Huluドラマ『11.22.63』第1話レビュー(ネタバレあり)「The Rabbit Hole」

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スティーブン・キング原作で、J・J・エイブラムスが製作するHulu期待の新ドラマ『11.22.63』第1話のレビューです。ジェームズ・フランコ演じる高校教師がJFK暗殺を阻止するためにタイムスリップする物語。第1話からとんでもないクオリティでこれは傑作の予感です。

『11.22.63 第一話 / The Rabbit Hole』

全米公開2015年2月15日/日本公開未定/SFドラマ/81分

監督:ケヴィン・マクドナルド『ラストキング・オブ・スコットランド』

原作:スティーヴン・キング『11/22/63』

脚本:ブリジット・カーペンター

出演:ジェームズ・フランコ、クリス・クーパー、サラ・ガドン、チェリー・ジョーンズ、ほか


レビュー

スティーヴン・キング原作の小説『11/22/63』はタイトルが示す1963年11月22日に起きたケネディ大統領暗殺を阻止しようとする物語で、設定はSFながらも稀代のストーリテラー渾身のリアリティと興奮が入り混じる文字通りの傑作だった。50年以上前の世界へと繋がる「穴(ウサギの穴)」を通して過去と現在を行き来するSF設定も、キングが得意とする詳細な細部の描写によって物語が進むほどにリアリティが加えられていく。

これまでもスティーヴン・キングの小説は何度も映像化されてきており、失敗作と成功作の比率でいえば成功作のほうが少ないのではないだろうか。また映画としては成功しても「スティーヴン・キング原作」というエッセンスを感じない作品もあり、キングの想像力に映像がなかなか追いつかない現状をファンだけでなくキング本人も感じているようだった。

近年のキング作品のなかでも評価が高い『11/22/63』のドラマ化は、これまでのキング作品の映像化の限界に正面から挑戦するような布陣で制作されている。放映を担当するのは成長著しいHuluであり、製作にはあのJ・J・エイブラムスが名を連ね、監督には『ラストキング・オブ・スコットランド』のケヴィン・マクドナルドが、そしてキャストにはジェームズ・フランコ、サラ・ガドン、クリス・クーパーといったハリウッド一線級が出演する。プレスリリースを読む限りでは、例えばデヴィッド・フィンチャー監督の『ハウス・オブ・カード 野望の階段』やドラマ版『ファーゴ』と同様のクオリティが期待できる。

そして第1話を見た感想は、まさにその期待に応えるものであり、もしかするとそれ以上のものになるのでは、という想いを抱かせる内容だった。

物語は一人の老人の独白からはじまる。ある夜、ひとりの少年は目の前で自分の母親や妹が父親によって惨殺される現場を目撃する。ベッドの下に逃げ込むも彼もまた父親から殺されかける。その一部始終を読み上げる老人とは、生き延びた少年だった。50年前の起きた一家惨殺事件の被害者で生き残りの老人は、年老いた後に学校に通い読み書きを学んでおり、その独白とは彼自身の経験を文字にしたレポートだった。そしてその老人に国語を教えている教師が物語の主人公だ。

ジェームズ・フランコ演じる高校教師ジェイクは行きつけの食堂で離婚協議中の妻から書類の確認を求められる。旧知のマスターのアル(クリス・クーパー)にコーヒーを注がれ、書類に判を押し、陰鬱な気持ちで元妻を見送っていると、食堂の奥からアルが咳き込みながら現れた。その姿はたった数分前に会ったアル本人とは思えないほどに年老い衰えていた。

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ここから物語は一気に加速していく。

実は食堂の奥には不思議な「穴」がありそこを通ると、1960年10月へとタイムスリップしてしまうのだった。そしてタイムスリップした先の世界でどれだけ長く過ごそうとも現実の世界ではたった2分しか経過していないという。つまりアルは現実世界でジェイクが離婚書類に判子を押しているわずかな時間のあいでに、過去にタイムスリップし何年も過ごしていたのだった。そしてその間にアルは肺がんを発症してしまう。このままでは大切な目的を達せられないと判断したアルは現在に帰ってきたのだった。

アルの目的とは世界を変えることだった。世界を今よりもっと素晴らしいものにするために過去を変えようとしてした。そして「穴」が1960年に繋がっていることから、1963年11月22日に起きるJFK暗殺を阻止しようとしていた。そうすればヴェトナムも泥沼化することなく、世界も今ほど殺伐としていないと考えたのだ。

途方もない話に困惑するジェイクだったが、「穴」が実際に過去と繋がっていることを体験することでアルの真意を理解する。しかし過去を勝手に変えてしまっていいのか、もし過去を変えれば今を生きているなかにも消滅する人が現れるのではないか、という疑問にジェイクは応えられずアルと喧嘩別れしたその 次の朝、アルが自宅で死んでいるのを発見する。

