シャーリーズ・セロン主演『ダーク・プレイス』レビュー

シャーリーズ・セロン主演『ダーク・プレイス』レビューです。原作は『ゴーン・ガール』のギリアン・フリンの『冥暗』。共演は『マッドマックス/怒りのデス・ロード』に続きニコラス・ホルト、そしてクロエ・グレース・モレッツ、クリスティナ・ヘンドリクス。少女時代に母と姉を兄に惨殺された女性が、謝礼金目当てで家族に降りかかった過去の事件を振り返るなかで驚愕の事実へと導かれていく。

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『ダーク・プレイス/Dark Places』

仏公開2015年4月8日/日本公開2016年6月24日/アメリカ・フランス合作/113分

監督:ジル・パケ=ブランネール

脚本:ジル・パケ=ブランネール

出演:シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、タイ・シェリダン、クロエ・グレース・モレッツ、クリスティーナ・ヘンドリックス他

あらすじ(ネタバレなし)

幼い頃、母親と二人の姉を自宅で惨殺された経験を持つリビー(シャーリーズ・セロン)。事件から25年経った今、彼女は事件後に全国から寄せられた寄付金や、ゴーストライターに書かせた本の収益を食いつぶす無気力な日々を送っていた。そして貯金も底を尽きかけた頃、彼女のもとにライル(ニコラス・ホルト)という青年が運営する殺人事件を語り合う集まり「殺人クラブ/The KIll Club」で事件について語ることで日銭を得ることにする。しかしそこに集まった殺人事件のマニアたちは25年前の事件を冤罪だと考えていた。

あの日、リビーの証言によって逮捕されたのは、悪魔信仰に取り憑かれていた兄のベン(タイ・シェリダン)だった。

謝礼金目当てでの「殺人クラブ」参加から事件の真相を調べることなったリビー。やがて記憶の奥底に仕舞い込んでいた、あの恐ろしい夜の真実が少しずつ明らかになっていく。

レビュー

まず出演者を紹介すると、幼い頃に母と姉ふたりを兄に惨殺されるという事件を経験した主人公リビーを演じるのは『マッドマックス/怒りのデス・ロード』で女戦士を演じたシャーリーズ・セロン。彼女は実際に幼い頃、正当防衛で母親が父親を銃殺するという痛ましい事件を経験しており、本作の内容と重なる。そして主人公を事件の真相へと導く役を『マッドマックス/怒りのデス・ロード』でも共演したニコラス・ホルトが演じる。ニュークス同様に変わった奴だが信頼できる男だ。

本作は事件の真相を追う現在と、25年前の事件が実際に起きた前後を描く過去の時制で構成されている。シャーリーズ・セロンとニコラス・ホルトは現在の世界の住人。

舞台は過去、25年前に一体何が起きたのか。過去の時制に登場する、無残にも殺されてしまうリビーの母親役はクリスティーナ・ヘンドリックス。いつもはおっぱいの主張が強すぎる彼女だが、本作ではシングルマザーとしての責務に必死に耐える母親を熱演している。そして事件の犯人として逮捕されるリビーの兄ベンを演じるは南部少年を演じれば当代一のタイ・シェリダン。ニコラス・ケイジと共演した『グランド・ジョー』同様に、成長期真っ只中の危うい精神のバランスを見事に演じていた。タイ・シェリダン、この名前は将来の名作映画でたびたび目にすることになるだろう。

この綺羅星のような出演リストの最後に加えられるのが、ヒットガールことクロエ・グレース・モレッツ。彼女の役柄はネタバレと密接に関わっているので詳細は控えるが、「ビッチ」という表現では足りないくらいのスケールのデカイ「超ビッチ」役を演じている。エロいはワルいは、イカれているは、もう「クロエたん」とか言ってられないのだ。

そして本作に関するもうひとつの重要なこととは、原作が『ゴーン・ガール』のギリアン・フリン。良くも悪くもこの事実が本作の評価を難しくしてくれている。

物語はカンザスの田舎で起きた凄惨な事件を発端としている。悪魔信仰に取り憑かれた少年が起こした家族惨殺事件。そのシナリオは生き残ったリビーの証言が基になっているとは言え、社会の要求でもあった。1985年、当時のアメリカ社会ではヘビーメタルに象徴されるような若者カルチャーの悪魔的側面が、若者の腐敗の象徴として過剰に恐れられており、結果、大人から一斉に攻撃されることになった。実際に「ナイトストーカー」などと呼ばれた史上最悪クラスの殺人鬼リチャード・ラミレスもこの時代に登場したとあって、悪魔崇拝という大人が恐れる行為は、ティーンネージャー特有の危うい精神に受け入れられる土壌があった。しかしそれは悪魔崇拝の本質が少年少女を引き寄せたというよりは、大人たちの過剰反応が反抗期の彼らをファッションとしての悪魔崇拝に向かわせたと考えるべきだろう。事実、悪魔崇拝的傾向を持った殺人事件は少年少女よりも明らかに大人たちの方が多く関与している。

本当の「悪魔」は大人子供関係なく、性別や人種や年齢を超えて偏在していることを描いた本作のラストはやはり衝撃的だった。

しかしその衝撃は、最高のキャストだけでなく最高の監督や撮影監督を迎えて作られた『ゴーン・ガール』と比べれば明らかに劣っている。時制が行き来するのはギリアン・フリンのミステリーの特徴だが、その演出の肝をデヴィッド・フィンチャーは登場人物の主観的視野に沿って客観的事実を観客に見せないことで主人公と観客の視座を同レベルに設置したのに対し、本作では事件のリビーの記憶をモノクロのPOV視点で描いたかと思うと、これまでと変わらない映像で描いたりと小手先の演出が目につく。こういった「俺、上手いだろう」という饒舌な演出法は、フィンチャーの無言の迫力との対比では安っぽく見えてしまう。

未読ながら原作は一級品なのがよくわかる映画であるが、『ゴーン・ガール』のように映像化することの意味はほとんど感じなかった。原作の代わりにはなっても、それ以上にはなり得ない作品という評価に落ち着く。それでも特にクロエ・グレース・モレッツとタイ・シェリダンの演技だけでも観る価値があるだろう。ラストに明かされる真実は衝撃的だが、そこまで辿り着くまでがモタつく。それもこれもデヴィッド・フィンチャーの『ゴーン・ガール』との比較において、ではあるが。

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ということで『ダーク・プレイス』のレビューでした。俳優陣は素晴らしいですが、やっぱりこれを観ると『ゴーン・ガール』は偉大だと思います。物語の恐怖や不条理が観客にも憑依するような感覚は本作にはありませんでした。あくまで遠い過去の世界の話に終始しています。実は本作は『ゴーン・ガール』と同時期から製作がスタートしていたのですが、順調とは言えない進行状況を経過してやっと2015年4月にフランスで公開されたことからも、やはり製作側も『ゴーン・ガール』との差を痛感していたのでしょう。決してダメな映画ではないですが、大化けする可能性も秘めた原作だけにもったいないという感じです。それでもクロエたん目当てでも観る価値はあるでしょう。ただし『デビルズ・ノット』よりは面白かったです。日本公開はありそうな予感。以上。

Summary
Review Date
Reviewed Item
ダーク・プレイス
Author Rating
3
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