『11.22.63』第3話レビュー(ネタバレあり)「Other Voices, Other Rooms」

スティーブン・キング原作で、J・J・エイブラムスが製作するHulu期待の新ドラマ『11.22.63』第3話のレビューです。ジェームズ・フランコ演じる高校教師がJFK暗殺を阻止するためにタイムスリップする物語。相棒を得たジェイクはダラスでの新生活をスタートさせ、とうとうオズワルドにも接近する。

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『11.22.63』第3話「Other Voices, Other Rooms」

全米公開2016年2月29日/日本公開未定/SFドラマ/55分

監督:ジェームズ・ストロング

原作:スティーヴン・キング『11/22/63』

脚本:ブライアン・ネルソン

出演:ジェームズ・フランコ、ジョージ・マッケイ、サラ・ゴードン、ダニエル・ウェバー、ほか


レビュー

全8話のミニシリーズとしてスティーヴン・キング原作小説をドラマ化した『11.22.63』は、第1話で感じた「これは素晴らしい!」という驚嘆は、第2話では「これはすごい作品になるのでは?」という予感に変わり、そしてこの第3話でもうほとんど断言して構わないと思うようになった。そう、このHuluドラマは「傑作です」と。

前話、ハリー・ダニングの父親でやがて家族を惨殺するフランク・ダニングを事前に殺害することに成功したジェイクは、その代償としてビルという青年に捕まってしまう。ビルは妹をフランクに殺されたと信じている青年。彼はジェイクの持ち物のなかから1963年のJFK暗殺時の新聞の切れ端を見つけ、ジェイクを問い詰めるのだった。

「自分は2010年から1960年にタイムスリップしてきた。目的は1963年に起きるJFK暗殺を阻止するため」

この突拍子もないジェイクの告白を、ビルはあっさりと信じてしまう。しかしその一連の経過が「あっさり」と描かれる訳ではなく、妹を殺され絶望し、そして身体中に虐待された跡が残るビルの姿を映すことで、彼は1960年という時代に未練も期待も持っていないことが描かれているため、違和感は全くない。それどころか説明過多な部分がなく非常に洗練された演出となっている。

ビルはジェイクの相棒となる。頭は賢くない。それでも気はいい奴だ。

1960年11月1日、ジェイクとビルはダラスへと向かう。3年後にダラスを遊説中だったJFKがオズワルドに射殺されたとする、あの場所を2人は訪れる。そしてジェイクはダラスで英語教師として高校で働くことに成功する。

ふたりはここダラスでJFK暗殺を阻止するため、事件の真相を探り始める。

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<ここからのエピソードにはネタバレが含まれます>

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時間は一気に2年が過ぎる。1962年、当時のアメリカの敵国ソ連に亡命していた、後のJFK殺害犯リー・ハーヴェイ・オズワルドは1962年に亡命を取りやめアメリカに帰国し、ダラスにロシア人の妻を連れて帰ってくる。

その歴史を知っているジェイクは、オズワルドの部屋に盗聴器を取り付け、彼の監視をはじめる。ただオズワルドを殺すのではなく、彼とCIAとの関係や、JFK暗殺の真相を解明しない限り、「JFKが殺される」という過去を変えることはできない。つまり「JFKが殺される」過去を変えるためには、オズワルド単独の犯行なのか、それとも裏で大きな陰謀が存在しているのかという暗殺事件の真相を暴かなければならないのだ。

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ジェイクたちの当面の目的とはオズワルドがJFK暗殺に先んじる1963年4月に起こしたとされるウォーカー将軍狙撃事件の真相を暴くことだ。反共主義者として知られるウォーカー将軍狙撃事件は、事件発生当時は未解決だったが後にJFK暗殺犯としてオズワルドが逮捕されることで彼の関与が指摘されることになる。このウォーカー将軍狙撃事件の真相が、JFK暗殺の真相へと繋がっていく可能性を念頭に置いているのだ。

