映画『死霊館 エンフィールド事件』レビュー(ネタバレページあり)

実在の心霊研究家ウォーレン夫妻が扱った事件を描くホラーシリーズ最新作『死霊館 エンフィールド事件』のレビューです。1977年イギリスで発生した史上最長のポルターガイスト現象として有名な「エンフィールド事件」を描く実録心霊映画。デーモンの実存に最も近づいたとされる事件の全貌とは!?

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『死霊館 エンフィールド事件』

全米公開2016年6月10日/日本公開2016年7月9日/ホラー/134分

監督:ジェームズ・ワン

脚本:ジェームズ・ワン、チャド・ヘイズ、カリー・ヘイズ、デヴィッド・レズリー・ジョンソン

出演:ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、フランシス・オコナー、マディソン・ウルフ、フランカ・ポテンテ

レビュー

『ワイルド・スピード SKY MISSION』で熱すぎる友情を描いたジェームズ・ワン監督最新作『死霊館 エンフィールド事件』は心霊ホラーというジャンルでありながらも、ヒーロー映画やアクション映画で描かれるような男気に満ち溢れた熱い映画に仕上がっていた。迫り来る謎の心霊現象に背筋を凍らしながらも、助けを必要とする人々のために犠牲を厭わない男気に思わず胸は熱くなってしまう映画だった。

スピンオフを含めるとシリーズ3作目となる『死霊館 エンフィールド事件』はアメリカで著名な超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォーレン夫妻を主人公に、実際に彼らが調査し、数あるポルターガイスト現象のなかでも取り分け有名な「エンフィールド事件」を題材にしている。

1974年に発生し、『悪魔の棲む家』として映画化もされた「アミティヴィル事件」を調査していたエドとロレインの夫婦。類い稀な霊感に恵まれた妻ロレインが事件の真相を探るために当時の状況を透視していると、事件の背後に彷徨く怪しい影を見つける。それは修道女の格好をした悪霊だった。

「アミティヴィル事件」の真相が悪魔の仕業であると確信したロレインだったが、その悪魔はすでに別の獲物を捕らえていた。

時は流れ1977年、舞台はイギリスのエンフィールドに移ることになる。女手ひとつで5人の子供を育ているペギー・ホジソン一家は、貧しいながらも強い絆で結ばれていた。そんな時、ふとしたことから次女のジャネットが「ウィジャボード/こっくりさん」遊びをしたことを契機に、家族が暮らす家で不可思議な現象が起こる。

やがてジャネットは誰かに乗っ取られたように人格が変わるようになる。その正体はかつてその家に住んでいたという老人の霊だった。こうしてアメリカからエドとロレイン夫婦が呼ばれることになる。強い絆で結ばれたエドとロレインは、少女を守るために命懸けの危険な戦いへ進んで行く。

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『死霊館 エンフィールド事件』はホラーという興行的には「閉じた」ジャンルの映画のなかにあって、製作費が桁違いの超大作ファンタジー『ウォークラフト』や人気俳優が総出演の『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』といった同日公開作品を押しのけて全米初登場首位を獲得するほどにヒットした理由とは、本作の主人公がエド&ロレイン・ウォーレン夫妻だということだろう。ヴェラ・ファーミガとパトリック・ウィルソンが演じる夫婦の関係性を通して、本シリーズは観客を怖がらせるための「閉じた」ホラー映画としてだけではなく、一般作品としての魅力も獲得している。

特に本作ではその傾向は顕著だった。

霊感に恵まれた妻ロレインは常に悪魔からの脅威にさらされている。一方で夫のエドはロレインのような透視能力はなく、あくまで「悪魔研究家」という肩書きのサポート役である。言うなれば現場のロレインと、事務方とエドというアメリカでも根強い保守的な夫婦関係を逆転させたのがウォーレン夫妻であり、悪魔を見ることができるために周りからは怖がられることの多いロレインを守ることがエドの主な仕事でもある。本作ではこの夫婦関係がとにかく熱い。観客を凍らせるのが目的のホラー映画にあって、エドの「悪魔退治はできないが君は僕が守る」という不器用男子の鏡のような男気がとにかく熱いのだ。

透視中に悪魔と遭遇してからロレインは不気味な悪夢にうなされるようになった。それは愛するエドが悪魔との戦いに敗れて串刺しにされてしまうという恐ろしいもので、これは彼女にとって最悪の事態でもあり、経験上ただのいいかげんな予言でもないことはわかっていた。このビジョンに付き纏われるなかロレインはエンフィールド事件に深く関わっていく。自分たちでしか救えない家族。しかしその代償としてエドを失う可能性が彼女の頭から離れない。

かつてその家に住んでいたという老人に取り憑かれてしまった少女ジャネットは、事件がイギリスでも大々的に取り上げられたことで孤独を募らせていく。片親で育った少女が注目を得るために行っている自作自演という疑惑の目も向けられながら、信じられるのは家族だけになってしまい、その家族にも自分の不用意な遊びのせいで迷惑をかけてしまったことで罪悪感にも苛まれている。そんな少女を理解できるのはアメリカから来たロレインだけだった。ロレインも過去に超能力少女として周りから孤立した経験を持っていた。しかしロレインはエドに出会った。自分の能力を気味悪いものとしてではなく、有益なものとして理解し協力してくれるエド。そしてエドもまたロレインを心から信頼していた。

ロレインが少女にかつての自分を見たのと同じように、エドもまた少女が苦悩する姿に愛する妻ロレインを見出していた。

つまりエドにとって少女を悪魔から救い出すことは、ロレインへの愛と同等のものだったのだ。だから例えロレインが危険だからという理由でエドを制止しようとしても、彼は聞かない。例え悪魔に自分が殺されたとしても、少女を見殺しにはできない。なぜならエドにとってその少女とはロレインでもあるから。

映画のラスト、ロレインのように特殊能力を持たないエドは「ロレイン(≒少女ジャネット)を守る」という信念だけで悪魔と対峙する。信念だけを武器に悪魔を恐れることなく戦いに挑むエドの姿には、悪魔が付け入る信仰の揺らぎは見て取れない。何も持たないエドが覚悟と信念だけで少女を守ろうとする姿からは、本作をジャンル映画の枠組みから飛び出させるに十分な魅力が感じ取れた。

2時間を超える長尺な作品であるため途中同じようなプロットの繰り返しでダレる部分もあったが、終盤の胸熱展開で全てが許される。ホラーあり、純愛あり、胸熱ありと夏のデートムービーとしては最強なのではないだろうか。

おすすめです。

『死霊館 エンフィールド事件』:

→『死霊館 エンフィールド事件』のストーリー(ネタバレ)はここから

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Review Date
Reviewed Item
死霊館 エンフィールド事件
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4
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