【日本未公開映画】『ペイン&ゲイン/Pain&Gain』レビュー

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 日本では公開未定ですがアメリカでは初登場一位にもなった、実話ベースのクライム・コメディー映画『ペイン&ゲイン』のレビューです。マイケル・ベイ監督、マーク・ウォールバーグ、ドゥエイン・ジョンソン共演となれば、火薬たんまりの能天気アクション映画だと思われがちですが、これが実話をベースにした筋肉バカ・シリアス・コメディー作品で、意外な食い合わせながらも面白かったです。

ストーリー

 マイアミのフィットネスジムに勤めるダニエル・ルーゴ(マーク・ウォールバーグ)は、金銭欲の強い前科持ちのボディービルダー。ある日、中国人の資産家が開催した自己啓発セミナーの参加したをきっかけに、ジムでのクライアントである麻薬密輸で成り上がった資産家を誘拐して財産を奪うことを思いつく。そしてその計画に、ステロイド中毒でインポテンツになったため治療費を必要としていた同僚のエイドリアンと、前科者でキリストへの信仰に傾倒するドイル(ドゥエイン・ジョンソン)を誘い込み、実行にうつす。
 何とか金持ちのカーショウを誘拐するも、取り柄は筋肉だけのバカ三人。文殊の知恵ともいかずに、なんとか財産を奪おうとするも、なかなか上手くいかずに拷問だけが激しくなる。それでもダニエルが勤めるジムのオーナーを公証人にしてカーショウの家も車も会社も強奪することに成功する。
 が、頭の足りない3人は、カーショウにあっさりと身元がばれていたため彼を殺そうとするのだが、詰めが甘くて結局は彼は生きたまま病院に運ばれる。それでも品行に問題のあったカーショウは、捜索される訳でもなく、病院で警察に事の次第を伝えても、麻薬を巡る内輪もめだろうと信じてもらえない。
 一方、大金を手にした3人はそれぞれが優雅な生活を送るも、ドイルはコカインにハマって有り金のすべてを使い込み、挙げ句の果てには強盗未遂事件をおこして、ダニエルのもとに逃げ込む始末。
 もはや普通の生活に戻れなくなっていた3人は、同じ手口で新しい獲物に近づく。同じとき、カーショウの助けに耳を貸した私立探偵がダニエルたちの素行を調べはじめていた。
 筋肉バカの3人は、自分たちが泥沼にはまり込んでいることにさえ気づかずに、新たな事件を引き越す。

レビュー

 舞台はマイアミで、オープンカーが走り回り、ビキニのブロンドが登場して、主人公はマッチョ。これはやはりマイケル・ベイ監督作品である。しかし同時に今までのマイケル・ベイ作品とは違うのは、これが1994年に実際に起こった事件であることだ。事実は小説より奇なることにはもう慣れっこのはずなのに、本作は少し違った意味で驚かされる。とにかくバカなのだ。マーク・ウォールバーグもドゥエイン・ジョンソンも普段から決して頭が良さそうには見えないが、この映画では事実としての設定そのものがすでにバカで、事件の内容や本作の後半部分はかなりシリアスな状況なのにも関わらず、そんなものさえ全て吹き飛ばすほどにバカなのだ。
 もちろん今までのマイケル・ベイの映画の主人公は基本的にバカばかりかもしれない。しかし本作ではそのバカの質が全然違う。今までのマイケル・ベイが描いてきたバカとは、ある意味アメリカの正義や自由を体現するフィクションとしてのバカだった。悪気はないから、ベン・アフレックだって許されるし、隙だらけのロボット隊長プライムだって優しい気持ちで眺めていられる。しかし本作には一人の例外を除いてバカしか出てこない。その唯一の例外も物語の後半から登場するために、最初の一時間はひたすら全てがバカなのだ。しかもそれが事実をベースにしているためバカとしての実存的説得力がしっかりと備わっている。ではフィクションではなくマイケル・ベイというフィルターを通して実存としてのバカを眺めたとき、我々はそこに何を見るのかと言えば、それは笑いなのだ。人が現実に殺されてバラバラにされようが、滑稽なのだ。
 もちろんそういった姿勢を不謹慎だと批判することは簡単だが、映画としての脚色は加えられているとはいえ、実際に起こった事件も同様に滑稽であることには違いない。事実、この実際の事件を担当した刑事は、これが映画化されることはないだろうと語っている。理由はあまりに馬鹿げているから。
 凡庸が悪を生み出すとするのなら、バカは一体何をもたらすのか。 
 ひたすらトレーニングして体を大きくすること。高級車に憧れること。胸の大きな頭の弱い女をはべらかすこと。そしてそれらをアメリカン・ドリームという言葉に置き換えて強く欲すること。星条旗のもとで正当化される欲望全てが滑稽なのだろうか。しかしそれでもマイケル・ベイはバカの欲望を否定しても、欲望そのものを否定はしない。映画の最後、唯一の良心がそれを物語っている。

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 ということで意外にも見応えのある映画でした。とはいってもやはりマイケル・ベイの映画ですから車はちゃんと爆発しますのでご安心を。日本公開は長く未定ですので、おそらくDVDスルーということになるのでしょうが、47RONINよりはずっと面白いですので、オススメです。

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