【映画】ダニエル・ラドクリフ主演作『ホーンズ 容疑者と告白の角』レビュー

ホラーの巨匠スティーブン・キングの息子ジョー・ヒルの小説を主演ダニエル・ラドクリフで映画化した『ホーンズ 容疑者と告白の角』のレビューです。恋人を殺した罪を着せられた男が悪魔となって真犯人をあぶり出す新感覚ホラー。ブラック・コメディーであり、サスペンスでもあり、ホラーでもあって、その実、純愛映画でもあるという不思議な作品。監督は『ピラニア3D』のアレクサンドル・アジャ。日本公開は2015年5月9日。

Horns Main Poster final

■ストーリー、前半■ ※ネタバレなし

ある小さな町に暮らすイグ(ダニエル・ラドクリフ)は幸せだった過去にすがるように酒浸りを日々を送っていた。彼の家の周りにはイグを悪魔だと非難するピケを張った地域住民に囲まれている。イグには終生の愛を誓った女性メリンという彼女がいたが、ある夜、彼女はレイプされた後に撲殺されてしまい、イグにその嫌疑の目が向けられていたのだった。

行き場の感情の中酒浸りとなったイグは、メリン殺しとして扱われることに強い怒りを感じるようになる。そして、ある夜、メリン殺害の現場で、イグは怒りのままに、置かれていたマリア像を踏み壊し、追悼のロウソクに小便をかける。

翌日、イグは額に違和感を覚えて鏡を見ると、小さな角が生えてきていた。しかしそれを見ても他の人はさほど驚くこともなかった。しかし皆の様子がおかしい。イグは病院に行くも、看護師も医者も大したことではないという感じで対応するも、会う人すべてがイグにこれまでに見せたことないような本心をさらけ出している。病院で騒ぐ子供に対し、ヒステリックに怒る看護師。あけすけに自身の性欲を表明する医師。そしてこれまでイグの見方として振舞っていた母親はイグに二度と会いに来るなと言ったり、父に関しては実はメリンのことを愛していたなどと言い出す。

悪魔となったイグの前では人々はその胸の内を隠すことはできなくなっていた。そしてイグは、一体誰が自分を犯人に仕立て上げたのか、そして一体誰がメリンを殺したのか、すべての真実を暴き出すために、この悪魔の力を利用する。

■レビュー■

本作はスティーブン・キングの息子ジョー・ヒルの小説の映画化作品で、主演は『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフ。愛する彼女を殺した嫌疑を向けられた男が、ある日、自身の頭から角が生えていることに気がつき、そのことで悪魔の力を得た彼が、他人の心を自由に読み取りながら真犯人をあぶり出すという物語。一見するとホラー映画のような面持ちだが、あらゆるジャンルを飛び越えようとする野心によって作られた、ジャンル分け不能の作品に仕上がっていた。

ある日、悪魔の角が頭から生えることになるものの、周りの人々はそれを見ても大して驚くわけでもないが、それ以後の他人の態度は様変わりするホラー設定。しかしその角の生えた男を前にすると、いわゆる社会的な倫理観というものが取っ払われ、本心がだだ漏れになってしまうという状況はどう見ても、ブラック・コメディーの設定だ。

本作はキリスト教的世界観を下敷きにしたドグマ映画であるが、それはキリスト教的善悪観の反転を狙った、グノーシス主義的な映画でもある。悪魔と天使、天国と地獄、裏切りと信頼、愛と別離、本来は意味的に対立するそれぞれの観念が、価値の転倒を繰り返すことによって混じり合っていく。

その象徴が蛇である。本作では訳ありな場面に必ずこの蛇が登場する。蛇とはキリスト教的にはアダムを唆し神への裏切りを仕向けた狡猾な存在として扱われるが、これが知恵を讃えるグノーシス主義的解釈では、天国という神によって無知を利用した隷属関係を強いられる地獄から知恵によって人類を救済した存在として、賢者の象徴として考えられる。蛇が持つ<キリスト教的>悪と<グノーシス的>善の価値の転倒は、本作でもそのまま使用されており、それはすべての対立事項が反転する本作の象徴でもある。

こういった設定は作品の作り方としては非常に面白いのだが、同時に映画としては弱点にもなる。物語に登場するすべての存在の印象がやがては逆転していくということは、サスペンス映画としては比較的早い段階から観客は真犯人の目星がついてしまうのだ。しかし、それでも本作はサスペンス風に物語を進行させておきながら、最後にはラブ・ストーリーであり、『スタンド・バイ・ミー』へのオマージュとなるなど、ここでも観客の印象を反転させているので、それもすべて意図したものだったのかしれない。

映画の見方が問われる作品なので、評価はかなり真っ二つに割れているが、こういった野心的な作品というのはどうしても嫌いになれない。そしてダニエル・ラドクリフを筆頭に人間の裏表を演じた俳優陣も素晴らしかったです。

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※次のページにストーリー後半のネタバレあり※

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