映画レビュー|『ピクセル』-こんなオタクには任せられない

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任天堂のドンキーコングやパックマンなど懐かしのアーケードゲームのキャラクターたちが勘違いで地球に襲いかかるSFコメディ『ピクセル』のレビューです。地球をゲームの侵略から守る為1980年代に活躍したゲームオタクたちが結集。主演はアダム・サンドラー、監督は『ホームアローン』のクリス・コロンバス。オタクに世界は救えるのか!日本公開が2015年9月12日。

『ピクセル/PIXEL』

全米公開2015年7月24日/日本公開2015年9月12日/アメリカ映画/105分

監督:クリス・コロンバス

脚本:ティム・ハーリヒー、ティモシー・ダウリング

出演:アダム・サンドラー、ケヴィン・ジェームズ、ミシェル・モナハン、ピーター・ディンクレイジ他

あらすじ(ネタバレなし)

地球や人類の文化ついての情報を電波に乗せて、宇宙人との交流を図ろうとしていたプロジェクト。それを宇宙人が受信したものの、彼らは人類からの宣戦布告だと勘違いしてしまう。「パックマン」「ギャラガ」「ディグダグ」「ドンキーコング」「スペースインベーダー」と、送られた情報からテレビゲームについて知った宇宙人たちはそれらに出てくるキャラクターに姿を変えて地球を侵攻し始める。巨大なキャラクターが次々と現れ、都市をブロック化していく事態に世界はパニックに陥り……。

参照:www.cinematoday.jp/movie/T0019772

レビュー

これでは世界をオタクに任せられない!:

主演のアダム・サンドラーは90年代のボックスオフィスの上位常連で、アメリカ限定とはいえコメディアンとして独特の存在感を示していた。しかし今や見るも無残なほどに毎年似たようなつまらない映画に出演を続けている。直近では『靴職人と魔法のミシン』というくだらないファンタジーが思い出される。とにかくここ数年、彼の出演映画で面白かった試しがない。

そして本作『ピクセル』はアダム・サンドラーの起死回生の一作になる可能性があった。監督は『ホームアローン』や『ハリー・ポッター』シリーズのクリス・コロンバスで、主人公のオタク役を演じるのがアダム・サンドラー。共演にはサンドラー作品ではおなじみのケヴィン・ジェームズ、『アナ雪』でオラフの声を担当したジョシュ・ギャッド、そして『ゲーム・オブ・スローン』でブレイクしたピーター・ディンクレイジなど。新鮮味はないが、それでも手堅いメンツを揃えた印象。そこに強気のソニー・ピクチャーズが用意した100億円ほどの制作費。強豪揃いの2015年夏の陣にあっては、『アベンジャーズ』や『ジュラシック・ワールド』といったシリーズ作品が目立つ中で『ピクセル』は、オリジナル大作ということで期待が持たれた。

結果、ボロボロだった。もちろん見どころや笑いどころは用意されているのだが、それぞれがほとんど「一発ギャグ」としてしか作用しておらず、全体としては「とってつけた」感が強く、SFとして必要な最低限の説明を怠り大事なプロットではギャグに逃げる、という悪しきコメディ映画の結末を見たような気がした。とにかくお寒いのだ。

先ほど本作をオリジナル大作と表記したが、正確には本作は2分ばかりの短編映像を原作としており、「友好のメッセージとして宇宙に放たれたアーケードゲームの映像を、宣戦布告と勘違いした異星人が、ドンキーコングなどのキャラを兵器に模して地球に襲いかかる」というたった2分の短編映像。しかも80年代アーケードゲームをモチーフとしているだけあって日本は不可欠で、任天堂やナムコなどの名前も並ぶ。これはどう考えても面白い作品になると思ったのだが。

本作の欠点は非常にはっきりとしている。アイデア一発のシュチュエーションに絆され、街中をゲームキャラが追いかけてくるという映像イメージをただただ面白がった挙句に、それを100分ほどにひたすら薄伸ばしただけで新たなアイデアや展開を変えるようなプロットが用意できなかったことに尽きる。加えられたストーリーとはありきたりな恋愛パートくらいで、あらすじで紹介されるストーリー以上の驚きは本編には存在しないし、ギャグも各プロットに分散されているので、予告編で見て大笑いしたシーンも本編では分かりやすすぎて笑えなかった。

少年時代はゲームマニアとして活躍していた主人公だが、大人になってからはその才能を持て余すだけの無為な日々を送っている。そこへ襲ってきたのは自分がこれまで無数に退治してきたゲームのキャラたち。世界の終わりと自分の行動が密接に関わる状況で、日常では誰からも評価されない彼の「オタク」精神が世界を救う。この主人公がアダム・サンドラーで、過去の栄光と不遇な今という対比はサンドラー作品では必ず出てくる設定だが、本作では俳優アダム・サンドラーの現在の状況が重ねられている。コメディアンとして大活躍するも、現在はイマイチぱっとしない。そんな彼が『ピクセル』の主人公とは違い過去の栄光を取り戻すことはできそうにない。少なくとも本作ではそれは達成できる見込みはない。

