シアーシャ・ローナン主演『ブルックリン』レビュー

50年代にアイルランドからアメリカに手稼ぎに来た少女の成長を描く『ブルックリン』のレビューです。脚本は『 ハイ・フィデリティ』の原作者のニック・ホーンビィ。主演シアーシャ・ローナンの等身大で伸びやかな演技に注目。

Brooklyn 2

『ブルックリン/Brooklyn』

全米公開2015年11月6日/日本公開2016年7月1日/ドラマ/112分

監督:ジョン・クローリー

脚本:ニック・ホーンビィ

出演:シアーシャ・ローナン、ジュリー・ウォーターズ、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエンほか

作品解説

1950年代、アイルランドからニューヨーク・ブルックリンにやってきた移民の少女の青春や揺れ動く心を、「つぐない」のシアーシャ・ローナン主演で描いたドラマ。脚本は、「ハイ・フィデリティ」「アバウト・ア・ボーイ」の原作者で、「17歳の肖像」「わたしに会うまでの1600キロ」などで脚本家としても活躍する作家のニック・ホーンビィ。監督は「BOY A」「ダブリン上等!」のジョン・クローリー。大人しく目立たない性格の少女エイリシュは、妹の将来を案じた姉の勧めで、アイルランドの小さな町からニューヨークへとやってくる。それまでとはあまりに異なる大都会での生活に戸惑うエイリシュは、しかし、イタリア系移民の青年トミーとの恋をきっかけに大きく変わっていく。いつしか洗練されたニューヨーカーとしてカリスマ性すら発揮するエイリシュだったが、そんな彼女のもとに故郷からある悲報がもたらされる。

引用:eiga.com/movie/83694/


レビュー

ニューヨークにドジャーズがあった50年代を舞台に、アイルランドからブルックリンに移り住んだひとりの少女の機微を繊細に描いた『ブルックリン』はシアーシャ・ローナンの素晴らしい演技が光る秀作だった。

2007年公開の『つぐない』で13歳という史上7番目の若さでアカデミー助演女優賞にノミネートされて注目を集めた彼女は、その後も『ラブリーボーン』や『ハンナ』、『グランド・ブダペスト・ホテル』で唯一無二の透明感と演技力を見せつけてきた。そして本作ではこれまでの少女という彼女のイメージから、自立した女性へと成長するその一瞬一瞬の煌めきのようなものを、見事なまでの演技力で演じきっていた。

1950年代のアイルランド。パイ屋で働く少女エイリス(シアーシャ・ローナン)は、仲のいい姉の勧めに従い、家族と離れ、たったひとりで海を渡りニューヨークへと出稼ぎに向かうことを決心する。ニューヨークで他の出稼ぎ少女たちと共に暮らしながらデパートの店員として働くエイリスは、大都会の生活に戸惑いながらも必死に生きて行く。そしてダンスパーティでひとりのイタリア系移民のと出会ったことがきっかけとなり、エイリスはひとりの女性として成長していく。そんなある日、エイリスは悲しい知らせを受けて故郷に帰ることになる。そしてエイリスの心は、大西洋を跨いだ故郷とニューヨークの二つの間で揺れ動いていく。

Brooklyn 3

本作はイギリスの権威ある文学賞コルム賞を受賞したコルム・トビーン著『ブルックリン』の映画化で、監督には『BOY A』のジョン・クローリーが、脚本は『わたしに会うまでの1600キロ』のニック・ホーンビィが担当する、一見すると地味な映画だ。物語も非常にシンプルで、深い絶望も千年の恋も運命の悪戯も本作には登場しない。ただひとりの少女が等身大の女性へと成長していく過程を、丁寧にそして情感豊かに描いているだけだ。

それでも本作に退屈するようなことはなかった。『17歳の肖像』や『わたしに会うまでの1600キロ』など女性の心模様を描くのを得意するニック・ホーンビィの脚本があいからわず素晴らしいということもある。加えて、シアーシャ・ローナンの名演は当然のこととして、彼女の相手役となるイタリア系移民の青年を演じたエモリー・コーエンとその家族たちの存在もいいアクセントになっていた。アイルランド系社会は繋がりが強いことで有名だが、イタリア系移民たちの家族の絆も強い。互いが故郷を離れてやってきた移民という意識が彼らを繋いでいく過程もとても自然に描かれていた。

そして1950年代のニューヨークの移民事情の描き方も素晴らしい。主人公エイリスはアイルランド移民で、彼女が恋するのがイタリア系移民という設定のため、本作に登場するニューヨークとは下町だ。2015年公開の『キャロル』に描かれるような豪奢な50年代のニューヨークではなく、貧しいながらも将来に確かな希望を感じていた下町ニューヨーク。アイルランド系とイタリア系というギャップやその本音など、くすりと笑える中にもリアリティが含まれており、移民たちの話す英語や識字についての問題が物語に感動を添えることになる。

主人公エイリスを演じたシアーシャ・ローナンもニューヨークで生まれ、その後アイルランドで育った生粋のアイルランド人。太平洋で隔てるアイルランドとニューヨークの間で揺れ動くエイリスの姿はシアーシャ本人の半生とも重なる。そしてシアーシャ・ローナンの女優としての作品の選び方が、作中のエイリスの成長にも重なっていく。そのためこの本編では描かれないエイリスの将来とは、まるでシアーシャ・ローナンのそれのようにまで思えてくる、彼女にとってはまさにはまり役だった。

ジェニファー・ローレンスのように難しいキャラクターを難なく演じるタイプの演技派とは異なり、何もない日常や普通のキャラクターの中にも特殊な煌めきを見出せるのがシアーシャ・ローナンの魅力だということがよく分かる作品で、彼女にとっては少女から自立した女性へとの脱皮を意味する作品もである。

本作『ブルックリン/Brooklyn』は普通の物語の中に潜んでいる、美しさや歓びを描き切った秀作だった。

『ブルックリン』:

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ということでシアーシャ・ローナン主演の『ブルックリン/Brooklyn』のレビューでした。最初から最後までシアーシャ・ローナンの一作です。彼女を堪能するのには本作しかありません。これまでの彼女の出演作にあっては最もシンプルで地味な部類の作品ですが、それでこそ彼女の魅力が生かされるということがよくわかります。これを見れば誰もがシアーシャ・ローナンを応援せずにはいられません。本作を2015年のベスト映画に推すアメリカの批評家も多いですが、ニューヨークに馴染みのない日本人には、どこまで本作で描かれる移民の機微が理解できたのは我ながら疑問ですが、それでも素晴らしい作品であることは実感できます。おすすめです。以上。

Summary
Review Date
Reviewed Item
ブルックリン
Author Rating
4
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