【映画】1985年公開『マッドマックス/サンダードーム』レビュー

30年ぶりとなるシリーズ最新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の公開を記念して、過去作をレビューしてみることにします。第3弾は1985年公開『マッドマックス/サンダーロード』です。初めてアメリカ資本が入った本作は、カーアクションという『マッドマックス』の最高の売りを放棄し、代わりに「2人入って、出るのは1人」というサバイバル展開とティナ・ターナーを導入。シリーズはここから30年の眠りに入るのだった。

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『マッドマックス/サンダードーム』

1985年公開作品

監督:ジョージ・ミラー、ジョージ・オギルヴィー

脚本:テリー・ヘイズ、ジョージ・ミラー

出演:メル・ギブソン、ティナ・ターナー、アンジェロ・ロシットなど

音楽:モーリス・ジャール

撮影:ディーン・セムラー

ストーリー

放射能に汚染された砂漠をラクダととも旅していたマックス・ロカタンスキー(メル・ギブソン)だったが、その途中に飛行機を操る親子に急襲されてしまい、ラクダなどすべての財産を奪われてしまう。

それでも何とか徒歩で砂漠の交易都市、「バータータウン」にたどり着いたマックスは、そこですでに売り物になっている自分のラクダを発見する。犯人を捕まえようと町の内部に入ろうとするも、そこは物々交換で成り立っている町。何も持たないマックスは門前払いを喰ってしまう。しかし力ずくでも犯人を探そうとするマックスは、町の支配者であるアウンティ(ティナ・ターナー)との交換条件で、町のエネルギーを牛耳る二人組のマスター・ブラスターを「バータータウン」の掟に沿った形で殺害するように仕向けられる。

そしてマックスは首尾よくマスター・ブラスターの肉体を担当するブラスターを、「サンダードーム」というコロシアムに誘い出すことに成功する。「二人入って、出られるのは一人」という掟を持つ「サンダードーム」で怪人ブラスターと命を賭けた決闘に臨むマックスだったが、そこには彼には知らされていない秘密があった。

レビュー

シリーズ3作目となる『マッドマックス/サンダードーム』ではカーアクションが最大の見せ場ではない。マックスの代名詞とも言えるインターセプターも登場しない。そしてそれ以外にも色々と残念に思うことが多々ある作品である。これまでの2作のヒットから初めてハリウッドの資本が投下されて作られた本作は、制作費の強化が必ずしも作品の質と比例しないことを示す結果となった。そこには過去作にあった狂気はもうない。その代わりに妙なセンチメンタルが出現している。言ってしまえば、見てくれも育ちも悪いが魅力的だったオーストラリア人が、アメリカ風の洗練とやらにほだされた結果、できもしない壮大な物語を語ろうとしてしまったのだ。

はっきり言ってこれが「マッドマックス/狂ったマックス」である必要はどこにもない。というかマックスは全然狂っていない。砂漠の太陽に頭をやられたのか、普通のいい奴になっている。妻子を殺され全てを呪ったはずのマックスはどこへ行ったのか、ここでは子供に優しくすぐに情に流されてしまう。こんなのは俺たちのマックスじゃない。本作では物語の構成にも欠陥を抱えているが、それ以上にやはり主人公に感情移入ができなくなってしまったことが最大の問題だ。一応はマックスが命の恩人であるはずの女の子をぶん殴ったりするが、それも優しさの裏返しというDV男の典型に成り下がっている。これじゃあダメだ。

問題点を挙げればキリがないが、それでも相変わらずキャラクターや設定のルックスは素晴らしいし、物語の下敷きになっているモチーフにも「おっ」と思わせるところはある。特に物語の中盤で突然登場する砂漠の棄民たちの描かれ方は、ヤコペッティの『世界残虐物語』で語られる「カーゴ・カルト」そのままで、物語の終わりを「カーゴ・カルト」の救済として繋げたことは悪くない。「カーゴ・カルト」とは戦争などを理由に突然上空を飛び回る飛行機を見た未開人が、それを原始宗教に吸収して、いつかその飛行機がもたらす積荷(カーゴ)によって富の提供や救済が行われることを願い待つ信仰のこと。

「マッドマックス」と「モンド映画」の邂逅となれば面白くないわけないのだが、それを上品な感動話に着地しようとしたことがそもそもの間違い。「マッドマックス」とは本来そういったハリウッド的な予定調和とは全く無縁だったことが最大の魅力だったのに、それを放棄してしまっている。そして過去2作にあった物語の締め方のかっこよさも本作では全然ない。ティナ・ターナーの立ち位置を筆頭に、悪役のキャラクターが不鮮明で物語に完全に取り残されている。

「サンダードーム」がただのアトラクションにしか見えなかったり、バスター・キートン風のコメディテイストがあったり、ブレまくりの本作。これまでのシリーズに漂っていた「ガソリン」と「狂気」の代わりに「豚の糞」と「親心」を持ち出してしまっては、続編だって作れない。シリーズで最大の制作費を投じておきながら、シリーズで最低作となってしまっており、やはり映画には金以上に必要なものがあることを実感できる作品。とにかく残念の一言なのだ。

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ということで『マッドマックス/サンダードーム』のレビューでした。今になって『マッドマックス』が半笑いで語られるようになってしまった戦犯とも言える作品で、確かに冷やかし半分で見るには楽しめるのですが、それは『マッドマックス』の見方とは違うはずです。ストーリーが完全に子供向けなアドベンチャー 映画になっており、終盤はほとんど『グーニーズ』です。そういう映画が好きな人には悪くないのかもしれませんが、もう『マッドマックス』ではなくなっています。30年ぶりの最新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではこの作品を反面教師にして過激にぶっ飛んでもらいたいものです。

こういう『マッドマックス』もあったんだ、程度のスタンスで鑑賞することをお勧めします。

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