイソン・ボーンとは?」という疑問に答えていくというスタイルは過去シリーズと同じながらも、本作で新しく提示されるサスペンスそのものが2時間ほどの上映時間を支えるだけの強度を持ち得ていない。

本作から登場するトミー・リー・ジョーンズ演じるCIA長官デューイと、アリシア・ヴィキャンデル演じる若きCIA局員リーのいずれも「ジェイソン・ボーンとは?」という問いに答える立場でありながら、過去シリーズに登場していた同様のキャラクターと同じ役目しか負っておらず、どこにも新しさが見いだせない。過去シリーズでジェイソン・ボーンに復讐された老人たちや、過去シリーズでそんな老人たちのやり方に疑問を覚えジェイソン・ボーンに同情していく女性たちを再び登場させただけに過ぎない。

仮に前作の『ボーン・アルティメイタム』を存在しないものとして、本作の脚本の固有名詞を適当にいじっただけでも本作が「ボーン」シリーズ最終作として成立しそうなほどにオリジナリティが欠如している。9年ぶりに復活させる以上、どうしても必要だったはずのその必然性は、「プライバシー対パブリック・セキュリティ」という旬を過ぎた安全保障議論にすり替えられただけで、観客がジェイソン・ボーンと同じ立場で追い詰められるようなサスペンスは皆無。おかげで緊張感はブツ切れとなり、意味もなく派手なだけの破壊的アクション映画というジャンルに収まってしまうことになった。

ジェイソン・ボーン誕生に関与していたことが明らかになった彼の父親をめぐる真相がサスペンスの中心となっているのだが、その事実に関して百歩譲ってジェイソン・ボーン本人には知り得ないことだとしても、大方の観客には予想がついてしまうほどに凡庸な真実に過ぎない。おかげで映画のラストに用意されているラスべガスを舞台とする大アクションシーンも、その対価かと思えば説得力が一気になくなってしまう。そんな大騒ぎするほどのものなのか、と。

サスペンスが全く機能しないなかでアクションも足を引っ張られてしまう格好になった。本作の撮影監督はケン・ローチ作品の常連で『ハート・ロッカー』『キャプテン・フィリップス』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のバリー・アイクロイドが務めているが、そのフィルモグラフィーからも分かるように、登場人物の切迫感を中心に外部風景を作り上げることを得意とするため、そもそも中身のないジェイソン・ボーンのアクションもまた薄味に止まってしまう。

前半のギリシアでのアクションではジェイソン・ボーン本人がまだ知らない真相への欲求とリンクしてシリーズの醍醐味を感じさせるシークエンスに仕上がっていたが、後半のラスベガスのアクションではジェイソン・ボーンの意思とリンクすることなくただの殺し合いに終始している。これならジェイソン・ステイサムなら3分で片がつきそうなものだし、チャック・ノリスなら蹴り一発だ。

キャラクターの設定も既視感だらけで、クライマックスの位置関係にも疑問を感じた。ラストシーンでアリシア・ヴィキャンデルが見せる一瞬の表情のおかげでチケット代を無駄にすることもなかったが、9年ぶりの復活劇は期待に答える出来には程遠い不完全燃焼のものとなった。

『ジェイソン・ボーン』:

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Summary
Review Date
Reviewed Item
ジェイソン・ボーン
Author Rating
2

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