【映画】『ダラス・バイヤーズクラブ』レビュー

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本年度のアカデミー賞で、主演男優賞と助演男優賞の有力候補を送り込んだ『ダラス・バイヤーズクラブ』のレビューです。マシュー・マコノヒーとジャレット・シトが痛ましいほどの減量に挑み完成した、世の中から見捨てられた者たちがそれでも必死に生きようとする闘争と友情の感動作。

・ストーリー

1985年、テキサスでロデオに興じるロンは原因不明の体調不良に悩まされる。それでもコカインを吸っては、売春婦とのセックスを繰り返す。ある日、ロンは電気技師として仕事をしている最中に事故に合い、病院に運ばれる。そこで医者からエイズであると診断される。エイズという不治の病が同性愛者への罰として受け取られていた時代、彼はその診断を受け入れることが出来ないが、やがて調べるとエイズは同性愛者以外にも感染することを知る。同時にアメリカではエイズに効果があるとされる薬がことごとく認可されておらず、患者たちは次々と死んでいっていることも知る。

やがてロンはメキシコや日本などからアメリカでは未認可の薬を密輸し、政府によって見殺しにされているエイズ患者に薬を提供する「ダラス・バイヤーズクラブ」を立ち上げ、生きるための闘いをはじめる。

・レビュー

1970年代のアメリカではマイノリティーの権利獲得運動が盛んに行われ、その結果としてゲイたちもこれまで抑圧されてきた性を解放するようになった。その反面、女性解放や人種差別とは違った文脈でゲイたちの乱れる性は社会的にも強い反発を招くようになる。

そうした社会的背景の中、1981年に突如として現れたエイズはゲイコミュニティーを直撃し、反同性愛の姿勢を取ってきたキリスト教保守勢力はそれを同性愛者への罰として解釈するようになる。こういった考え方はアメリカのエイズ対策にも影響を与え、レーガン大統領は「エイズは道徳の問題であり、自己責任の問題である。政府が金を使うような問題ではない」と発言し、政府による主体的なエイズ対策を疎かにする。

本作はまさにそういった時代の物語だ。主人公のロンもまた無知なる社会の体現者で、自身もその無知なる社会に殺される危機に瀕することで、やっと闘いをはじめる。この映画で一番感動的なのは、ゲイでエイズ患者のビジネルパートナーが差別に晒されたときにロンが彼(もしくは彼女)の側になって戦うシーン。エイズという病気のことを深く知ることで主人公が差別を克服する姿は、本作の最も強烈なメッセージシーンとなっている。

本作を最も象徴するのが、暴れ狂う牛に8秒以上乗ることが求められるラフストック・ロデオ。カウボーイたちはその8秒という僅かな時間に必死にしがみつきながら自分の度胸を試す。マシュー・マコノヒー演じるロン・ウッドールーフもその競技に魅せられた典型的なカウボーイの1人だが、だからこそ彼は、諦め絶望していった他の患者たちとは違い、自分の生に必死にしがみつくことが出来た。そしてその姿が周りを変え、やがてはより大きな社会をも変えるきっかけとなった。

主演のマシュー・マコノヒーの熱演にばかり目が行きがちだが、ジャレッド・レトの演技も素晴らしい。二人が本作に出演するにあたり減量した総重量は約36キロ。エイズ患者の削れていく肉体を完璧に再現しただけなく、その悲哀も同時に演じてみせた二人の演技だけでも十分に見る価値がある。

ただ残念なのは、本作で登場する日本のシーンで携帯電話の看板が丸写しになっていたこと。1980年代という時代設定も台無しになる。こういった単純な確認ミスだけで一気に物語の真実味が一気に冷めてしまうのは本当にもったいない。ただしそれを差し引いたとしても、素晴らしい作品だった。

寛容さが確実に薄くなっている今の日本にあって、この映画が実話であるという事実はことのほか深く響いた。

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▼激やせのマコノヒーがムキムキだった頃▼

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