トム・クルーズ主演『オール・ユー・ニード・イズ・キル』レビュー ※ネタバレあり

桜坂洋原作の『All You Need Is Kill』を原作とするトム・クルーズ主演映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のレビューです。戦っては死ぬことの連続を強いられるタイムループに陥った主人公らの姿を描いた本作。この夏の大作映画のなかでは存在感は薄いですが、予想以上に素晴らしい出来映えでした。監督は「ボーン・アイデンティティ」のダグ・リーマン。日本公開は2014年7月4日です。

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・ストーリー(ネタバレなし)

近未来、謎のエイリアンの襲撃を受けた地球は、敵の圧倒的な戦力のまえに西ヨーロッパの大半を放棄する事態となっていた。連合軍の戦略を先読みするエイリアン“ミミックス”を前に地球は痛めつけられていく。そして人類は独自に開発したボディー・アーマーを武器にして、フランスの海岸線を舞台にした決死の最終決戦を挑むことを決意する。

ウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は戦闘経験のない事務方の軍関係者でありながらも、人手不足のために前線に配置されるカメラクルーの付き添いを命じられてします。激しい反対も空しく、ケイジ少佐はそのまま前線基地へと送られ、荒くれ集団とともに海岸での戦闘に参加させられる。

しかし人類による決死の作戦もミミックスたちに気付かれており、ケイジの乗った飛行機も着陸前に攻撃を受けて、そのまま戦地へと投下される。武器の安全装置の解除法も知らないケイジは戦場で兵士たちの死を目の当たりにしながらも右往左往するばかりだが、そこに身の丈ほどもある剣を構えた女兵士が現れ、俊敏に動くミミックスを撃退していく。彼女はリタ・ブラタスキー(エミリー・ブラント)。驚異的な戦闘能力をもった兵士であり、人類の希望の象徴のような存在だった。しかしその彼女もケイジの前に死んでしまい、ケイジも一体のミミックスを巻き添えにする形で爆死する。

次の瞬間、ケイジは奇妙な既視感のなかで目覚める。先日の前線基地に送られた状況と全く同じ時間のなかに自分がいたのだった。出会う人もセリフも全て昨日と同じで、戦場での自分の死がタイムループへと迷い込むきっかけとなったことに気がつく。

戦場で死に、そしてまた基地で目覚めるという時間の繰り返しのなかケイジは作戦の停止を訴えるも誰も聞く耳をもたない。そして再び、戦場に戻され、女戦士のリタを救いつつ自身の状況を説明すると、彼女の表情が見る見るうちに変わっていく。そして彼女は戦場で「次に目覚めたら、私を見つけ出しなさい」とケイジの言い残し爆発に巻き込まれてします。

タイムループに飲み込まれ戦場での日々を繰り返すケイジはリタと出会うことで、少しずつ自身の状況と敵の状況を理解しはじ、そして人類が勝利する糸口をたぐり寄せていく。

感想

大作映画が目白押しとなる2014年夏のラインナップのなかでもこの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は決して最注目作ということではなかった。主演がトム・クルーズということで一定の質は保証されているし、原作が日本のオリジナルコンテンスだと分かっていても、それほど期待していた訳ではなかった。理由はやはり主演がトム・クルーズということに尽きる。一定の質が保証されるということは同時に飛び抜けた作品になる可能性も低い。おまけに前作が『オブリビオン』と同じ近未来SF設定ということで食傷気味だったのかもしれない。

結果、先述したような自身の映画通ぶった、いけ好かない態度を反省することになった。これが面白かったのだ。

まず監督のダグ・リーマンの特徴がこの物語世界と非常に相性がよかったということ。マット・デイモンの「ボーン・アイデンティティ」や「フェアゲーム」で知られることとなったリーマンの特徴とは「特殊な状況に陥った人物の心象風景を、テンポのいいカット割りで表現する」手法にある。人間兵器ジェイソン・ボーンを冷徹なまでの合理的展開で描いていた一方、本作のケイジは非常にコミカルな描き方をしている。特にタイムループに陥る過程のテンポの良さは、アクション描写ではないのに非常にアクション的な描写でかなり新鮮だった。

同じタイムループ映画で有名なビル・マーレイ主演の『恋はデジャ・ブ』はコメディを土台にして哲学的なテーマ(町山智浩解説によるとニーチェ的永劫回帰)を取り扱ったことが白眉であったが、本作はシリアスな設定のなかにも特に前半部分でのタイムループの説明箇所で随所にコメディ要素が加わっており、これがSF的ストーリー展開の強引さを目立たなくしている。特に前半はいつもの何でもできる主演トム・クルーズとは違っていて、子供みたいなダダをこねたり、妙な下心をみせたりとしっかりと笑わせてくれる。タイムループ設定という、観客を完全に納得させることが難しい説明箇所において笑いの要素を持ち込んで乗り切ったことは、最後まで物語の緊張感が失速しなかったことの主因となっていると思う。

共演のエミリー・ブラントも前半では主演のトムを完全に“食う”ほどの存在感で素晴らしかった。彼女のドSぶりはきっと好き者にはたまらないだろう。

日本のオリジナルコンテンツということへの配慮から序盤のシーンでは背景音として日本語が飛び交っている。あと主人公の名前もケイジということでオリジナルを踏襲しているようだ。

ただしSF的ガジェットは既視感があるものばかりで新鮮さに薄く、あくまで本作はトム・クルーズ主演映画で、ラストは相変わらずトム・クルーズ的エンディングとなっているが、本作に限って言えばそれも悪くない。とにかくこれほど甚振られるトム・クルーズも珍しいので、最後くらいは格好良くても文句はない。

また個人的には物語中盤でケイジが時間の繰り返しのなかで空しさを感じるシーンは『恋はデジャ・ブ』のメッセージに通じる重要なポイントであり、エンディング部分を引き立てるシーンとなっており感動した。アクションSF映画として“繰り返しの効かない人生”までも考えさせてくれる良作だった。

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