また宇宙人が地球を侵略する内容の映画でありながら、「世界の終わり」感が全く表現されていなかったこともダメだ。「ゲームキャラに襲われる」世界の混乱がまったく抜け落ちている。「ゲームキャラが地球を襲う」というコメディの設定だから真面目に描く必要がないという反論もあるだろうが、少なくとも物語世界では圧倒的な存在によって地球は脅されているのだ。それがもたらす絶望感の演出がなければ、勝利の高揚感も生まれない。ただギャグで笑って、それだけで終わりなのだ。

本当は設定が似ている『ギャラクシー・クエスト』との比較もしたいところだが時間の無駄だと思うのでやめる。足元にも及ばない。劇中にアメリカ大統領が敵退治は「ナード(オタク)に全て任せろ!」と命令するシーンでも、そこまでにナード/オタクの特性が全く描かれていないから全然燃えない。『ギャラクシー・クエスト』のラストのように「オタクであることの切実さ」によって世界が救われるのではなく、「ゲーマーの技術」によって救われる。もちろんゲーマーの技術とオタクの精神は無関係ではないことはわかるが、「原因」と「結果」ほどに大きな違いがある。

とにかくがっかりした。期待しただけに残念。色々と盛り込みすぎた結果何も残らないというお馴染みの結果になってしまった。それでも『ギャラガ』、『センチピード』、『アルカノイド』、『フロッガー』、『Qバート』などのアーケードゲームに没頭した経験を持つおじさんたちは懐かしさのおかげで楽しめるでしょう。でもゲームセンターの圧倒的開放感を知らない世代にとってはこれはもう拷問かもしれません。おじさんたちがおじさんたちの青春時代を自画自賛するような内容。

この映画を見ても「オタクに任せろ!」という気分には一ミリもならない。

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ということで『ピクセル』のレビューでした。個人的にはアダム・サンドラーのキャリア以上に監督のクリス・コロンバスが心配になる一作。彼の感性が落ちたのか、それとも時代と合わなくなったのか。後者の感が強いです。彼が得意とした家族まとめて劇場に連れ込むようなスタイルの作品は今は難しいのでしょう。しかし時代を理由にしても何も残らない映画でした。間違いなくこの夏の大作映画のなかでは最低の部類に入る作品です。『トゥモローワールド』や『ジュラシック・ワールド』よりもずっと酷かったです。それでも日本公開は2015年9月12日ですので、楽しみにしておられる方は 是非劇場で。

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2 件のコメント

  • こんにちは。いつも楽しく拝見しています。今日、この映画見てきました。

    感想は

    >> 劇中にアメリカ大統領が敵退治は「ナード(オタク)に全て任せろ!」と命令するシーンでも、
    >> そこまでにナード/オタクの特性が全く描かれていないから全然燃えない。

    全くこれに同感です。とにかく主人公二人に感情移入できない。脚本全般から、オタクってこんなも
    んでしょ?というオタク軽視が感じられて、なんか軽くムカつきました。つか、あれだったら高橋名人
    呼んでくりゃいいじゃん。世界中にいっぱいいますよ、あれくらいのレベルのゲーマー。

    あと戦うシーンも、「エンダーのゲーム」とか「サイコパス」みたいな感じかと思いきや、フツーに
    レールガンみたいなので撃ち落すだけ。なんで海兵隊にゲーム訓練させたんだろう……。
    コメディだから許されるのでしょうが、あんなに大統領が馬鹿で、シリーウォーク(?)するくらい
    芸達者で、歴代映画史上のアメリカ大統領でも有数の馬鹿なんじゃないかとか。DARPAの会議にまで
    民間人がすんなり入って来られるとか、息子が誘拐されてるのにお母さんがピクセル一味のマスコット
    キャラとフツーに話してるとか、細部の粗が目立ちました。

    「ギャラクシー・クエスト」は、最後、無名なオタクたちが世界を救うところに
    物凄い感動があったのですが、この映画からは「オタクになりきれてない中途半端なオッサン」が
    そんなに強くもないゲームキャラたちを撃退するという中途半端なメッセージしか読み取れず。

    期待していた作品だけに残念です。

    もう一個、オタク的に言うと、パックマンバトルは中盤のクライマックスなんだから、もっと
    パックマンの要素を入れて欲しいなぁと。例えばサクランボ出すとか、赤・青・黄の車で追跡の
    仕方が違うとか。「おー、分かってるじゃん」みたいな要素が少なかったです。
    ディグダグのモンスター出すなら火を噴かせるべきだ、とか、少なくとも地中から出てきて
    欲しいよね、とか。ドンキーコングの息子誘拐は、ギャラガレーザー使わないで、息子を
    抱えたまま自由の女神によじ登る、くらいのことやってよね、とか。

    マックスヘッドルームやホール&オーツ、TFFなど、80年代に青春を送った身と
    しては懐かしいアイテムが一杯出てきて、それはそれで楽しめましたが。
    あと一瞬、ラストオブアスが出てきてたのは好きなゲームなのでニヤリとしました。

    一番楽しめたのはエンドロールかも(笑)。

    • 期待していただけに残念でしたよね。
      予告編では笑った部分が本編ではわざとらしくて全然笑えませんでした。
      アーケードゲームを知らない世代にとっては全く意味不明だったんじゃないかと思いますよね。
      小ネタで笑える世代だけでまだましだったのかもしれません。
      アダム・サンドラーは隠れて好きな俳優なんですが、もうそろそろきついです。

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