本『ブラッドベリ、自作を語る』

 毎朝、ベッドから起きると、きのうは何をしたんだっけ、と考える。すると、創造する僕自身が、猫みたいにむっくり起き上がる。猫ってのは、人に知らん顔されるのが嫌いなんだ。だから、こっちが素知らぬ顔で歩きだすと、何だろうと思ってついてくる。アイデアもそう。わざと知らん顔してやると、あっちから来るんだよ。                                   『ブラッドベリ、自作を語る』,P127 より抜粋

 ブログをはじめてから本を読む量が明らかに減ってしまった。理由は、毎日のブログ更新を心がけているため、どうしても映画や音楽などの比較的完結時間の短いネタに走ってしまう。これはよくない。まず本を読まなくなると目に見えて集中力が退化していく。おかげでDVDで映画を見るときでさえ途中で投げ出すことが最近多くなってきた。よく本を読んでいた頃はどんなに意味不明な映画であっても色々とあることないこと考えて結局は最後までちゃんと観ていたのだ。明らかな退化。反省せねば。
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 という訳で初心に帰るためのリハビリとして、今回紹介する一冊は小説や旅行記ではなくインタビュー集。しかも私に読書の喜びを最も多く与えてくれた作家レイ・ブラッドベリーがひたすら話し続ける一冊。題名は『ブラッドベリ、自作を語る』となっているが実際の中身は自作について語っているのは一部でほとんどは過去の記憶や噂について、そして現代についてブラッドベリー御大が好き勝手話している。ブラッドベリー本人は惜しまれながら2012年の6月に永眠。この本は2000年から足掛け10年にわたって行われたインタビューをまとめたもの。ページをめくればおもわず手帳に書き込みたくなるような有り難い言葉がそこらじゅうに散らばっている。

 結婚なんていうものは、ユーモアがなかったら成り立たないものだよ。『ある愛の詩』っていう、くだらない映画があったろう。愛とは決して後悔しないこと、とか何とか言っているが、馬鹿抜かせとしか思えない。愛とは、ちょっとしたことにでも、こりゃしまったと思う繰り返しで、そうと口に出すことじゃないかな。
                      『ブラッドベリ、自作を語る』,P324より抜粋

 アメリカを代表する人気作家のため様々な誘惑があっただろうに56年間もの間、もちろん様々なトラブルはあっただろうが、一人の女性と寄り添い続けたブラッドベリーが言うとその毒は真実に限りなく近づいているように聞こえる。
 この本を読んでいると彼の人となりが、彼の肉体からふっと飛び立っては彼の作品に生命を注ぎ込んでいたことがよくわかる。そして我々は彼の作品を通じて彼の人となりに触れることが出来る。
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 この本を手に取ったときはさほど期待をしていなかった。よく作家が自分の作品についてしたり顔で話しているのを聞くと何かを押し付けられているようで一気に冷めてしまうことがあった。でもこの本にはそんな節はひとつも出てこない。ひたすら彼のことが好きなる。クリストファー・ノーランあたりはブラッドベリの爪の垢でも煎じるべきだ。

 アンテナを張り巡らすんだね。とにかく読みなさい、というのが処方箋だ。一晩に一篇のエッセイを読むことを千夜続ける。また、一晩一篇の詩を千夜。一晩一篇のストーリーを千夜。そうすれば千夜で三千のメタファーが頭の中にある。それがアンテナになる。
                     『ブラッドベリ、自作を語る』,P285 より抜粋  

 この文章は若い作家へのアイデアに関するアドバイス。身に染みる。

 というわけで、この本はSFファンやブラッドベリーファンのみならず、まだブラッドベリーを読んだことがない人にもおすすめです。何かに迷ったとき、どういうわけ物事がうまくいかないとき、この本を開いてみてはどうだろう。きっとブラッドベリーが背中を押してくれるだろう。上空一万フィートの機体から。「とにかく前に進め」と笑いながら。

『ブラッドベリ、自作を語る』

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