映画レビュー|『ラスト・ナイツ』-紀里谷さん、まずはあんたが切腹しろ

LastKnight

『CASSHERN/キャシャーン』の紀里谷和明監督ハリウッドデビュー作『Last Knights』のレビューです。忠臣蔵を中世に置き換え、ハリウッド一線級の俳優クライヴ・オーウェンやモーガン・フリーマンを迎えて映像化。日本からは伊原剛志も参戦。誇り高き戦士たちが君主の名誉のため、腐敗した支配者に立ち向かうアクションドラマ。日本公開は2015年秋。

『ラスト・ナイツ/LAST KNIGHTS』

全米公開2015年4月3日/日本公開2015年11月/アメリカ映画/115分

監督:紀里谷和明

脚本:マイケル・コニヴェス、ドーブ・ススマン

出演:クライブ・オーウェン、モーガン・フリーマン、アクセル・へニー、クリフ・カーティス、伊原剛志、他

あらすじ(ネタバレなし)

バルトーク(モーガン・フリーマン)は大帝国に属する土地を収める偉大な王。ライデン(クライブ・オーウェン)を団長とするバルトークの騎士たちは様々な人種で構成されながらも、皆がバルトークへの絶対の忠義を誓っていた。

しかしバルトークが帝国の大臣であるガゼ・モットの腐敗した政治姿勢に異を唱えたことをきっかけにした諍いの延長で、バルトークは自らを守るためにガゼ・モットに剣を抜いてしまう。その事実はすぐさま皇帝の耳にも届き、バルトークは自身の家臣ライデンの手で断首されてしまう。

バルトークの領土は奪われ騎士達も解散。そして君主を守れなかったライデンは酒と女に溺れ、やがては忠誠の証である剣まで手放してしまう。

バルトークの死後、ライデンらの復讐に怯えていたガゼ・モットだが、事件から1年以上たち、落ちぶれたライデンを見るにやっと安心することができた。

剣を失い、酒に溺れ足はもたつき、自分も見失ったかに思えたライデンだったが、彼の魂の火は一時も消えてはいなかった。

レビュー

お前こそ責任とって腹を切れ!:

監督デビュー作『CASSHERN/キャシャーン』で何となくビジュアルがカッコいい風な見掛け倒し映画を撮った紀里谷和明だが、第2作目『GOEMON/ゴエモン』では前作の失敗をどれほど修正できたのか観ていないので分からないものの、第3作目でハリウッドデビュー作となった『ラスト・ナイツ』を見る限り、監督しての必要最低限の能力が備わっていないことだけはよく分かった。少なくとも、監督として脚本をコントロールした上で、新しい物語を提示する意欲を持っていないことだけは確かだろう。

物語は忠臣蔵の四十七士の伝説をベースにし、舞台を架空の中世風世界に移している。様々な人種が暮らす国をまとめる君主がモーガン・フリーマンで、見るからに聖人君子という感じ。そして彼に忠誠を誓う騎士団長を演じるのがクライヴ・オーウェン。帝国の無慈悲な大臣に押し付けられた無理難題に怒ったモーガン・フリーマンがご乱心なされ、結果、家臣のクライヴ・オーウェンの手で首をはねられることに。国は解体され、騎士達は職業を変えて細々と暮らすも、実は君主の名誉を晴らす時を我慢強く待ち続けていた、という話。

日本人にはお馴染みどころか飽き飽きするようなストーリーで、しかも最近はキアヌ・リーブス主演の『47 RONIN』というトンデモ映画もあったので、ハリウッドで忠臣蔵と言われても新鮮味はない。

本作は観客のイメージを1ミリでも超えることはないし、裏切ることもない。忠臣蔵のダイジェストのようで、舞台を中世騎士の時代に置き換えただけ。魔女も出ないし幽霊戦士も出てこない。そういう意味では正月の昼間にテレ東で放映される分にはいいかもしれないが、監督の裏の顔でもある「写真家」としての手癖の悪さからか、映像のトーンはひたすら暗く、これが茶の間で流されてもお年寄りにはほとんど映像が潰れて見えるだろう。お年寄りへの配慮がない忠臣蔵なんて、中身がハイチュウの饅頭みたいなもんで、惨劇しか生まない。結果、上映時間の115分が途方もなく長く感じてしまう。というか最初の15分と最後の45分だけで物語は成立する。

