【映画】マイケル・ファスベンダー主演『FRANK -フランク-』レビュー 

マイケル・ファスベンダーがハリボテの仮面を被ったミュージシャンを演じる映画『FRANK -フランク-』のレビューです。現代音楽に没頭するバンドを滑稽に描いた実話ベースのコメディ作品でありながら、最後にフランクが仮面を被り続けた理由を知らされる瞬間にただのコメディ映画ではなくなる、非常に不思議な映画でした。日本公開は2014年10月4日。

Frank movie poster michael fassbender

■ストーリー■ ※ネタバレなし

しがないサラリーマンを続けながらも音楽への情熱を捨てきれない青年ジョンは、暇があれば自室にこもり音楽製作に没頭する生活を送っている。しかしこれまで平坦な人生を歩んできた彼には、どうしても心揺さぶるような音楽を作ることが出来ず悶々とした日々を過ごしている。

ある日、ジョンは海岸で一人の男性が入水自殺を試みている現場に遭遇。救急車で運ばれていくその男は、その夜に街でライブを予定していたバンドのキーボード担当のバンドマンで、傍らにはマネージャーが彼を見守っていた。キーボードが突然に病院に運ばれたためライブ中止を余儀なくされるも、その場にいたジョンはそのマネージャーに自分はキーボードを演奏することができることをアピール。そしてその夜、ジョンはそのバンドの一員となる。

ライブ会場に向かったジョンはそこで初めてバンドの他のメンバーと顔を合わせる。フランス語以外を話そうとしないベース奏者に、愛想のない女性メンバー、そしてリーダーでボーカルである人物は紙を切り貼りしたハリボテの仮面を被っていた。その男の名はフランク。

その夜に初めてバンドの演奏を目の当たりにしたジョンは、フランクの容姿同様に強い衝撃を受ける。彼らが演奏していたのは、難解な現代音楽であり、これまでジョンが聞いてきた音楽とは全く違うものだった。

それでも念願のバンド加入を果たしたジョンは、マネージャーから半ば強引にバンドのレコーディングに連れ出される。一週間程度だろうと考えていたジョンは深い考えなしに参加するも、一行が向かったのは人里離れた森の中にぽつんと建つ一軒家だった。最初は休んでいる仕事のことを心配に思うも、レコーディングは一ヶ月を過ぎ、一年近く経過する。過酷なレコーディングに心身ともに消耗していくジョンを含めたバンドメンバーだったが、ジョンはフランクという絶対に仮面を脱ごうとはしない男に徐々に魅かれていく。

そしてバンドはレコーディング中にある悲劇に遭遇しながらも、テキサスで開催されるロックとサブカルの祭典『SXSW』に参加。そこである些細なきっかけでバンドは空中分解、そしてジョンはフランクの本当の姿を知ることになる。

■レビュー■ 

本作はフィクションでありながらも、作家で本作の共同脚本も担当するジョン・ロンソンの経験が元になっている。そしてマイケル・ファスベンダー演じるフランクとは、ジョン・ロンソンが実際に参加したバンドのリーダーだったフランク・サイドボトムから強くインスパイアされており、同時に本作でのフランクを巡るプロットでは実在のミュージシャンであるダニエル・ジョンストンとキャプテン・ビーフハートの逸話からもインスパイアされている。

マイケル・ファスベンダーが劇中のほとんどで素顔を見せないという奇妙な映画であり、物語そのものはコメディ作品とカテゴライズされるものであるが、実際には途中から“笑い”の性質はよりシニックで社会批評性の強いものへと変質していき、最後、フランクが仮面を被り続けていた理由が明かされる時には、映画前半部で強調されていたフランクの容姿と行動の奇妙さを対象とした何気ない笑いを内省せずにはいられない作りになっている。

この映画、とにかく不思議な作品だった。

コメディ映画が風刺的あることは珍しくないが、本作ではその風刺性とも言うべきものが観客の何気ない笑いのポイントに向けられている。我々は物事の表面を見て一瞬で、これは笑っていいものと笑ってはいけないもの、という判断をほとんど無意識的に下している。その判断の基準とは主に経験的に教えられてきた倫理基準によって個々人が自然と形成してきたものである。例えば身体に障害を持った人がその欠落部分を自虐的な笑いに変えようとした場合、それを受け取る人々の反応は分かれる。ある人は正直に笑うだろうし、ある人は笑うことを非倫理的と判断し濁す。その両者の反応の違いは正誤の問題ではないが、その反応へと至った無意識的な判断が個人のユーモアの感覚や思慮に多くを依存していることは間違いない。本作の終盤、フランクがその素顔を見せる時、観客は自身の“笑い”の在り方を強く意識させられる。

世の中に完璧な人間が存在しないことと同様に完全な変人など存在しない。大なり小なり、我々は皆他人との比較において奇妙な部分を必ず持ち合わせ、その奇妙さにおいてそれぞれの個性というものは見出される。本作におけるフランクとは、劇中に登場する全ての人々の奇妙さの集積であり、言わずもがな、観客それぞれの奇妙さの比喩でもある。

90分少しという長さの映画でここまでコメディについて考えさせられる映画も珍しい。その意味で不思議な映画であり、フランクという奇妙な存在がどうしようもなく愛おしく思えてしまう良作だった。

Frank movie

などなど小難しいこと言っていますが、ウェス・アンダーソン的な奇怪な笑いありの脱力系コメディとしてももちろん楽しめますので、是非ご覧下さい。また今回は敢えて本作のネタバレはしていません。終盤にフランクの身に何が起こるのか、その仮面の下の素顔とはどういったものなのか、是非劇場でお確かめください。日本公開は2014年10月4日です。

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