【映画】『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』レビュー

スコットランド出身のロックバンド「ベル・アンド・セバスチャン」のフロントマン、スチュアート・マードックが2009年に発表したアルバム『God Help The Girl』の映画版でもあり、マードック本人が脚本、監督を担当したポップ・ミュージカル映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のレビューです。サンダンス映画祭審査委員特別賞受賞作ということもあって、サンダンス風味たっぷりの映画です。設定上の問題点は多々ありますが、それら違和感の全てがミュージカル仕立てによって上手く調整されている作品です。「ベルセバ」ファンは当然のこと、ファッションと音楽に関心のある若者にこそオススメできる、2女1男による最高にポップな青春映画。日本公開は2015年8月。

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■ストーリー■ ※ネタバレなし

舞台はスコットランドのグラスゴー。

拒食症を患い入院中のイブは、夜、みんなが寝静まった病棟でひとりピアノに向かい作曲をしながら、いつかミュージシャンになることを夢見ている。

ある日、彼女は病院を抜け出しグラスゴーの街で行われたライブに向かう。そしてその舞台にはアコースティック・ギターを抱えた少年ジェームズが立っていたが、彼はライブ中に折り合いの悪いドラムと舞台上でけんか騒ぎをおこしてしまう。

何とかライブに参加したイブだったが、意識が朦朧としてしまいライブ会場の外で力尽きてしまう。そこを通りかかったジェームズは彼女を自宅に連れて帰る。翌朝、イブはジェームズにミュージシャンになる夢を語ると、彼は自分がギターを教える金持ちの少女キャスをイブに紹介。音楽への夢を持つ3人はすぐに意気投合し、バンドを組むことになる。

ジェームズの家に居候をはじめたイブは、ある日、自分の曲を詰めたテープを持ってラジオ局を尋ねると、ちょうどそこに人気バンドでボーカルをしていたアントンが現れる。イブはアントンにラジオ局のプロデューサーにテープを渡してもらうように言付け、そこからイブとアントンは親しくなる。

拒食症を患いながらもミュージシャンになる夢を持ち続けるイブは、ジェームズとキャスとともにバンドメンバーを募ることに。3人のそれぞれ性格の違う1男2女は、友情と恋愛という微妙な関係の中で、自分たちの音楽を奏ではじめる。

■レビュー■ ※ネタバレなし

本作にはストーリー上の見所というものはない。簡単に説明すれば、病気を抱えながらもいつか外の大きな世界に羽ばたくことを夢見ている少女が、気の置けない仲間と出会うことで様々な経験を積んでいき、やがては一人で新しい世界に向けて歩きはじめる、というもの。30分ほどの短編ドラマでも語り終えられてしまうような物語しかない。

しかし本作はミュージカル映画。劇中には散りばめられたポップなミュージカルシーンにこそ見所が詰まっている。

本作を監督、脚本するのはグラスゴー出身のバンド「ベル・アンド・セバスチャン」でフロントマンを務めるスチュアート・マードックで彼が2009年にリリースしたアルバムが元になっている。本物のポップ・ロック・ミュージシャンが監督しているだけにミュージカルシーンでの音楽の質は高い。そしてミュージカルシーンでは70年代風ノスタルジックなPV仕立てとなっており、映画としての評価は分かれるだろうが、とにかくポップでファッショナブルだ。

ミュージカル映画となれば『レ・ミゼラブル』のような仰々しいものを想像しがちだが、本作は至ってポップでその点の敷居の高さは一切ない。前述した本作が制作される過程に現れているように、一枚のコンセプト・アルバムのミュージック・ビデオという印象が強い。舞台演劇的ミュージカル映画の系譜は一切感じず、MTV世代によるポップス映画という趣だ。だからといって「ベルセバ」ファンのみを対象として訳ではないが、現在のYouTubeに代表されるようなミュージック・ビデオ文化に慣れ親しんだ世代を対象としていることは間違いない。

こういった経緯からも本作を映画としてどこまで評価できるかは微妙であるが、ファッション的音楽や音楽的ファッションに関心のある層には、間違いなく楽しめる作りになっていると思う。

そして主要キャラが1男2女という非ドリカム的であることも本作の新しいところ。よく2男1女による友情・恋愛物語とは女性側からの夢物語として解釈されることが多いが、本作の1男2女というものには男性側の夢物語要素がほとんどなく、このバランス具合が非常に心地よかった。それもこれも準主役クラスとして主役ではない女の子キャスを演じるハンナ・マリーのどこか抜けた雰囲気によるところが大きいと思う。とにかく頭一つ抜け出してキュートなのだ。

また本作には様々な突っ込みどころがある。まず主人公イブは拒食症を患っている設定だが、この点は劇中ではほとんど言及されない。主人公には精神的な問題を抱える女の子、という青春物語にありがちなフォーマットをただ踏襲しているだけで、それがほとんど活かされていない。また舞台はグラスゴーだが、独特なスコットランド訛りを誰も話さない。きっとアメリカなどのマーケットを意識してだと思うが、登場人物の誰もがストレートな英語を話すため、そこがスコットランドであることはほとんど分からない。ただこの点に関しては、本作では登場人物が携帯電話で話しながらもテープ文化が存在したり、70年代的風俗が当たり前に息づいているなど、あえて時代性を無視しようとする作りとなっているため、無国籍感を表現するのに有効だったと思う。

映画としては、ポップミュージック同様に消費的傾向が強い作品だと思うが、なんとも「オリーブ」的(古いかな)で都会的文化女子にはストレートど真ん中の作品だと思う。またポップ・ミュージカルシーンを目当てにだけしても十分に楽しめる作りにもなっている。こういう映画は単館上映もすれば、今のSNS効果によって意外にもヒットする可能性を秘めていると思う。

最後に本編での音楽が無料視聴できますので、是非聞いてみてください。オススメです。

※追記:本作は2015年8月に日本公開が決定しました。

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