鑑賞し終わって最も疑問に思ったのは、監督はなぜハリウッドでこれを撮ろうと思ったのかということ。CGの俯瞰映像と、セット感丸出しの個人視点映像で構成されており、最も予算と技術が必要とされるその中間ショットはなく、これなら別に日本映画でもいいだろう。加えて、日本映画の悪いところはしっかりと輸入してくれている。

まずは物語の冒頭から説明セリフの連続。大丈夫だよ、これは映画で観客はザッピングで『NHKニュース』に変えたりできないから、世界観の説明を最初から全部やる必要はないのだよ、と誰も言ってはくれなかったのか。「分かりやすさこそが正義」という白痴化は日本だけのことなのだ。しかもモーガン・フリーマンとクライヴ・オーウェンの二人芝居の場面でそれをやられるので、いきなりお先真っ暗である。

ドラマ部分がだめならアクションは、というとこれもダメ。撮影前に太秦に挨拶くらい行くべきだった。チャンバラシーンではひたすら画面が動き、暗い映像と相まって誰が誰だか分からない。しかもちゃんと剣と剣がぶつかり合うところも映しておらず、あーあーあー、と叫んでるだけなのだ。思わず見ているこっちが、あーあーあー、こりゃダメだ、と言いたくなる。

一応は新展開として、「忠臣蔵・ミーツ・トロイア戦争(トロイの木馬)」というプロットを用意しているのだが、それまでの時点で観客は席を立っているか、寝ているか、半笑いでいるか、のいずれかなのであまり効果はない。そして実は一番忠臣蔵と違う展開になるラスト。アレでいいのか、ダメだろ。

もう最初から最後まで褒められるシーンは皆無。放っておいても立派になってしまうモーガン・フリーマンが本作ではバカな爺さんにしか見えないことからも、ある意味、紀里谷和明は演出家としては稀有な才能を持っているのかもしれないが、それは死ぬまで隠しておくべきだ。日本の映画ファンは知っているのかもしれないが、世界には隠しておくべきだったのだ。

もう映画を撮るなとは言わない。でもその前に過去の過ちの総括はしよう。そう、紀里谷さん、腹を切るのだ!

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ということで紀里谷和明監督ハリウッドデビュー作『ラスト・ナイツ』のレビューでした。最近、劇場でもDVDでもいい映画ばかりが続いていたので、かなり苦しかったです。正直途中から携帯いじってました。すみません。『CASSHERN/キャシャーン』のようなコントラストを弄って逃げるCG映像はさすがに本作にはありませんが、どちらにせよ中身はないです。はい、つまらないです。以上。

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2 件のコメント

  • 最高の批評w
    カンペキな「それな」w
    散々日本映画バカにした挙句、出した答えが「ハリウッド」という海外の権威にすがる事だったとはお粗末さま。
    ジョニー・デップに憧れてるの丸出しの変なメガネとヒゲは欧米コンプレックスの証w
    モーガン・フリーマン等のベテラン実力派をとりあえず出す事で作品の格上げを狙うという、いかにも商業主義的であさましいやり方は日本では電通がよくやる手法。
    日本映画をダメにしてるクズ企業と同じ事をてめーがやってどうする三流監督w
    批評家を批判してたけど、この監督本人がまともに日本映画撮った事ないのに日本映画を批判するという批評家肌の屁理屈屋。
    外国人になりたいのか知らんが、興行収入ではアニメに負けてますよw

  • こちらのNetflixのDVDサービスを利用して、興味本位で見てみました。
    結果、全くもって同意。こんなに面白くない映画を見たのって、久しぶりかも。
    30分も見ていたら苦痛で苦痛で。ていうか、30分も見れた自分を
    ほめてやりたい。もちろん、こちらの人達のレビューも酷評だらけ。
    この監督、日本映画を批判していたの? そんな人が作った映画が、
    このレベルとは。。

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