【映画】『ドン・ジョン/Don Jon』レビュー “独身男の現実映画”

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 ジョセフ・ゴードン=レヴィットが脚本、監督、主演をつとめた話題作の『ドン・ジョン/Don Jon』のレビューです。現代のモテ男の影を、ユーモアと皮肉で描いてみせた快作。独身男の多くはこの映画を他人事では見られないだろうし、女性にとっては男の生態を理解するうえではかなりリアルな描写にあふれた作品です。日本公開は2014年3月15日。

Donjon trailer

 ストーリー:イタリア系アメリカ人のジョン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)には、彼独特の人生哲学があった。「体作り、アパート、家族、教会、仲間、女たち、そしてポルノ」。
 夜な夜な女漁りをしてはその夜だけの関係を築き続けるジョンだが、実際のセックスでは満足せずに、彼女が眠るのを待っては自室でポルノを見ながら自慰をするのが日課だった。
 ある夜、いつものように仲間たちとクラブで女の品定めをしていたジョンは、ひと際スタイルが良く美しい女性のバーバラ(スカーレット・ヨハンソン)と出会う。一気に彼女に惹かれていくジョンだったが、バーバラは外見からのイメージとは違い、なかなか一線を超えさせてくれない。お互いの友達を紹介しあい、そしてお互いの家族とも食事をし、そこまでしてやっと二人はセックスをする。
 それはジョンにとって待ちわびた行為だったが、ポルノのようなセックスを求めるジョンには不満の残る内容で、バーバラが眠ったのを確認してから、いつものようにポルノサイトを巡回していた。が、そんな姿をバーバラに見つかってしまう。慌てふためき混乱するバーバラにジョンは、これは友達が冗談で送ってきたものだ、と嘘を言って切り抜ける。そして二度とポルノを見ないことをバーバラに約束してしまう。
 ジョンはバーバラと約束を守ろうとするも、ポルノは彼の生活の一部になっており、それを止めることがなかなかできない。ある日、夜間授業のクラスでこっそりと隠れながら携帯電話でポルノサイト見ていると、イーサー(ジュリアン・ムーア)にそれを見つけられ、しつこくつきまとわれるようになる。
 そしてある日、バーバラはジョンのパソコンの履歴を見て、彼がポルノを見続けていることを発見し、起こって出ていってしまう。バーバラを失ったジョンは、些細なきっかけからイーサーと車のなかでセックスをする。そしてポルノ中毒となっていたジョンにイーサーは様々なアドヴァイスをする。そしてジョンもイーサーの秘密を知る。
 現代のモテ男ドン・ジョンは自分の影を見つけることで、本当の愛について考えるようになる。

 レビュー: これまでサブカル・植物系男子を演じることが多かったジョセフ・ゴードン=レヴィットが、歴代の優男によって何度も映画化、舞台化されてきたドン・ジョンを現代に再現した本作。前評判でも特に批評家筋からの評判が良かったため注目はしていましたが、個人的にはかなり考えさせられる内容でした。
 まず以前、このブログのエントリーでも書いた、日本人がセックスをしなくなったという記事を紹介したとき、少子化という問題は決して日本だけもものではない、趣旨をことをお伝えしましたが、簡単にポルノへのアクセスができる現代において、生身のセックスよりも簡単で二次的な自慰行為の方が重要視される傾向は世界中で見られます。そういった男からすると恥ずかしさが全面でてなかなか真実を語ることができない非常にナイーブな問題を、ジョセフ・ゴードン=レヴィットは何とも軽快に、ドン・ジョンというイメージの再構築によって描いてみせています。
 この映画に出てくるジョンもバーバラも、実は二人とも現実の世界の愛というものを知らないただの子供であることがこの映画の終盤で明らかになるところは、非常にうまいです。一部では俳優よりも監督としての才能の高く評価されたジョセフ・ゴードン=レヴィットですが、このポップでありながら生々しい描写で笑いをさらっていく彼の力量は大したものです。
 いつの時代においても、本当の愛の姿を探そうとする人々の姿は変わらず滑稽なものです。 しかしその滑稽さとは誰もが避けては通れないものでもあり、自身の滑稽さに耐えないことにはどこへも行けない。バーチャルな世界で繰り広げられる、洗練され、相互満足で満たされる関係というのは、全く現実的なものではないただの夢物語である。そしてその夢物語のなかでのみ生きようとするする限り、人々は、愛を巡る滑稽さ以上に凝視に堪えない醜さを知らず知らずに受け入れてしまうことになる。
 マッチョでポップでハンサムなドン・ジョンは、本作の最後にはポルノから解放されることになる。彼をそこから救い出したのは、ゲームのように数値化された告解によってではなくて、 全ての滑稽さを引き受けたことで得られる安らぎに触れたことだった。その安らぎとは、現代の日常にも必ず存在する。ジョセフ・ゴードン=レヴィットはそんな当たり前の事実を、これまでにはない手法で描いてみせた。このまま一生ひとりでいいと思っている人々は、この映画を観て多くのことを感じるだろうと思う。

 ※これよりネタバレをします。日本公開は2014年3月15日ですので鑑賞予定の方はここで他のページに移ってください。繰り返します。以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。※

DON JON Quad

 イーサーからポルノ抜きでの自慰を勧められるもなかなか実行できなかったドン・ジョンは、彼女の家に招待される。そこでふとした瞬間に混乱に陥るイーサーを発見する。実は彼女は14ヶ月前に夫と息子を事故で亡くしていた。彼女の秘密を知ったドン・ジョンは、イーサーと再度結ばれる。そしてその夜、ドン・ジョンはセックスのあとのポルノへの欲求を感じることはなかった。
  ドン・ジョンは徐々にバーバラのいなくなった事実を受け入れはじめ、バーバラを慕っていた自分の家族にもその事実を伝える。そして再度、バーバラと会って彼女に謝罪をする。しかしその時の彼女の態度はそっけなくあまりにも優しさを欠いたものだった。バーバラは結局のところ、ドン・ジョンと同じようにバーチャルな完璧な愛を求めるあまりに、パートナーにさえもそのバーチャルを押し付ける女性だった。彼女が欲しかったのは自分ではなく、映画のような滑稽さのない世界を演じてくれる男だったことをドン・ジョンは知る。
 そしてドン・ジョンはずっと年のはなれたイーサーと外を一緒に歩くことになる。

 ということで、素晴らしい映画でした。 ジョセフ・ゴードン=レヴィットをはじめとする出演陣もすばらしいし、セックスシンボルのスカーレット・ヨハンソンもメタ的な役柄でよかったです。それでもこの映画はやはりコメディーで、途中に何度もゲラゲラ笑いました。あと、最近のチャニング・テイタムの扱いが個人的にはかなりはまっています。
 とにかく身につまされる映画でした。

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