一方、ダラスでの生活のなかでジェイクとビルは、とあるナイトクラブで後にオズワルド射殺犯となるジャック・ロビーとも「偶然」に出会う。もちろんこれはただの偶然ではなく、前話でも描かれた歴史の抵抗のひとつだ。何気ない日常の出来事ひとつひとつが「歴史の抵抗」である可能性もあるため観ていて気を抜けない。原作にあった思わず肩に力が入ってしまう緊張感をうまく再現している。

そしてジェイクは高校教師として働くなかで高校に司書として働くセイディー(サラ・ゴードン)と出会う。彼女に惹かれていくジェイクは、JFK暗殺阻止という使命とサディーへの想いの中間で揺れ動くことになる。もちろんこの出会いそのものが、ジェイクをオズワルドから遠ざけるための「歴史の抵抗」になっている。タイムスリップ物語に時空を超えた恋愛は付き物だが、この「11.22.63」というドラマが特異なまでに切ないのは、時空を超える恋愛を描くのではなく、時空を越えさせないための恋愛が描かれる点にある。

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物語は南部連合の旗を前にしたウォーカー将軍の演説後に、共産主義者のオズワルドが激しく抗議するシーンで終わることになる。「目を覚ませ!さもなくば俺が殺してやる!!」と公衆の面前で激昂するオズワルド。2016年の感覚では明らかな差別発言を繰り返すウォーカー将軍に対して見せたオズワルドの抵抗は、現代を知るジェイクにとっては正論に聞こえるはずだ。

1960年という共産主義者への弾圧が強かった時代を描くと同時に、本エピソードでは「合法的」に黒人差別が容認されていた時代の異様さも緻密に描かれている。ケネディ暗殺から1年たったリンドン・ジョンソン大統領時代の1964年に、それまではいくつかの州法のもとで「合法的」に行われていた人種や宗教、性、による差別を禁止する法律「公民権法」が成立することからも1960年には黒人差別は当たり前のことだった。

こういった50年前のアメリカの倫理的な歪みを通して、ジェイクのJFK暗殺阻止のモチベーションは醸成されていく。「JKFが生きていたのなら」という仮定が示す、より良い世界の可能性のなかには、未だにアメリカに根強く残る人種問題も当然含まれているのだ。もしJFKを救えば現代に差別はなくなっているかもしれない。

たった50分弱の物語だが、見どころは詰まっている。前述したように本シリーズには何気ない一瞬の描写や出来事さえも「歴史の抵抗」として後々意味を持つ可能性があるため、観ていて気が抜けない。本エピソードからはジョージ・マッケイ演じるビルという相棒を手にしたジェイクは、ダラスでの生活を開始し、時間も一気に2年間飛ぶことになる。原作小説では過去での何気ない生活の描写によってラストの重みが一層鮮明になるのだが、ドラマ版では時間の針が一気に進むことになる。この省略が吉と出るか凶とであるかはまだ先の話だろう。

とうとう姿を現したJFK殺害犯リー・ハーヴェイ・オズワルド。彼は本当にJFKを殺したのか? 共産主義者差別と戦おうとしたオズワルドがなぜJFKを殺さなければならなかったのか? オズワルドに接触するCIAの本意とは何のか?こういった疑問が入れ替わり立ち替わり提示され物語は目まぐるしく展開していくのだが、その中心にある「JFK暗殺阻止」という柱は全くブレない。だから一瞬も気を抜けないし、来週が待ちきれない。各話ごとに星評価を与えるのが無意味に思えるほどに、ここまでの全3話は一貫して素晴らしい。もちろんこのエピソードにも文句はないし、そもそも粗を気にする以前の問題として物語に熱中してしまっているのだ。

主人公ジェイク、暗殺犯オズワルド、相棒のビル、そして運命の再会を果たしてセイディー。それぞれの運命がどこに向かうのか?本当に来週が楽しみなのだ。

『11.22.63』第3話「Other Voices, Other Rooms」:

・Huluドラマ『11.22.63』各話レビュー(ネタバレあり)

Summary
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『11.22.63』第3話
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5
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