映画『ターザン REBORN』レビュー

『ハリー・ポッター』シリーズのデヴィッド・イェーツ監督作『ターザン REBORN』のレビューです。ジャングル育ちの英国紳士ターザンが、妻ジェーンの危機に眠らせていた野生を解放する。エドガー・ライス・バローズの原作小説のエッセンスである文明批判とロマン主義を盛り込んだ新しいターザンの誕生。

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『ターザン REBORN』

全米公開2016年7月1日/日本公開2016年7月30日/アクション/110分

監督:デヴィッド・イェーツ

脚本:アダム・コザッド、クレイグ・ブリュワー

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、マーゴット・ロビー、サミュエル・L ・ジャクソン、クリストフ・ヴォルツ

レビュー

まず最初に、当たり前のことだが、『ターザン』と『ジャングル・ブック』は全然違う作品だ。同時期に実写映画が公開されることで混乱するかもしれないが、『ジャングル・ブック』は英国の作家でノーベル文学賞も受賞したラドヤード・キップリングの短編小説を原作とし、その主人公は狼に育てられた少年モーグリ。一方で本作『ターザン REBORN』はアメリカのSF作家エドガー・ライス・バローズの冒険小説『ターザン』シリーズの映画化であり、主人公はジャングル育ちの英国貴族ターザン。

エドガー・ライス・バローズが『ターザン』を執筆する際に『ジャングル・ブック』を参考にしたと言われており、時系列としては『ジャングル・ブック』の後に『ターザン』が誕生する。

この二つの「野生児」関連の作品がその内容や設定に関して混同されがちなのは、原作のせいというより映像化のせいと言えるかもしれない。キッピリングの『ジャングル・ブック』はジャングルや海の動物たちを主人公とした連作小説で、狼に育てられた少年のエピソードはそのひとつでしかない。それを1967年にディズニーはアニメ映画化し、虎に追われた少年モーグリが森の仲間たちと仲良く暮らしながら冒険するという本来は『ジャングル・ブック』の一つの要素が拡大されて広がった。

そして『ターザン』の原作は20世紀初頭に書かれた大衆小説シリーズで、英国貴族の息子が数奇な運命でアフリカの猿に育てられ、やがて運命の女性ジェーンと出会うことで自分の隠された出自について知るというもの。シリーズごとに内容は変わるものの、最も広く読まれている『類人猿ターザン』はただの冒険小説というわけではなく、ターザンの苦悩が色濃く滲む「暗い」成長物語。ジャングルで威勢良く動物たちと悪党をやっつける陽性ヒーローとしてのターザン像は後の映像化作品で作られたもので、原作のトーンとは真逆になっている。

前置きが長くなったが、陰鬱な『ハリー・ポッター』を描いたデヴィッド・イェーツ監督作『ターザン REBORN』は、邦題の是非はともかくとして、これまでの陽性ヒーロー像をひっくり返すという意味では「生まれ変わった」ターザンの苦悩と成長を描いた原作に通じるターザン映画となっていた。

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出典:Indie Wire

本作は19世紀終わりの植民地主義が息づく世界を舞台にしている。列強によるアフリカ分割を決めたベルリン会議によってコンゴはベルギーと英国によって分割されるが、ベルギーはコンゴの資源開発を進め、探検家で象牙商人でもあったレオン・ロム(クリストフ・ヴォルツ)をジャングルの奥地に送り、ダイヤモンドやオパールの発掘を目指す。

レオン・ロムの一行は豊富な鉱山を発見するも地元部族に襲われてしまう。ジャングルの奥地に住むその部族は、レオン・ロムが鉱山を得る代わりに、過去に因縁のある一人の男を差し出すよう交換条件を出す。その男の名前はジョン・クレイトン3世、別名ターザン。

数奇な運命に翻弄されジャングルでゴリラに育てられた経験を持つターザンも今では故郷のイギリスに戻り、貴族だった亡き父の跡を継いで妻ジェーンと何不自由のない暮らしを営んでいた。

そこにアメリカからの使者としてジョージ・ワシントン・ウィリアムズ(サミュエル・L・ジャクソン)がやってくる。ベルギーがコンゴで違法な奴隷貿易に関わっているという噂の真相を調査すべく、ウィリアムズはコンゴのジャングルを知り尽くしたターザンに同行を願う。そしてターザンをジャングルで発見し運命の恋に落ちた妻ジェーンもコンゴに赴くことになるが、それは全てレオン・ロムの策略だった。

植民地主義の総括という面では色々と問題のある作品なのは間違いないだろうが、本作の悪役でクリストフ・ヴォルツ演じるレオン・ロム大尉やサミュエル・L・ジャクソン演じるジョージ・ワシントン・ウィリアムズなど歴史上の人物を登場させ、外側は史実に沿っている以上、内容が英国に優しすぎるという批判は可能でも、過去に存在した植民地問題を現在の視点からどうこう言っても仕方ないだろう。

それでも、「とにかく暗いデヴィッド・イェーツ」らしく、植民地主義の上に成り立つ当時の社会を陰鬱な視線で描きつつ、ターザンが故郷ジャングルとスノッブな英国の間で揺れるアイデンティティ・クライシスも、最終的には文明批判として回収される手際は見事だった。

英国紳士としてジャングルで育った過去を忘れようと努力してきたターザンが、妻ジェーンの危機を前に抑え込んでいた野生の叫びを爆発させるという内容で、コンゴの奥地に連行されるジェーンを追うターザン(とサミュエル兄貴)のアクション・アドベンチャーと、ジャングルでの思い出とジェーンとの運命的な出会いの回想シーンが交互に挿入される。そして回想シーンを通して、徐々にターザンは野生に目覚めていき、アクション・アドベンチャーとしての回転数もそれに比例して上がっていく。

アクションに関してはターザンを演じたアレクサンダー・スカルスガルドの鍛え抜かれた肉体や、ゴリラとのガチンコ対決、そしてラストでのゴリラたちによるサバンナ追い込み漁などスケールの大きな展開が見どころで、陰鬱に溜め込まれたフラストレーションが一気に爆発され気持ちい。アフリカの生態分布を無視しているとか冷静なツッコミは野暮ですよ。そして久しぶりにサミュエル・L・ジャクソンがめちゃくちゃカッコイイ役で出演している。能天気なアメリカ人でありながらも過去に後悔を抱えた2丁拳銃使いの義理深い男は、物語の暗さにいい意味での変化を加えている。

そしてターザン役のアレクサンダー・スカルスガルドもその肉体以上に揺れ動く苦悩を野生的に演じていて素晴らしかった。そもそも原作『類人猿ターザン』はバローズの貴族への憧れと相まり、ロマン主義のひとつの形である「高貴なる野蛮人」という考えが色濃く滲んでいたが、本作で描かれるターザンの野生とは、ジャングルを野蛮と決めつけるヨーロッパの植民地主義的概念の野蛮性を鋭く指摘する役割も担っている。

2時間を切る大作映画としてはアクションあり、ロマンスあり、動物ありと申し分なく、細部も丁寧に仕上がっている。しかも大スクリーンでこそ映える作品でもあり、この夏の一本としておすすめできるクオリティ。

『ターザン REBORN』:

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ターザン REBORN
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4
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