ドラマレビュー|『わたしを離さないで』第1話

カズオ・イシグロ原作のベストセラーを綾瀬はるか主演でドラマ化する『わたしを離さないで』の第1話のレビューです。現実とSFが交差するブッカー賞最終候補作を日本の連続ドラマとしてどのように映像化するのか見届けようと思います。

Extention

『わたしを離さないで』

出演:綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ

原作:「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

脚本:森下佳子

音楽:やまだ豊

プロデュース: 渡瀬暁彦 飯田和孝

演出:吉田健 山本剛義 平川雄一朗

製作著作:TBS

第1話 あらすじ

手術台の男性を見つめる女性・保科恭子(綾瀬はるか)。
その表情は、感情が抜け落ち、全てを諦めているかの様に見える。彼女にはとある使命があった。その使命とは…

20年前、山の中にある陽光学苑で生活していた恭子(子ども時代・鈴木梨央)。この学苑では子どもたちが寄宿舎で生活を共にし、教育を受けていた。ある時、恭子は同級生の土井友彦(子ども時代・中川翼/大人時代・三浦春馬)が男子たちからからかわれ、かんしゃくを起こしているところを見つける。女子のリーダー・酒井美和(子ども時代・瑞城さくら/大人時代・水川あさみ)には「放っておけば?」と言われるが思わず駆け寄る恭子。友彦のかんしゃくは治まらず、恭子を突き飛ばして女子たちの顰蹙をかってしまう。

ある日、学苑に新しい教師・堀江龍子(伊藤歩)が赴任してくる。校長の神川恵美子(麻生祐未)の教育理念に魅かれて志望したという龍子だったが、子どもたちの教育を目の当たりにして何か違和感を覚える。

そんな時、恭子たちは神川校長から“大事なこと”を教えられる。

「あなたたちは生まれながらにして『使命』を持っているのです」―。

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第1話 レビュー|1話からいきなり驚きのネタバレ!!

人気漫画のドラマ化も、サラリーマンの憂さ晴らし小説のドラマ化も、昔の日本はすごかった系歴史小説のドラマ化も全部うんざりだ。かといって今の日本のドラマ界(全然詳しくないが)から例えば米国のケーブルテレビが作るドラマやネット放送用ドラマほどに画期的で挑戦的なオリジナルドラマが生まれるとも思っていない。全年齢層を対象とする作品作りが求めれる日本のドラマでは自ずと限界は決まってくるし、そのなかでどこまで意欲的な企画を生み出せるのかが現状のハードルとなっている。

そんななかドラマ版『わたしを離さないで』は、そのテレビドラマの限界のなかで近年では珍しい挑戦的な作品になるかもしれないと期待している。

わかりやすいエンタメが好まれる日本のドラマ界にあって、世界的ベストセラー小説とはいえ文芸作品の範疇に入るカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を原作としていること自体、これまでの安易なドラマ企画とは違って見える。そして何より原作の内容が明らかに日本の「最後は誰も傷つかない」というテーゼとは逆行するものだ。それは過去にキャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ共演で映画化された作品にも言えることで、この原作はたとえドラマ用に脚色されたとしても、明るい話にはなりっこない。映画版『わたしを離さないで』の脚本家アレックス・ガーランドが後に『Ex Machina』というドン詰まりのSF映画を撮るように、この原作には逃げ場はない。

※ここからネタバレあり※

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そしてドラマ版『わたしを離さないで』の第1話となるのだが、先行する映画版に人物描写を似通わせながらも、日本が舞台のドラマとして語り直そうとする新しい設定も盛り込んでいた。

物語は綾瀬はるか演じる保科恭子が手術を受ける男性を見つめるところからはじまる。謎めいたいくつかのセリフを医者が放った後、男から臓器を取り出し手術は終わる。そして昏睡する彼は保科恭子の手に委ねられ、彼女は男に注射を打つ。そして彼女は男を入れた焼却炉のボタンを押すことになる。

この間、原作や映画版にはあった「わたしは介護人です」という主人公によるナレーションはない。

物語は恭子の回想という形で、20年前に戻っていく。

人里離れた寄宿学苑で暮らす恭子たち。そこでは一人のかんしゃく持ちの少年の友彦や、恭子の友人の美和たちが一緒に暮らしている。

ある日、学苑の近くでタバコの吸殻が発見される。学苑の校長は生徒たちを前にタバコの吸殻を見せ、「健康であることがあなたたちの義務です」と訴え、タバコを吸う行為を厳しく批判する。

そして学苑にはひとりの新任の教師が赴任する。その教師は希望を持ってこの特殊な学苑に赴任してくるが、一方で他の先生や校長はどこかで影を抱えているように描写されている。

こういった秘密や謎を含んだ部分での描写は相変わらずのジャパン・クオリティで萎える。影のある人間を影のある人間として描いたら、その影の深さが全く演出されない。ただただ不気味なだけで、それは演出とは呼べない。

物語はその後、イジメの悩みを励ましてくれた恭子に 友彦がCDをプレゼントする。ジュディ・ブリッジウォーターという歌手のCDで、二人はその曲を隠れて聴きながら教室で楽しそうに踊るのだった。

第1話は大部分が回想という形で寄宿学苑を舞台にしており、最後に校長が生徒たちに「あなたたちは普通の人間ではなく、特別な使命があ与えられています。それは提供の使命です。あなたたちは病気などになった人たちに臓器を提供する存在。いわば天使なのです」という驚きのネタばらしをして終わっていく。

、、、おいおい、まじすか。嘘でしょ。

ということで『わたしを離さないで』の原作でも映画版でも読者や観客を惹きつける要因となった物語の謎の部分をいきなり第1話から明かしてしまうという、超攻撃的な展開がラストで行われることとなった。これには驚いた。なるほどこれがジャパン・クオリティなのか。一体何を考えているのか、ちょっと理解を超えている。

個人的には日本のドラマであろうが本作が『わたしを離さないで』である以上は、この秘密の暴露をいかに言葉に頼らず、演出やエピソードの積み重ねで視聴者に少しずつ明かしていくのかという部分が本シリーズの肝となると思っていたのだが、どうやらそんなことはお構いなしだったようだ。

これはこれで2話以降が逆に気になりはするものの、勢い勇んで全話レビューするとか先走ってしまったことを後悔したことは言うまでもない。前準備として映画版を見直したりしていた自分が馬鹿らしくなってくる。

そしてラストの綾瀬はるかによるナレーションで、今後のホラー・テイストな復讐展開が示唆されるのだが、一体原作のトーンはどこに行ってしまったのだろう。物悲しい物語のなかにでも善悪の判断を超えた人間の理性ともいうべきものの気高さが描かれていた原作や、それを汲み取った映画版と比べても、ドラマ版『わたしを離さないで』は明らかにトーンが違う。

ここで本作のキャッチコピーに「ヒューマン・ラブストーリー」という難解な言葉が含まれていたことにハッとなった。原作はどう読んでも「これってヒューマン・ラブストーリーよね」という感想にはならないと思っていたのだが、どうやらTBSは並外れた感受性と再現力を持ってして、原作を大幅に描き変える覚悟で『わたしを離さないで』をドラマ化するつもりのようだ。

それならそうと最初から言って欲しかった。『ラピュタ』見たのに。

ということでラストの大どんでん返しに驚いた第1話でした。さて来週ぼくはまたレビューするのでしょうか。

そんなこと誰にもわからない(綾瀬はるかのナレーション風)。

Summary
Review Date
Reviewed Item
わたしを離さないで 第1話
Author Rating
3
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