ここでジェイクは決心する。世界のためにも、そしてアルのために、JFK暗殺を阻止し、世界を変えるのだ、と。

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<ここからエピソードのネタバレが含まれます>

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80分ほどの放映時間がまるで過去に飛ばされたジェイクの時間感覚のようにあっという間に感じられた。とにかく面白い、の一言だった。そしてやっとスティーヴン・キングの想像力に映像が追いついたと納得もした。物語の展開、映像、演出、音楽、美術といった細部の見事さが、少しの隙間も見逃さないキングの圧倒的な筆致と重なり、「なるほどこれがキングの頭のなかにあった世界なのか」と当惑するような感動を覚えた。

キングの細部の具体性へのこだわりとは、一見するとB級テイストに落ち着きかねない世界観に緊張を与える効果があり、凡庸な作家が細部にこだわった結果退屈になってしまう反面、キングはその細部の密な描写のなかにも物語のドライヴ感を表現することができる。『11/22/63』のような手垢の付いた「タイムスリップもの」では尚のこと、このキングの細部に宿るドライヴ感を映像でも再現できるかにその可否は委ねられている。

そしてその再現度の高さには最初から驚かされる。

ジェイクが「穴」を通り最初に過去の世界にタイムスリップした時の1960年という時代描写はもうドラマの枠を完全に飛び越えている。日本のドラマでは当たり前のセット感が一切ない。現在に1960年という世界がぽっかり現れたようなシームレスで並列な映像表現に成功している。走る車、ファッションなどは当然として、人種差別が合法だった時代背景や微妙に異なる男女 の関係性をほのめかすなど、キングの小説のように細部に手を抜いていない。

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物語は1960年10月に飛び、1963年のJFK暗殺を「未然に」防ぐために、犯人であるリー・ハーヴェイ・オズワルド(ダニエル・ウェバー)を事前に抹殺することを計画する。しかしなかなか上手く行かない。過去に起こることはすでに知っているのだから、事前にオズワルドの立ち入り場所に先回りし殺せばいいと思うのだが、何かに邪魔される。例えばジェイクの目の前で交通事故が起きて死んでいるはずの女性が「あなたはここにいるべきではない」とジェイクに語りかけたり、オズワルドの後を追って入ったレストランでは天井のシャンデリアが突然崩落する。そしてジェイクが間借りしていた家では火事が起きて犠牲者まで出てしまう。まるで過去の世界が意思を持って、過去を変えようとするジェイクを邪魔しているようなのだ。

この「過去が共鳴する」というテーマは原作同様にドラマでも重要な柱となっていることがわかる。「タイムパラドックス」という過去が変わってしまったことで生じる歪みを描くのではなく、「タイムパラドックス」を阻止しようとする世界や時間の自律的防衛性が物語のプロットの中心に立っている。

そして同時にこのドラマはJFK暗殺の真相という曰く付きの事件を描くミステリーである。特に第1話となる本エピソードでは、この「過去が共鳴する」時間の意思と、JFK暗殺のミステリーがちょうどいい具合に入り混じり、これからの展開を大いに期待させてくれるのだ。

冒頭に登場した老人の独白も、これから大いに関わってくることになる。そしてやがては単純なタイムスリップやミステリーではない、今ここに自分が生きているという営みは無数の影響によって保証されているという実存に関する問いを描くことにもなる。

またところどころで原作との違いもあり、原作を読んでいるからこその楽しみもある。一番の改変といえば、「穴」が通じる世界が原作では1958年だが、ドラマ版では1960年になっていることだ。その違いが原作とは微妙に異なる「歪み」を生んでいる。13FRANCOJP master675

最後にドラマ版ということでキャストに関して言及して終わる。現実でも教授(教師)としても活動するジェームズ・フランコだからこそ高校の国語教師ジェイクははまり役だと言える。本作はひとりの男が世界を変えようとする「セカイ系」の一面もあるのだが、そこにアメリカの歴史と宿罪の意識、そしてアメリカ人としてのアメリカが歪めた世界を変えることへの責任が加わる難しい立場を、小説とは違いナレーションに頼らず演じるのは決して簡単ではないだろう。それでも『127時間』で見せた熱演が期待される。そして第1話ではクリス・クーパー演じるアルも原作で描かれる孤独でありながらも責任感に篤いイメージとかなり近かった。

とにかく見逃せないドラマだと思い切って断言したい。例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や広瀬正の『マイナス・ゼロ』といったタイムトラベルの傑作と肩を並べるドラマとなるかもしれない。

唯一、問題点をあげるとするのなら、このドラマは(当たり前だが)一気に最後まで読むことができる小説ではなく、来週を待たなければならない連続ドラマだということ。もう待ち切れないのだ。

『11.22.63 第一話 / The Rabbit Hole』: 最高のスタート!

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Review Date
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『11.22.63』第1話「The Rabbit Hole」
Author Rating
5
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