映画『STAR TREK INTO DARKNESS スタートレック イントゥ・ダークネス』レビュー “僕らがエイブラムスに期待すること”

 今さっき一足先にJ・J・エイブラムス監督最新作の『スタートレック イントゥ・ダークネス』を観てきました。まだ軽い興奮状態ですがそのままレビューを書きたいと思います。まず感想を簡潔にまとめるのなら“最高”の一言に尽きます。おおよそ私が想像しうるエンターテインメント映画に必要なすべての要素がそこにはありました。思わず前のめりになってしまうようなアクション、迫力満点のCG、気の利いた会話にメタ視点からのジョーク、倒錯する復讐心、不自然と感じられた要素さえもしっかりと回収してみせる脚本の妙、そして友情と愛。2時間少しの上映時間、一瞬たりとも飽きることはなく斜面から転げ落ちる雪だるまのように物語は徐々にしかし確実に膨らんでいき、ここが落としどころかと気を抜きかけた途端にそこからひとつまたひとつと物語の山場は高みへと上っていく。しっかりと泣けて、思わずガッツポーズをしてしまい、そして最後には心地よい笑みがこぼれる。今年観たエンターテインメント映画ではぶっちぎりの第一位。文句なしの傑作でした。

スポック(左)とカーク(右)、star trek into darkness

スポック(左)とカーク(右)、star trek into darkness

・ストーリー(ネタバレなし)

カーク船長以下スポックらが乗るエンタープライズ号は辺境の惑星ニビルを訪れていた。そこには他の惑星との接触をもたない原始的な住民が生活しているものの巨大な火山の噴火を目前にしてその生命存続の危機が迫っていた。ニビルの住民を救うため噴火を止めるミッションに当たっていたスポックだったが溶岩が降り注ぐなかに取り残されてしまう。その危機を救うためカーク船長は海中に潜り身を隠していたエンタープライズ号を起動させることでスポックを救出することに成功するも、エンタープライズ号をニビルの住民に知らしめることは絶対に破ってはいけない最重要命令であった。そのことでカーク船長は上官より降格を命じられエンタープライズ号の船長の肩書きを失ってしまう。

ちょうどその頃ロンドンで愛娘の死に悲しむ父親の前に娘は生き返ると語りかける一人の男。そしてそのロンドンで爆破テロがおこる。現場の映像から犯人は惑星艦隊所属のジョン・ハリソンであることが判明し、サンフランシスコの本部でカークやスポックを含む上官らが集まり緊急会議が行われるも、その現場をハリソンによって戦闘機で攻撃されてしまう。なんとか撃退するもハリソンは脱出しカークの恩人でもあるパイク大佐は死亡してしまう。戦闘機の残骸に残されていたデータを解析するとハリソンがクリンゴン星人が拠点としている惑星クロノスにワープしていたことが判明。マーカス総督の許可のもと、カークはスポックら乗組員を引き連れてハリソンのいるクロノスへ向かうも、総督から与えられたミッションはハリソンの居場所が判明次第搭載した72基の光子ミサイルを発射せよというものだった。光子ミサイルの母船への危険性を巡り、カーク船長と機器担当の乗組員の“スコッティー”は対立しスコッティーは船を降りることになる。72基のミサイルを積んだエンタープライズ号は新たな乗組員を迎えるなどして惑星クロノスをめざす。

光子ミサイル、star trek into darkness

光子ミサイル、star trek into darkness

・感想

とにかくよくできた映画だった。予告編の主たる部分となっていたオープニングの原色眩しい惑星ニビルでの疾走感溢れる映像から一転してダークな23世紀の地球の描写へ移るあたりから傑作の予感がほとばしっていた。エイブラムスによる前作『スタートレック』リブート第一作も評価の高い映画だったため、それゆえに“シリーズ物は一作目が最高作品”という映画的一般論を乗り越えられるかが焦点だった本作、そんな心配など無用だと言わんばかりに“2作目”がもつ利点をフル活用して軽々と一作目を超えてみせた印象だ。2作目がもつ利点とは登場人物の説明が不要であるとことに尽きる。1作目は世界観の説明からの出発を余儀なくされるためどうしても主要キャラ以外は限定的な役割しか与えられない。『スタートレック』という人気シリーズものであっても現在の若者や『スタートレック』を知らない観客への配慮が必要となるのだが、2作目となればスポックの奇妙ともとれる言動やカークの無鉄砲さの所以、その他の癖のある乗組員についても説明済みということで物語をはじめられる。つまりその分様々な登場人物に“見せ場”を与えることできる。そのおかげで本作は最初から最後までフルスロットルで突き抜ける。

特に脇役ながら最高の“見せ場”を与えられたのがサイモン・ペグ演じるスコッティーだろう。彼の活躍ぶりに言及するとネタバレを含むことになるので後に回すが、私が思わず笑ってしまったのは、惑星クロノスに着陸したカーク、スポック、そしてウフーラらがクリンゴン人に囲まれたときウフーラが「ここにはクリンゴン語を話せるのは自分しかいないから私が説得にあたるわ」と危険を買って出るシーン。もしそこにスコッティーがいたら、と思って笑ってしまった。実はスコッティー演じるサイモン・ペグは『宇宙人ポール』にてクリンゴン語を話す英国人SFオタクを演じていたのだ。加えてウフーラ演じる“アバター”ことゾーイ・サルダナは映画『ターミナル』でスタートレックファンの税関職員を演じているからクリンゴン語を話しても不思議ではない。このあたりのメタ的ジョークもツボを押さえている。もちろん主要キャラであるカークとスポックにはどちらにも最高の見せ場が最後に用意されている。特にスポックには泣かされることだろう。

登場人物がしっかりと描けているだけでも十分なのに、おそらく迫力の映像にも目を奪われることだろう。私はIMAX3Dで鑑賞することができたがIMAXがお近くにないならせめて3Dでの鑑賞をおすすめする。特に冒頭の惑星ニビルでのシーンや中盤からから後半にかけての宇宙空間でのシーンは明らかに3Dを意識した演出となっている。物語に没頭するあまり何度か画面から飛んでくる物体にのけぞってしまった。隣の人もそうなっていた。

というわけで日本公開は8月23日ということなので日本のファンはまだ我慢が必要なわけですが、実は私もこの映画を見たおかげである耐えきれない我慢を強いられることになってしまった。ご存知のかたも多いと思うが本作の監督J・J・エイブラムスはディズニーがルーカスフィルムを買収したせいで浮上した『STAR WARS』の新作の監督に抜擢されたばかり。ジョージ・ルーカスの人物描写は散々だったため、否が応でも期待せずにはいられない。これについて書き出すと終わりが見えなくなるので別の機会に。

 以下、ネタバレを含みます。

エンタープライズ号乗組員、star trek into darkness

エンタープライズ号乗組員、star trek into darkness

<スポンサーリンク>

th_star_trek_into_darkness-HD
関連記事!