『わたしを離さないで』第10話(最終話)レビュー

カズオ・イシグロ原作のベストセラーを綾瀬はるか主演でドラマ化する『わたしを離さないで』の最終話となる第10話のレビューです。提供者としてのそれぞれの絶望と向き合う二人が最後に出した答えとは?タイトルに込められた想いが明かされる。

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『わたしを離さないで』

出演:綾瀬はるか、三浦春馬、ほか

原作:「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

脚本:森下佳子

音楽:やまだ豊

プロデュース: 渡瀬暁彦 飯田和孝

演出:吉田健 山本剛義 平川雄一朗

製作著作:TBS「わたしを離さないで」公式サイト

第10話(最終話) あらすじ

唯一の希望であった猶予がないことがわかり、塞ぎこんでしまった友彦(三浦春馬)に3度目の通知が届く。

たいていの提供者は3度目で終わりを迎えるが、なかには3度目を耐えられる提供者もいる。しかし、そうなると体の自由がきかなくなり、トイレも一人ではままならない。

恭子(綾瀬はるか)にふがいない姿をさらしたくない友彦は、自暴自棄になっていたこともあり、恭子に介護人をやめるよう願い出る。

動揺しながらも必死に説得する恭子だったが、ある日、友彦が倒れたと報告を受ける。

そんな中、恭子はばったりと龍子(伊藤歩)と再会。落胆し、無気力となった友彦の様子を聞いた龍子は、サッカー観戦に友彦を連れ出そうと提案する…


第10話(最終話)レビュー(ネタバレあり)

猶予の存在が幻だったと分かってから、友彦は絶望の中で塞ぎ込んでいた。そして三度目の提供を前に、友彦は恭子に自分の介護人を辞めるよう依頼する。もし三度目の提供を終えても死ぬことができなかったなら、トイレさえも自分で行くことが難しくなり、その惨めな状況に耐えられなくなったためだった。

絶望しかなくなった友彦と恭子の関係は、一気に冷めていってしまう。そして友彦は自暴自棄に陥ってしまう。

友彦との間に距離を置くようになった恭子のもとに、友彦が倒れたという一報が入る。

『わたしを離さないで』の最終話では、物語の終わりと同時に、提供者という仕組みを作った社会の終わりも暗示される。提供者の出現によって飛躍的に寿命が延びた人類だったが、延命された命の長さを持て余すようになった高齢者たちが臓器の提供を拒む事例が増えているのだという。

一方、恭子は友彦の介護の帰り道で、陽光学苑時代の先生だった龍子と偶然に再会する。そして友彦と恭子は、龍子が関わっているサッカー教室を見学に行く。そこで友彦たちは、提供者からの臓器提供のおかげで今を生きている人の存在を教えられる。

生まれてくれてありがとう

初めて自分たちの死が無意味なものでないと実感した友彦は、死を目前にして穏やかさを取り戻し「生まれてきてよかった」と思うことができるようになり、恭子に見届けられる中、友彦は最後の提供を終え、その命も終える。

そして恭子はひとりになった。

第10話 最終回 のあらすじ|TBSテレビ 金曜ドラマ わたしを離さないで

この手の連続テレビドラマとしては異例なほどに陰鬱で出口のないエンディングで物語は閉じられる。そして評価としては全10話全体を見通せば、やはり冗長さが目立つことになるだろうが、第8話から最終話までの物語のテーマと直接向かい合うエピソードでは、上述したシリアスさに加えて、最近の商業ベースの邦画や日本ドラマでは珍しい視聴者側が主体的に「考える」ことを求める構造となっており納得できるクオリティは保持したと思う。だからこそ前半部分で見せ場を作りきれなかったことが悔やまれる。「提供者」という運命を第1話からいきなり明かすのではなく、そのミステリーで数話を稼げればまた違った印象を受けたかもしれない。最後がよくできていただけにスタート部分がもう少し丁寧に描かれていればカルト的な人気は獲得できたかもしれない。

また久しぶりに日本のドラマを 1クール通して見て思うのは、海外ドラマと日本のドラマの距離感は、映画のそれよりも絶望的に広がってしまっているということだった。今、中国ではハリウッド一線級のクリエイターたちを招き、映画やドラマを制作しようとしているが、やがて遠からぬ未来に日本はコンテンツ輸出国というアジアでの立場さえもほとんど失ってしまうのだろうかという危惧を率直に感じる。現実味のない美術と、明るいことが正義の照明、もう見飽きた「半沢」風のカメラワークもひつこく、音楽に至っては耳を覆いたくなるような大げさぶり。

原作のテーマと、脚色された日本的なパートがゆっくりとかみ合ってきて物語全体に惹きつけられるようになってからも、上述したような20年前のドラマと代わり映えしない「ドラマ的」な安っぽさが足を引っ張り続ける。映像機器やデジタル編集の技術革新を日本のドラマは、残念ながら、活かしきれているとはとても思えない。

こういった批判は『わたしを離さないで』に限ったことではないため、個別のレビューには相応しくないのかもしれないが、ドラマパートで見どころに恵まれていたからこそ、技術面での齟齬が目立ってしまう。

それでも、良くも悪くも分かりやすい作品が求められる昨今のドラマ事情にあって、世界的ベストセラーであり深いテーマ性を持った文学作品を映像化しようとした試みそのものは讃えられるべきであると思うし、原作が持つ多様な解釈を許す余白部分がうまく描かれており、最終話としては十分に満足できる内容でもあった。

例えば同じTBSのドラマの『MOZU』で見せた(日本ドラマとしては)質の高い映像が、本シリーズでも再現されていたなら評価はぐっと上がっていたかもしれない。

重ね重ねになるが、特に後半になってからの物語がよくできていた分だけ、残念に思えるのだ。

・『わたしを離さないで』レビュー一覧

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