バンクシー、NYで破格値で露天販売、『イグジット・スルー・ジ・ギフトショップ』

 こんなニュースを発見。『バンクシーの露天が出現 破格値で販売 NY』

 記事をまとめるとイギリスの覆面ストリート・アーティストのバンクシーが予行なしにNYのセントラルパークにて自身の作品を販売。一日に8点、売り上げ総額が420ドルであったということ。

 きっとバンクシーという存在を知らない人やバンクシーが監督した『イグジット・スルー・ジ・ギフトショップ』を観ていない人にはいまいち、このニュースの意味が分からないだろう。この行為がどれだけコケにしていて、どれだけ自虐的で、どれだけカッコいいのか。

バンクシー、Exit Through The Gift Shop

バンクシー、Exit Through The Gift Shop

 『イグジット・スルー・ジ・ギフトショップ』でメタ的に描かれるように、バンクシーは徹底的に“価値”というものを疑っている。流行という文脈に絡められただけで、昨日までは紙くずだったものが、ロスやNYのギャラリーに並び、オークションでは数十万ドルという値がつく現代の美術シーンを疑っている。“価値”というものが投資の対象として形成されていることを徹底的にコケにする。

 今回の露天販売で売り上げた一点約50ドルのバンクシー作品はNYのオークションに出せばきっと一点5万ドルは下らない。そんな価値ある作品群がおなじNYの露天に並べればほとんどの客に無視され、売れたとしても50ドル程度にしかならない。彼は自分自身を実験台にして価値の転倒を楽しんでいる。

バンクシー作、パレスチナ分離壁にて

バンクシー作、パレスチナ分離壁にて

 よくバンクシーがやっていることをジョークだと言う人がいるけど、ここまで来るとほとんど笑えない。バンクシーは自分の作品を意識的に注目している連中をやり玉に挙げているのだ。

 お前らは俺の作品を高値で買っていくけど、もしあの時セントラルパークにいたなら、ちゃんと立ち止まって俺の絵を購入していたのか。してないんじゃないのか。お前ら雰囲気に流されて俺のファンになっているだけじゃないのか。

 バンクシーのファンにはブラッド・ピットやアンジェリーナ・ジョリーやキアヌ・リーブスなんかもいるが、彼らはこのニュースを見ても胸を張っていられるのだろうか。

 このニュースで思い出すのは、ドリッピングなどの技法で有名な現代ニューヨーク派の代表画家とされるジャクソン・ポロックの絵をSF作家のレイ・ブラッドベリーが、ぜんぜんわからん、と言っていたこと。批評家からは最大の賛辞を浴びながらも、わからないものはわからないという、周りに流されない態度は必要ですね。いわゆる“アート”というものはその価値を理解していることが、一種の価値を生み出すという不思議な構造を秘めている分、それについて語る場合には慎重である必要がある。裸の王様にはなりたくない。
Banksy Exit Through the Gift Shop limited movie poster

 気をつけねば。

banksy2(1)
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