映画『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』レビュー

ヒマラヤ8000メートル級14峰の登頂に成功した実在の登山家オム・ホンギルが挑んだ、山で死んだ仲間の遺体回収という記録に残らない過酷な遠征を描く実録山岳ドラマ『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』のレビューです。主演は『ベテラン』のファン・ジョンミン。

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『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』

日本公開2016年7月30日/ドラマ/124分

監督:イ・ソクフン

脚本:スオ、ミン・ジウン

出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウ、チョ・ソンハ、キム・イングォン、チョン・ユミ

 

レビュー

映画にも国籍があって、その国の特徴が作品に反映されるのは当たり前のこと。インド映画は相変わらず踊り狂うし、ハリウッドはビルを爆破しないわけにはいかない。そして邦画と言えば「お客様は神様です」という言葉を取り違えた結果、説明至上主義がまかり通るようになった。もちろんこれは玉石混淆のなかでも「玉」の作品には当てはまらない、「石」の作品の特徴であり、つまりはダメな邦画の悪癖と言える。

そして近年、特にエンターテイメント映画の分野において日本の二三歩前を行く韓国映画にも『息もできない』『アジョシ』『サニー 永遠の仲間たち』『悲しき獣』といった文句無しの「玉」作品がある一方で、韓国映画独特の悪癖の陥ってしまう作品もある。

邦画の悪癖がありがた迷惑な説明過多にあるとすれば、韓国映画の悪癖とはドラマに走りすぎることだろう。感動を押し付けようとするあまり、ソープオペラ顔負けの強引な展開が悪目立ちする。しかもそれに「実話を基にした作品」という枕詞がつけばなおのこと、実話だからこそのリアリティが、大げさなドラマに押しつぶされて一気に嘘っぽくなってしまう。

『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』は実録山岳ドラマだ。

ヒマラヤ8000m峰14座を極めた実在の登山家オム・ホンギル氏の半自伝的な作品で、彼の後輩でエベレスト下山中に遭難死したムテクの遺体を回収するという、記録には残らない過酷な遠征の経緯と裏側を描いている。過酷な登山を通して育まれた信頼と愛情の念を貫くひとりの登山家の姿を「感動的」に伝えることが目的の作品だった。

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本作が韓国で大ヒットしているとのことで期待して観たのだが、散々な内容だった。例えば邦画実写で歴代最高記録を持つ『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』と同じような現象なのだろうと思う。

とにかくワザとらしいの一言に尽きる。実話をベースにしておきながら、ドラマ性を最優先し、実際にそこで発生したであろう事態の再現を最初から拒んでいる。

これは山岳映画の難しいところで、リアリティを優先した『エベレスト 3D』の登山シーンでは俳優たちが酸素マスクをつけ息も絶え絶えになるという「実話」にこだわった結果、誰が誰だか分からなくなるという映画としての欠点が生まれてしまった。過酷さは伝わってくるが、それだけを伝える目的ならドキュメンタリーで十分だ。映画である以上、リアリティと虚構のバランスは必要で、『エベレスト 3D』はその点を考慮した結果、登山者たちの群像性を強調することになった。

一方本作は最初からリアリティを無視している。俳優たちの顔が見えるように、登山中には誰も酸素ボンベを使用しない。無酸素登頂にこだわるハードコアクライマーの集まりなのかと思えば、記録に残らない遺体回収遠征ですら誰も酸素ボンベを付けない。そして標高8000mを超えるデスゾーンでも吹雪に負けじとみんな大声で叫びまくる。全部デタラメだ。

もちろん映画なのだからデタラメでいい。正しくはデタラメでも面白ければいい。でもそのデタラメが観客を「感動させる」ための道具でしかない場合は、百歩譲って感動できたとしても、そんなものはハリボテの感動だ。「感動した」のではなく「感動させられた」だけで、号泣させることが目的の難病映画と同じく、浅ましくて観ていられない。

『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』を鑑賞している途中から、真珠湾攻撃をマイケル・ベイが描いた『パール・ハーバー』を思い出していた。あの映画もデタラメだった。史実を無視していたことがデタラメなのではなく、激烈を極めたはずの真珠湾攻撃をメロドラマ風味に味付けして、あたかも感動的出来事のように仕上げたことがデタラメだった。

『パール・ハーバー』のデタラメぶりと比べれば『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』は仲間との絆や約束の尊さを謳っている分ましなことも確かだが、例え映画の冒頭で「実話ベース」という事実を強調されたとしても、細部のリアリティを最初から放棄してしまっている以上、その全てが「感動」のために都合よく塗り替えられた物語という印象しか残らない。

それでも『エヴェレスト 神々の山嶺』よりは登山シーンも迫力があり物語も破綻していないという意味ではマシですが、、、

『ヒマラヤ 地上8000メートルの絆』:

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