映画『ドント・ブリーズ』レビュー(ネタバレページあり)

Dont Breathe Horror Movie Spoilers

低予算ながら全米で大ヒットを記録したホラー映画『ドント・ブリーズ』のレビューです。軽犯罪を繰り返す若者グループは「簡単な獲物」として盲目の老人への強盗を企てるが、、、、。わずかな音も聞き逃さないその老人は「簡単な獲物」なのではなく、「狂気の狩人」だった!!

『ドント・ブリーズ/Don’t Breathe』

全米公開2016年8月26日/日本公開2016年12月16日/ホラー/88分

監督:フェデ・アルバレス

脚本:フェデ・アルバレス、ロド・サヤギス

出演:ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネット、スティーヴン・ラング

レビュー

日本語で「ミイラ取りがミイラになる」という表現があり、この言葉がどの国の諺を訳したものなのか浅学のため知らないが、英語では同じように意味として「The biter is bitten」と表現する。直訳すれば「噛みつき野郎が噛みつかれる」となり、こちらの目的が逆に相手の目的に飲み込まれることを指す。

そして低予算ながら全世界で大ヒットを記録する『ドント・ブリーズ』もまさに「ミイラ取りがミイラになる」そして「噛みつき野郎が逆に噛みつかれる」系映画の傑作だった。

舞台はデトロイト。自動車産業の衰退に伴い荒廃していくこの町は『イット・フォローズ』でもそうだったが近年のホラー映画の舞台としてよく登場する。デトロイトに暮らすロッキーとマニー、そしてアレックスの3人は「現金には手は出さない」というルールのもとで空き巣を繰り返している。アレックスの父がデトロイトのセキュリティ会社に勤めているため、こっそりと防犯装置の解除をしているのだ。

しかしそんな悪事をいつまでも続けているわけにはいかなかった。ある日マニーが仕入れた情報として、娘が事故で死亡したために受け取った30万ドルという現金を隠し持ったままの退役軍人の存在を教えられる。呑んだくれで育児放棄をする両親と暮らすロッキーは、妹と一緒にカリフォルニアに逃げる計画を立てており、まとまった現金が必要だった。そしてそのロッキーに淡い恋心を抱くアレックスは「現金には手は出さない」というルールを破り、最後の「獲物」としてこの退役軍人で盲目の老人宅に空き巣に入ることを決意する。

廃墟の一帯にポツリと建つオンボロ一軒家。そこに暮らすのは大金を持った盲目の老人。セキュリティは解除できる。

どう見ても「簡単な獲物」だったはずの計画は、一歩その家に足を踏み入れた瞬間からもろく崩れ去る。「簡単な獲物」だったはずの相手は、わずかな音も聞き漏らさない「狂気の狩人」だったのだ。

人目から隠された一軒家にうごめく恐ろしい真実。そして若者たちは自分たちが「獲物」になってしまったことに気がつくのだった。

Tolentino Twisted Appeal of Dont Breathe 1200

本作の監督はリメイク版『死霊のはらわた』のフェデ・アルバレス監督ということもあり、細部は何かと「ガバガバ」なのだが、登場人物の心理状況を映像的な緊張感として演出することに成功しており、多少の問題点は主人公たちの「焦り」や「浅はかさ」に回収され、さほど気になることはない。とにかくタイトルにあるように「息もできない」ほどの緊張感が続く、ホラー映画の教科書のようは作品だった。

ストーリーそのものはとてもシンプルだ。

物語の後半には盲目老人の身の毛もよだつ「狂気」が判明するのだが、その事実はストーリー上はさほど大きな意味はなく、ただ「狂気」のギアをひとつ上げる役割にしかなっていない。しかしこのシンプルでミニマムな設定こそが、本作の緊張感の源泉だった。

緊張感というのは無音に近い状態で演出される。ホラー映画をミュートにした状態で鑑賞すれば全然怖くないことの裏返しで、恐怖とは大抵の場合は音と一緒にやってくる。だから音がない状態というのは、何かが登場することの前触れであり、その何かに耳を澄ますことで緊張感が生まれる。そういった意味で、音しか聞こえないモンスターをホラーの対象として設定したことで、必然的に襲われる側は音を出してはいけない緊張状態が作り出され、その感覚は観客にも伝染する。

そして盲目の退役老人を演じたスティーヴン・ラングの音のない存在感が特出している。『アバター』で広く知られることになった今年64歳となるムキムキ老人は、自分の孫ほどありそうな若者をあっという間に絞め上げ、あっという間に殺すなど、その殺人鬼ぶりは末恐ろしい。そして彼の狂気ぶりを端的に表した、地下室に秘められた驚愕の真実が明らかになることで、本来は「空き巣犯の若者たち」とその「被害者である盲目の老人」という図式は完全に覆される。老人が30万ドルもの大金を手にすることになった理由が異常な形でねじれる。

本作でミイラ取りがミイラになる若者3人の人物設定も緊張感の醸成に役立っていた。特に主人公となるロッキーは優しい性格の持ち主として描かれるが、その優しさが空き巣犯としてのルールをことごとく破る結果となり、惨劇の火種となる。もし彼女がもっと冷酷で冷静だったならここまでの惨劇には発展しなかったはずだ。そしてロッキーに想いを寄せるアレックスも慎重さを信条としながらも私情に流されまくる。こういった主人公側の不手際が、物語全体の「ヘマ」として描かれることなく個人の資質に回収されたおかげで、最後までドキドキが止まらなかったのだ。

オープニングの曰くありげなシーンがストーリーに回収されるていく編集の巧みで、てんとう虫というメタファーもうまく作用していた。

そして盲目老人が暮らす家の通り名がスペイン語で「美しい景色」を意味する「Buena Vista」であることも意地悪だ。

日本でも障害者は聖人みたいな扱いを受けることが未だに多いと聞くが、そういう「愛は世界を救う」と信じる連中にこそ見て欲しい一作。とにかくいく苦しいホラーでした。

『ドント・ブリーズ』:

『ドント・ブリーズ』のストーリー(ネタバレ)は次のページ

<スポンサーリンク>

Summary
Review Date
Reviewed Item
ドント・ブリーズ
Author Rating
4
Dont-Breathe-Horror-Movie-Spoilers.jpeg
おすすめ記事!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です