映画レビュー|『クライム・スピード』-浅はかすぎる銀行破りの末路

GK une american Heist

エイドリアン・ブロディとヘイデン・クリステンセン共演の『クライム・スピード/AMERICAN HEIST』のレビューです。兄弟のきれない絆を描いたクライムドラマであり、マックイーン主演の『セントルイス銀行強盗』のリメイク。日本公開は2015年11月7日。

『クライム・スピード/AMERICAN HEIST』

全米公開2015年7月24日/日本公開2015年11月7日/アメリカ・ロシア合作映画/94分

監督:サリク・アンドレシャン

脚本:ラウル・イングリス

出演:ヘイデン・クリステンセン、エイドリアン・ブロディ、ジョーダナ・ブリュースター他

あらすじ(ネタバレなし)

 過去に兄フランキー(エイドリアン・ブロディ)が起こした事件に巻き込まれる形で逮捕されて経験を持つジェームズは自動車修理士として働いていた。

そこに出所してきた フランキーがやってくる。そして同じ頃フランキーは昔に付き合いのあったエミリー(ジョーダナ・ブリュースター)と再会する。

人生をやり直そうとするジェームズだったが、またしても兄フランキーに半ば騙されるように銀行強盗の運転手役を任されることになる。

反目し合うも兄弟の絆も忘れない二人が挑む最後の銀行強盗。果たしてその末路は?

レビュー

アメリカの「浅はかな」銀行強盗たちの末路とは?:

原題のタイトル『アメリカン・ヘイスト(アメリカの銀行強盗)/AMERICAN HEIST』の通り、本作は銀行強盗を巡ってのすったもんだを描いた、いわゆる「ケイパーもの」とも言うべき、ストレートで無個性な犯罪映画に仕上がっていた。主演は『スターウォーズ』の前シリーズでアナキンを演じたヘイデン・クリステンセンと、『戦場のピアニスト』でアカデミー主演男優賞を獲得したエイドリアン・ブロディの二人。彼らが兄弟を演じている。

刑務所から出所したばかりのエイドリアン・ブロディが、人生をやり直すために仲間たちと銀行強盗を計画。そこに弟のヘイデンが半ば無理やりに参加を強要され、やがては袋小路に追い込まれるという内容。小さいころから犯罪に手を染めてきた兄と、真面目に生きようと努力しながらも犯罪者の兄のせいで人生をめちゃくちゃにされてしまった弟。ふたりの兄弟が互いに抱いている複雑な感情を軸にして、犯罪に堕ちていく兄弟の姿を対照的に描いていく。

本作は1959年のスティーブ・マックイーン主演の『セントルイス銀行強盗』を基にしたリメイクだが、実は重要な設定のいくつかが変更されている。まず本作ではヘイデン・クリステンセン演じる主人公は自分の意思とは反する形で犯罪に引き込まれるのに対して、オリジナル版では主人公スティーブ・マックイーンは自分の過去の過ちをやり直すために必要な金を求めて犯罪に背を染める。この主人公の人物設定の違いがそのままラストにも影響した結果、作品のトーンが全く違う作品になっていた。簡単に比較するとオリジナルの『セントルイス銀行強盗』が軽はずみな犯罪の先には袋小路しかないことが描かれ、罪の前ではすべてが平等であることが描かれている。一方、本作『クライム・スピード』ではそれが銀行強盗という凶悪な犯罪であったとしても、裁かれるのはその行為はなく心情とでも言うように、主人公にのみ特別な救いが用意されている。同じ犯罪を描いておきながら、スティーブ・マックイーンとヘイデン・クリステンセンの扱いはほとんど真逆といってもいいだろう。

もちろん作品の質としても1959年のオリジナルの方に軍配があがる。50年以上も隔たりのある両作でありながらも、犯罪ドラマの定型やクリシェとの位置関係ではオリジナルの方がずっと挑戦的だ。銀行強盗のメンバーのなかに同性愛を描いたり、主人公(マックイーン)の弱さや浅はかさも描かれるからラストの脱力感も身に染みる。しかし本作の主人公はただただ不幸な存在としてしか描かれない。物語の後半には感動的なシーンとして兄弟の葛藤と和解が描かれ、この部分をもってして物語上の光である弟と、影である兄が溶解するのかと思いきや、結局その対比のままで幕は閉じていく。驚きもへったくれもない。

テイストとしてはロバート・デ・ニーロ主演『ミーン・ストリート』などのスコセッシ風どん詰まり犯罪ドラマを思い浮かべがちだし実際に目標はそこらに設定していたはずだが、途中から道をずるずると外れていきやがて景色も一変、気がつくとどこにでもある凡庸な犯罪ドラマに落ち付いている。そして何より犯罪ドラマとしての肝となる銀行強盗の計画がお粗末すぎる。しかも劇中の前半に主人公の口から計画の杜撰さが指摘されながらも、結局はその杜撰な体制のままで計画が実行される。そしてもちろん失敗する。こういったプロットはオリジナル作品のような罪と罰の等価性を描いた作品ではどこまで言っても浅はかな犯罪者というイメージの一助となるが、本作では犯罪グループのリーダーはデンゼル・ワシントンばりに切れ者という設定。ちぐはぐさは否めない。というかストレートな「アメリカの銀行強盗」というタイトルからすると、アメリカの銀行強盗は皆バカに思えてしまう。そしてオリジナルにもあった恋愛要素の扱いも安っぽいメロドラマを想起させるに止まっている。オリジナルでは恋愛もまた罰の対象となる厳しさが描かれていたが、本作では恋愛がすべてを解決してしまう。

それにしてもヘイデン・クリステンセンが演じるのは家族に難のある役ばかり。おかげでダークサイドに落ちたり、海辺に家を建てたり、空間移動できる能力を備わったりと、なんだかんだで楽しそうなのは何よりだが映画としてはもう少しひねりが欲しい。

そしてエイドリアン・ブロディはなぜか笑ってしまう俳優になってしまった。これまでも実在のピアニストを演じたり、人間ではないエロい生き物とヤっちゃったり、プレデターと戦わされたりと振り幅の大きさには定評がある。本作で演じる粗野でバカだが憎めいない犯罪者という役柄も80年代パリーグ選手のような風貌のおかげでなぜか笑いそうになってしまう。演技はもちろん上手いのだが、出演作の多さからと役柄のカメレオンぶりからほとんど個人的にも「今週のブロディ」という映画の内容とは違った楽しみが生まれてしまっている。ちなみに「先週のブロディ」はジャッキー・チェンの映画で冷血なローマ皇帝を演じていた。

本作は観るからに小粒な映画であるが、小粒ゆえの冒険というものはストーリー上ではなく有名個性派俳優と二枚目俳優を起用してみたというキャスティングだけに留まっている印象。展開の早くてガンアクションがクライマックスの犯罪ドラマが好みの人には楽しめるのかもしれない。でもそれ以上は期待しないことをお勧めします。

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ということでヘイデン・クリステンセンとエイドリアン・ブロディ共演の犯罪ドラマ『クライム・スピード』のレビューでした。全体としてちぐはぐな印象です。オリジナル作品を観たことのある人には一層にそう感じることでしょう。でもエイドリアン・ブロディのダメ兄貴ぶりや、銀行での銃撃パートなどの見所もちゃんとあります。そして『ワイルド・スピード』でヴィン・ディーゼルの妹でポール・ウォーカーの奥さんを演じているジョーダナ・ブリュースターも訳あり女性役で登場しますが、彼女の扱いがちょっとヌルい。あとスカート短すぎ。以上。

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